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巻頭特集高谷市政検証

論戦なき岡山市議会 トップダウン手法に対する批判の声も

  • 地元財界の意向が強く働いた岡山駅東口広場の整備

 6月定例岡山市議会が7月9日に閉会する。市議の改選後初の議会で、新人からベテランまで政令市を目指す市政への注文が相次いだものの、高谷茂男市長の口からは明快な答弁が聞かれず、副市長や担当局長に任せきり。「議会軽視」と言えばそれまでだが、本会議は市民が市長の声を聞ける唯一の場。4月の統一地方選では、市議53人の得票数は21万4217票と、高谷市長が初当選した得票数(9万5635票)よりも圧倒的に多い。市民代表による多様な意見に、当局が準備した原稿だけでなく、自らの言葉で論戦を交わしてこそ、市長の政治家としてのスキルも上達するはずなのだが・・・。

言葉を選べない市長

 「中央官庁の役人として、全国の地方自治体の議会を経験したが、岡山市は本当にレベルが低かった」―。安宅敬祐元市長がこう振り返るほど、岡山市議会は議員の資質が低いとのレッテルを張られている。自ら質問原稿を書けず、当局任せのケースがすっかり定着し、“予定調和”の質問戦を展開。そうでない場合、当局側が答弁に詰まり、1時間以上休憩することもある。

 岡山市連合町内会の兼松久和会長も「木を見て森を見ず、重箱の隅のつつき合いに終始している。市議会は本当に頼りにならない」と“三下り半”状態。さらに、「町内会長は市民代表だが、市議は支持者代表にすぎない」と、市議会への不信感は根強い。

 それでも、安宅元市長や萩原誠司前市長は、本会議での質問戦の際、会派を問わずほとんど答弁し、時にはリップサービスも披露。元高級官僚ゆえの機転の良さもあり、とっさの判断とアドリブが必要な再質問の答弁をこなし、議員らは“消化不良”で質問戦を終えることもなかった。

 しかし、高谷市長就任後は状況が一変。各会派の代表質問こそ原稿通り答弁するものの、個人質問での答弁はすっかり減った。今議会でも37人が質問戦に臨み、重複する質問項目に市長が随時答弁するのは議事進行の効率化に反するため、あえて登壇しないのかもしれないが、論戦の低調ぶりは目を覆うばかり。市役所内からは「下手にしゃべらせると、後々副市長と担当局長が釈明に追われるから、市長は原稿だけ読んでくれればいい」との声も聞かれる。

 象徴的なのは、「夕張発言」だ。高谷市長はこれまで、財政危機をアピールする上で、北海道夕張市と同様、「私の就任前の状況が5年続けば、財政再建団体に転落していたかもしれない」と“物騒”な発言を繰り返してきたが、今議会では「新行財政改革大綱と都市ビジョンに従って、行財政改革と財政健全化を進めていく限り、決して岡山市は破たんしない」と軌道修正した。

 そもそも、「5年続けば財政再建団体」との根拠は、いまだ明らかにされていない。5月に放映された「NHKスペシャル」では、2夜連続で夕張市とともに取り上げられ全国から注目を浴びるようになったが、元市職員は「センセーショナルな話題こそ、マスコミの絶好の餌食。地方自治体はどこも財政難だが、夕張市になると言い切れる首長は、全国でも高谷さんだけ」と、皮肉たっぷりに話す。

 また、岡山市九蟠、豊田地区で発生した塩害問題で、県の樋門管理など原因究明がはっきりしていないにもかかわらず、「天災ではなく人災」と答弁。対象農家に被害補償が出なくなる可能性があることから、市議はもちろん副市長や担当局長ら身内からも答弁の削除を求められ、市長も応じる事態に。ある市議は「普段答弁しないのに、いい格好をしようと再々質問の答弁でパフォーマンスを披露し、結果的に裏目に出た。政治家として本当にレベルが低い」とあきれ顔。

地元財界の“御用聞き”

