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巻頭特集[検証]「JR岡山駅周辺開発」計画

やっぱりカギ握る「ザ・ハヤシバラシティ」開発構想

  • 岡山駅前周辺。手前は建設工事が進む岡山駅舎

 “岡山国体までに”を合言葉に取り組まれてきたJR岡山駅周辺開発が大きく動き出した。西口地区では、県都の新たな顔として期待される「リットシティビル」が完成、都市型シティホテルの「岡山全日空ホテル」も開業した。

 駅正面の東口では、(株)天満屋(岡山市)グループの新ビルが建設され、駅舎の東西連絡通路も工事が進んでいる。同駅周辺地域は、政令市移行を目指す都市・岡山の顔にふさわしくなるべく、確実にパワーアップしてきている。

 しかし、一方、最も注目されてきた林原(株)(岡山市)グループの「ザ・ハヤシバラシティ」構想や「岡山会館」問題は頓挫したまま。新たに「ドレミの街」のダイエー岡山店が撤退するという難題も急浮上。

 “県都の顔”作りは重要な局面で難航気味だ。そこで問題を突き詰めると、やはり「ハヤシバラ開発の行方に全てがかかっている」と言う見方が強い。それらに対し、行政が方向性すら示せないでいるのも悲しい現実だ。岡山駅周辺開発構想を特集し検証した。


▽ 新“核”誕生でパワーアップ

 海の玄関口、空の玄関口―と“玄関口”はいろいろあるが、岡山県にとってJR岡山駅は、正に一番の玄関口である。その玄関口の正面(東口)にあるのが、地上9階地下2階の「岡山会館ビル」(岡山市駅前町1-1-25)である。


 今でこそ、市長選挙の選挙事務所が入り、壁面には岡山国体のマスコット「ももっち」やスローガンがデカデカと取り付けられて一見にぎやかそうではある。しかし、このビルは、実態は空き家で、選挙と国体がすめば廃屋同然となる。玄関口にこんな空きビルがあるのは、決して好ましいことではない。


 また、駅正面からちょっと南に目をやれば、そこには「林原駐車場」(岡山市下石井1-2-3)と書かれた約4万5000平方メートルもの広大な用地がある。県都の駅前一等地にこれだけの土地が“遊んでいる”ところは、めったにお目にかかれない。


 このように、岡山駅周辺開発は、一番肝心なところの開発が難航しており、その点から見ても決して順調ではない。

  
 そこで、開発プロジェクトの現状を見ると、ここに来て完成が相次いでいるのは、従来“裏口”と呼ばれてきた西口地区である。この地区はもともと都市基盤整備が遅れており、岡山市などが10数年にわたって整備に力を入れてきた。その成果がやっと今、出てきたと言える。

 事業名は、岡山市駅元町地区第2種市街地再開発事業。対象地区は駅西口に面した一帯で、面積は約2.4ha。第1工区の岡山コンベンションセンターやマンションが入った高層の「フォーラムシティビル」は平成12年度に完成している。

 今回完成したのが、第2工区の「リットシティビル」。ホテルや商業施設、オフィスなどを備えた大型複合ビルで、地上19階地下2階塔屋1階の高層棟と地上7階地下2階の低層棟の2棟構成。

 高層棟には「岡山全日空ホテル」(客室数221室)や商業施設、低層棟には「岡山市デジタルミュージアム」やNHK岡山放送局が入居。全体で年間約90万人の利用客を見込んでいる。

 連動して進められているのが、岡山駅の橋上化と東西連絡通路の新設、西口広場の拡張。連絡通路は、駅の東西を結ぶもので幅員10m、延長約120m。ちょうどJRの在来線をまたぐ形で新しく設けられる。通路に接して商業施設も設けられることになっている。平成20年度中の完成目標だ。

 完成すれば、駅舎を挟んで分断されていた東西地区が一体となり、1日の利用客が約12万人という乗降客と併せて、人の流れが大きく変わるものとみられる。

▽「東横イン」2店が進出

 このほか、西口地区では、ビジネスホテルチェーン「東横イン」の進出もスケジュールに乗っている。事業主体はカラオケ器機リース・レンタルなどの(株)オーケーミュージック(岡山市)などで、岡山市奉還町と駅元町の2カ所に部屋数200前後の「東横イン」進出を準備している。

 一連のプロジェクトの完成は、駅周辺地区に大きなパワーを与えることになる。特に、西口地区にとっては、以前無かった全く新しい“核”が誕生することになり、その核と東口地区の従来の核が連動し補完し合えば、大きな力を発揮するからだ。

▽フジビルは「新ビル」買収
  
 東口で目に見えて進んでいるのが、天満屋グループと「フジビル」を所有する(株)フジビル(岡山市)の動きである。

 天満屋は駅前広場に接した旧国鉄用地を確保、地上12階塔屋1階地下1階の「岡山駅前計画」ビルを建設している。完成は来年1月の見込みだ。そして、「フジビル」も買収する。

