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連載記事

時代は危機管理からリスクマネジメントへ

 本年一月十七日、阪神・淡路大震災の被災者の女性に対して「十六年を経過した今、被災された方の願いは何ですか」とレポーターが尋ねました。すると彼女は「震災を忘れないで欲しい。忘れないということは、自分や家族の身におこるかもしれないと覚えておき備えて欲しいのです。助かるはずの命まで助からないようなことは二度と起こって欲しくない」と答えました。

 そして今メディアは、東日本大震災を連日報道し続けています。私たちにできることは大きく分けて二つ。一つは被災者の方のためにできること。岡山からできることは限られるかもしれませんが、義援金、支援物資、献血、ボランティア、被災者の受け入れ等々可能な範囲で取り組めればと考えます。

 二つめは私たち自身のためにやるべきこと。それは、自分のこととして捉まえ備えることに他なりません。いざというとき「想定外」や「未曾有」という言葉ですむのならことは簡単ですが、2つの大震災から少しでも学ぶべきだと強く感じています。


[危機管理だけでは不十分]

 2001年に経産省が『リスクマネジメントシステム構築のための指針』を発表したことにより、「危機管理」という考え方は「リスクマネジメント」へと移行しました。混同されることが多い二つの言葉は同義語ではありません。事件・事故が発生したとき、どのように対処するかが危機管理です。将来のリスク(危険)まで想定して備え、事件・事故発生時に対応し、再発防止や対応策改善等の事後対応まで、一連の流れ全てがリスクマネジメントなのです。つまり、危機管理はリスクマネジメントの一部分でしかなく、適切な危機管理は平常時のリスクマネジメント無しでは生まれません。


[人へのリスクマネジメント]

 この度の震災のように、街が消えて無くなることまで想定してリスクマネジメントしている企業はごく少数でしょう。しかし、津波、原発事故、テロ、爆発事故等で社屋が無くなったり、周辺に立ち入りできなくなる事態が実際におきているのです。社屋に入れないときでも、従業員と連絡を取る手段はあるでしょうか。組織の立て直しは、組織を構成する従業員や関係者たちの安否確認から始まるのです。

①情報の整理と管理

 災害時に本人と連絡が取れない場合、家族や親戚から安否を確認するケースがありますから、本人以外の緊急連絡先も必要です。この情報は緊急連絡以外に使われない旨を説明した上で提出してもらい、情報にアクセスできる担当者に個人情報として慎重な管理を徹底してください。なお、データが古くては役に立ちませんから、随時情報更新する必要もあります。また、名簿を印刷物として制作すると更新が遅れたり情報漏洩の原因となるので、データベースで管理した方がよいでしょう。そして、データは会社保管のみならず、経営者と人事の責任者が暗号化して分離保管するのがよさそうです。

②連絡手段の確保

 この度の震災で連絡ツールとして見直されたのが携帯メールで、少々混み合いましたが通信は可能だったそうです。なかなか回線が空かず通話ではつながらなくとも、携帯各社のサーバーに一端保存されるメールは、回線が使える瞬間に短時間で送信されるのです。また、会社の代表メールアドレスへ届くメールは、社外から確認することもできるWebメールへ転送する設定をしておきましょう。これは、従業員との連絡のみならず、お客様からの問い合わせに対しても有効です。

③想定して訓練する

 災害に直面したとき、とっさに適切な行動を取ることは難しいのです。安全で落ち着いたときだからこそ、連絡網が本当に機能するか試したり、JRやバスが動かない場合の帰宅も実践できるのです。非常時を想定して「実際にやってみる」のことは重要です。懐中電灯はあるけど電池が切れているのと同じで、備えていても災害時に錆びつき動かない仕組みではリスクマネジメントとは呼べないのです。

筒井徹也(鉄じぃ)
(有)エヌティ・クリエイト プランナー
倉敷芸術科学大学 観光学科 非常勤講師
キャリア・コンサルタント

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本誌:2011年5.23号 30ページ

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