 岡山市は今議会で、JR岡山駅東口の一般乗降場移設の事業費(3000万円)を、今年度一般会計補正予算案に盛り込んだ。高谷市長は岡山商工会議所の副会頭だった頃から、東口広場の利便性の悪さを訴えており、同商議所も昨年11月、駅周辺整備を要望。結果的に市長の意向が強く働き、事業化された公算が大きい。

 高谷市長は、吉本興業(株)誘致の三丁目劇場、57億円もの巨費を投じた岡山市デジタルミュージアムなど、“萩原政権”時代に完成した文化施設に対して批判的な態度を見せるが、本人自身も前市長同様、トップダウンを推し進めようとしているように見え、「おかやま国際音楽祭」はその代表例だ。

 高谷市長は本誌などの取材に対し度々、倉敷チボリ公園が窮地に陥っているのは、自分の敷いた路線を正しく継承できなかったからとの主張を繰り返し、服部芳明元社長が園内イベントを担当していた(株)プロデュースアンドディレクション(P&D社、東京都)との契約を一方的に打ち切ったことへの不満を漏らしていた。

 そのP&D社が、同音楽祭の総合プロデューサーとなり、約3000万円の公金を使ってイベントを企画。同社の疋田拓社長と長年の付き合いがある高谷市長は、入札も行わず同社の提案を採用。本会議では「本当に良いことをやったと思っているので、ほめていただきたい」と発言。市政の私物化を半ば認めたともとれる“開き直り”を見せた。

 P&D社にプロデュースを依頼したのは、高谷市長の意向に加え、商工会議所人脈による地元財界の“超大物”の存在もささやかれる。「いい加減な人物が多い芸能界で、疋田社長は本当の紳士。マスコミが音楽祭を叩くのはおかしい」(ある歌手の岡山後援会長)との擁護論も聞かれるが、公金を投入する以上、やはり入札をすべきだったとの声も強い。

 P&D社の選定問題は、高谷市長のトップダウンが明らかになったが、開催まで2カ月半に迫りながら音楽祭の出演者は決まらず、ポスター作成やチケット販売は手付かずの状況。音楽祭批判の“急先鋒”である田畑賢司市議は「市当局も選定経緯の矛盾が分かっているはずなのに、絶対に市長を擁護する。追及するほど、答弁に詰まる局長と課長がかわいそうになってくる」と話す。

連合町内会“ドン”の沈黙

 高谷市長は職員採用凍結や事業仕分けなどの行財政改革に熱心な半面、市政の最重要課題でもある市民病院(同市天瀬)の移転改築、岡山市立中央南小学校(旧深柢小、岡山市中山下)の跡地活用は、依然として結論を先送りしている。旧深柢小問題は、教育施設の“復活”を求める地元連合町内会と、移転改築を要望する川崎医科大学付属川崎病院、早期有効利用を求める住民の対立も深刻化している。

 結論次第では、双方の反発を招くのは必死で、長期政権を維持するには問題の先送りが最も無難な選択肢ではあるが、これでは市民が民間出身市長に寄せた期待に十分応えているとは言えない。岡山駅東口整備や音楽祭と同様、地元財界の有力者から意見を聞き、政策に反映させるのも1つの手段だが、兼松会長は「商売人が福祉や環境など、あらゆる分野で口を出すのは明らかにおかしい」と、市長の手法を厳しく指摘する。

 「連合町内会は近年、圧力団体となりつつある」と自戒を込めながらも、「合併に伴う市職員の適正配置(リストラ)、特別職の報酬カット、議員定数削減は依然進んでいない。商工会議所の幹部連中に中小零細業者の悲哀が分かるはずはなく、本当の市民の声を聞く行財政改革に取り組んでほしい」と注文を付ける。政令市実現も「市民にとって本当にメリットがあるのか」と懐疑的だ。

 高谷市長とは同級生で、2年前の市長選では連合町内会挙げて支援。その後も会合などで何度も顔を合わしているが、「残り任期はあと2年。経済界や市議会のようにあれこれ言わず、無言のプレッシャーを与え続けた方が、市長も誰の意見に耳を傾けるべきか、おのずと分かるはず」と、不気味な沈黙を貫いている。

本誌:2007年7.9号 4ページ
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