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正しい土下座

 このごろ土下座が大はやりです。福島の避難所を訪れた東京電力の清水社長に避難民から怒号が飛びました。「清水! 土下座して謝れ!」。すると社長以下幹部連中がそろって土下座している様子がテレビに映し出されました。エリート人生の頂点にあった清水社長がまさかこんな屈辱的な姿を天下にさらさなければならないとは、これも「想定外」の出来事に違いありません。

 東電社長に続いて今度は280円ユッケ食中毒事件を起こした焼き肉チェーン店の社長がパフォーマンス過剰の土下座をしていました。地べたに潜り込まんばかりのハデなアクションです。

 元来、土下座シーンなど見たくもない光景ですが、今回2人の社長の土下座の仕方を見ていると微妙にスタイルが違うことに気付きました。いったいこの極めて日本的な「かたち」には確立された様式(美)があるのかどうか疑問に思いネットで調べてみました。

 よくできた動画サイトがありました。「日本の形」というシリーズでもともとは、お茶とか折り紙、宴会、鮨屋の入り方などを外国人に紹介するシリーズ作品がYouTubeに流れてきたもののようです。その中のひとつが「土下座編」で、ラーメンズというお笑いコンビがシリアスに演技しています。3分ほどの作品なので動画サイトでご覧になってください。可笑しくそして悲しくなること請け合いです。

 動画によると様式美は完成されたもので、①何かしでかす。②すがるような目で申し訳なさを表現する。③一気に5歩下がる…⑦頭を床上1センチのところまで一気に下げる。土下座した人が見せる背中の美しさが相手の慈悲のこころを誘う……。

 マニュアルは続きます。頭を上げてからも気を許してはならない。涙は流すのではなく、涙ぐむ程度が効果的であり、本当は反省していないことが悟られないよう注意しなければなりません。そして相手が去ったあとでひざを払い、軽蔑を込めて唾を吐く……。以上があらましです。

 とりわけ大切なのは最後の「軽蔑を込めて唾をはく」の部分です。土下座してしまった自分の自我、自尊心が傷つくのを防ぐためには必須の所作です。お立場ある方にはいつ何時東電社長の悲劇が訪れるか分かりません。必読のマニュアルです。

本誌:2011年5.23号 16ページ

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