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トラック野郎 天下御免

 映画のロケ地を訪ねる「シネマで散歩」、第24回は、昭和51年公開の東映作品「トラック野郎 天下御免」(監督/鈴木則文、出演/菅原文太、愛川欽也、由美かおるほか)。ロケの行われた倉敷市西阿知を訪ねた。

倉敷市西阿知

(こんな映画)
 長距離トラックの運転手・一番星の桃次郎(菅原文太)とやもめのジョナサン(愛川欽也)は宇和島からの帰り道、倉敷の花筵の美しさに魅せられてデザインを勉強中の清楚な女性・我妻和歌子(由美かおる)と知り合う。彼女にのぼせ上がった2人が巻き起こすはちゃめちゃの大騒動・・・。

マドンナは花筵に魅せられた清楚な女性

 昭和50年から54年にかけて全10作が公開された「トラック野郎」シリーズの第4作。毎回、全国各地でロケが行われ、主人公の桃次郎(菅原文太)がマドンナに惚れては失恋するというパターンは、松竹のライバルシリーズ「男はつらいよ」と同じ。

 「天下御免」でも、愛媛県宇和島の闘牛がストーリーを盛り上げ、倉敷を中心とする山陽路でのロケでは、倉敷美観地区、吉備路のシンボル・五重塔などをバックに、一番星桃次郎のトラックが突っ走っている。

ところで、山陽路ロケの中心となるのは”花筵(かえん)”。桃次郎が惚れこむマドンナ・和歌子(由美かおる)が、倉敷の花筵の美しさに魅せられ、そのデザインの勉強をしているという設定だからである。花筵とは、イ草を素材とした模様敷物で、花むしろ、花ござともいうが、一般には織込花筵(おりこみかえん)というそうだ。

映画のシーン。手織り機を使って花筵を織っている和歌子。彼女の隣で指導している伊沢(誠 直也)が羽織っているハッピには萩原株式会社の名前がプリントされている。萩原は、かって輸出用の花筵の生産量では全国一を誇った倉敷市西阿知にある。

 JR山陽本線の西阿知駅で降り、萩原を訪ねる。「確かにロケがありました。が、今はもうその時のことを覚えている社員はほとんどいませんね。私も撮影現場を撮った写真は見たことはあるんですが・・・」と、管理部の取締役部長・上野富章さん。DVDから抜き撮りした写真を見ながら、上野さんに撮影場所となった(協)岡山織込花筵センターに案内していただく。センターは萩原から南へ約2キロ、国道に面したところにある。ここでは、桃次郎が、借金に苦しむ彼女の実家を助けるため、300万円を懐に勇躍、和歌子に会いに来る、というシーンが撮影されている。

トラックを走らせてセンターに入ってくる桃次郎。花柄や幾何学模様の色とりどりの花筵が桃次郎を迎えてくれるのだが、そこにはしっかりと抱き合う和歌子と伊沢の姿が・・・・。寅さんになる桃次郎・・・。

 ロケ場所になった(協)岡山織込花筵センターは、昭和44年、萩原など生産業者が協同で設立したが、岡山県の花筵生産の衰退により、現在は、その名前だけを残して萩原の片島物流センターに形を変えている。明治25年、輸出花筵の製造を主体として創業した萩原は、大きな時代のうねりを乗り越え、総合インテリア企業として、藺(い)製品の伝統を今も西阿知の地で守り続けている。

高梁川の堤防を彩る花筵のしま模様

2人を祝福し、肩を落としてとぼとぼと土手道を帰っていく桃次郎。両脇には、色とりどりの花筵がびっしりと敷きつめられ、日干しされている。近くを流れる高梁川の堤防で撮影されたに違いない。上野さんによると、撮影場所は、萩原のある西阿知町西原の北側あたりではないかという。

 西原地区を歩いてみる。堤防のすぐ下、(株)佐々木化学の佐々木進社長(58)に話が聞けた。「うちも以前は、花筵の織込工場でした。最盛期には、1ヵ月で70トンぐらいの花筵を製造していました。今は枕の芯などに使われるプラスチック加工をやっています」。花筵に挟まれるようにして歩いていく桃次郎の写真を見ていただく。「ああ、土手の向こうに建物がポツンと見えるね。多分取水ポンプ場だと思う。堤防を上がれば見えるはずだよ」。

 堤防の上に立つ。確かにある。高梁川の河川敷に「西阿知取水ポンプ場」が。桃次郎が去っていくその向こうに見えていた建物だ。堤防を彩っていた花筵は見あたらないが、ここが撮影ポイントに違いない。田んぼや空き地、そして高梁川の堤防をキャンパスにして描かれた色鮮やかな花筵の日干し風景は、もう見ることはできないが、フィルムの中には、今もその風景が切り取られ、焼き付けられている。       (おかやま魁 鷹取洋二)


「トラック野郎 天下御免」
 ・昭和51年(1976)、東映作品
 ・DVD発売中/4,725円(税込)
 ・発売元/東映ビデオ 販売元/東映

本誌:2011年5.23号 31ページ

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