 フジビル側は、天満屋が建設した新ビルを買収する。両者は既に6月、予約契約に調印。新ビルの完成を待って来年1月ごろ正式に売買することになっている。

 これで天満屋は、グループで所有している「第一セントラルビル」と「フジビル」を一体として活用でき、いつでも、大型開発に着手できる体制を整えたことになる。

▽着々と手打つ天満屋グループ

 この意味は大きい。「ザ・ハヤシバラシティ」構想では、2つの百貨店の誘致が計画されている。これに対抗し生き残るためには、駅前のより有利な立地に店舗を構える以外に方法はない。そのための布石だ。天満屋では、林原構想の動向を細心の注意を払って見つめている。隣接する岡山高島屋も同様である。


 ▽「岡山一番街」は大改装で対抗

 駅前地域では、JRグループの(株)岡山ステーションセンター(岡山市)が岡山駅前地下「岡山一番街」の改装を実施した。これも、西口地区などの完成を意識したもので、地域一番の商業施設として、更にグレードアップを目指したもの。

▽林原構想、未だ発進せず

 しかし、開発が難航している構想もある。その最大のものが、林原の「ザ・ハヤシバラシティ」開発構想だろう。1次プランが示されたのは平成14年のこと。それ以前も結構論議されてきた。が、未だ着工の槌音は聞こえてこない。

 1次プランの構想は大きかった。高層マンション、オフィスビル、百貨店2店、博物館、ホテル、専門店街が並び、総事業費は1500億円。文化施設で国内外から年間1000万人以上の来訪を見込んでいた。その後、見直しが行われたが、現在も、事業可能性を探りながら、検討中といったところか。

 「岡山会館」ビルも、開発着手までには、曲折が予想される。ビルの所有は、遊技場経営の(株)成通(岡山市)グループの(株)成和(岡山市)だが、年数が経った地上9階地下2階という大型ビルだけに、活用方法は限られてくる。

 最近では、大手家電量販店への売却説が流布されたりもした。また、同所には、隣接地と合わせて再開発事業をすべきだとの論も根強くある。関係者の調整は、話し合いの入り口にすら着いていない。

 また、駅舎に隣接したJR所有地に世界貿易センター(TWC)ビルを建設、核としてボートピア(舟券売り場)を持って来ようという計画もある。こちらは、現在、休止中のよう。

 こうした中で新たな問題が発生した。岡山駅前「ドレミの街」のテナント問題である。核テナントは、(株)ダイエー(神戸市)だったが、9月29日、11月末での撤退を発表した。次のテナントをどうするか、関係者にとっては頭の痛い問題だ。

▽見えない県、岡山市の腹の内
   
 こうして岡山駅周辺開発構想を考えると、プラス要因としては、確実に機能拡充が図られつつあるということだ。中四国地区全体をも狙える商圏ができつつあるといえる。

 もう1つは、この圏域がさらに飛躍できるかどうかは、林原構想の実現にかかっているとも言えることだ。天満屋構想にしても、林原構想の動向によって、事業実施方法は大きく変わる。林原構想を慎重に見守っている業界は少なからずある。

 ▽火中の栗、やはり拾わず

 また、問題と思えるのは、行政の指導・監督である。ほとんどの計画が、民間事業のため、口を挟める余地は少ないとは言うものの、開発行為に対する指導や、建築確認事務を通じての良い方向への“誘導”はあってしかるべきだろう。

 関係者によると、これらに対し、県と岡山市はほとんど指導らしきものはしていない。行政サイドにしても「火中の栗を拾う勇気はない」のが現実だろう。しかし、“政令指定都市”岡山の街づくりの観点から考えると、行政としてのビジョンを早く示し、開発を誘導すべきではないかとの声は強い。


 〇天満屋は駅前に用地確保〇

 (株)天満屋(岡山市表町2-1-1、伊原木隆太社長)グループが岡山駅前に建設している「岡山駅前計画」ビルは、これまでに鉄骨組み工事を終え、いよいよ来年1月の完成を目指して内装工事の段階に入った。

 同ビルは完成後、(株)フジビル(岡山市本町6-30、野津喬社長)が買収することになっている。併せて、天満屋も、現在の「フジビル」を買収する。これら一連の契約は、今年6月、予約契約の形で合意されており、来年1月ごろ新ビルの完成を待って、正式に実行される。

 「岡山駅前計画」ビルは、岡山駅前広場の南端に隣接。岡山市駅元町503-1他の1401平方メートルに立地している。規模は地上12階塔屋1階地下1階(延べ1万1173平方メートル)。建築面積は835平方メートル、高さは54.7m。

 南面と北面がブルー系カラーの総ガラス張り、建物の周囲は緑の多い公開空地として環境整備、内部は最先端のインテリジェントビルとなる。工事には昨年着工していた。

 ビルは完成・引渡し後、フジビルが「ターミナル・スクエアビル」(仮称)として経営する。テナントについては、およそ半分を専門学校岡山情報ビジネス学院が使い、残りはオフィスや商業施設となる。テナントは現在、募集中。

 天満屋が買収する「フジビル」は、岡山市本町6-30に立地。天満屋グループの所有する「第1セントラルビル」(岡山市本町6-36)に隣接している。用地規模は1870平方メートル。建物は本館が地上9階塔屋4階地下2階(延べ1万3620平方メートル)、新館が地上4階(延べ1130平方メートル)。本館は昭和40年に建てられている。

 これで、天満屋グループは、駅前地区で「第1セントラルビル」と「フジビル」を一体として運用・開発できる体制が整ったことになる。

本誌:2005年10.3号 4ページ

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