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巻頭特集三越倉敷店の後継核テナント誘致

3社が浮上 どう動く?注目の天満屋

  • 三越が入居していた東ビル

 JR倉敷駅前の「くらしきシティプラザ東ビル」(倉敷市阿知1-7-1)から核テナントの三越倉敷店が5月5日に撤退してから半年が経過した。倉敷市、倉敷商工会議所、ビル管理会社らで組織する同ビル対策会議(議長・岡荘一郎倉敷商工会議所副会頭)では、後継核テナント誘致に全力を上げてきたが、一括転貸を条件に百貨店など3社が浮上、後継獲得の点では進展が見られるようになった。この中に注目の(株)天満屋(岡山市)が入っているのかどうか。倉敷店移転説を含めうわさは広がるばかり。一方で、受け皿整備の点で同ビルの地権者の意見が一括転貸賛成に向け集約されつつあるが、具体的な各論となると一部で合意形成できずまとまっていない。

ビルの73全地権者の合意形成が課題

[後継テナント候補]
 「探り合いで流動的」か
 天満屋移転に地元は釘

 対策会議では、後継核テナントの誘致活動をコンサルタント会社の(株)ビーエーシー・アーバンプロジェクト(東京都)に委託。9月から一括賃貸を条件に再度全国の百貨店や量販店に打診したところ候補として「現在数社が関心を示している」(東ビル対策会議)と言う。具体的な内容は明らかにしていないが、漏れ伝わってくるところでは現在4社が前向きに検討中。そのうち3社は百貨店など商業施設。残る1社は買い取り解体してマンションを建設というが、この案は論外だろう。

 地権者らを含めちまたでは「既に特定の1社に絞られた。近々正式な発表があるのでは」とうわさのみが先行するが、対策会議側では「まだ決まっていない」と否定する。まだ流動的で、対策会議や進出候補企業同士でお互い手の内を探り合っている段階のよう。

 これに対して、気になるのは近隣に倉敷店を抱える地元百貨店の(株)天満屋の動き。1月ごろに旧三越の床(店舗面積1万5771平方メートル)のみで要請してきた時は「断った」が、今回の一括賃貸での提案に対しては「(検討するかどうか)まだ結論が出ず返答していない」としている。候補3社に入っているかどうか不明だが、いずれの場合でもその動向は気にかかる。

 天満屋倉敷店は昭和9年7月に開業し70年の歴史を誇る。店舗面積は1万424平方メートル。バブルの全盛期には売上高118億円を計上してきたが、その後徐々に減少。現在は約60億円と半減している。

 同店のネックは、やはり限られた店舗面積。そのため、10年ほど前に近隣で倉敷市阿知2丁目市街地再開発事業の構想が浮上した時に再開発ビルの核テナントに名乗りを上げたが、その時の店舗面積が3万平方メートル程度だった。最近の地方都市の百貨店で集客力のある品揃えを考えれば、店舗面積は最低でも3万平方メートルは欲しいところ。

 そのため、天満屋側でも当時の再開発準備組合に預託金5億円を拠出。この預託金は出店を破棄した場合、返還義務が消滅するというもので、不利な条件で譲歩してまで出店への強い意欲を示し面積を広げたかった。(15年春に同計画は破綻。義務は消滅したが預託金の大半は天満屋に返還済み)

 ちなみに三越跡はビル全体一括転貸として店舗面積は2万数千平方メートル。もし仮に移転するとした場合、3万平方メートルには若干足らないが現在の倉敷店より大幅に拡大する。

 また、倉敷店はここ10数年再開発計画もあったため大規模な改装を実施しておらず、14年3月に若干改装した程度。その後再開発計画が破綻した後も特に大規模な改装はなかった。今年春に三越撤退で7ブランドを譲り受け導入したくらい。玄関口はともかく全体的に老朽化が著しい。

 そのほか、同社はもともと近隣へのよそ者の進出を非常に嫌う。既存店のシェアが食われることを恐れてだ。そのため、近隣で大型店が閉鎖すると他社の進出を阻止するため、自社で押さえ入居するというパターンがすっかり定着した。最近では福山そごう(福山市)の閉店跡に15年4月に福山ロッツをオープンした例がある。

 これらの“状況証拠”から、期待を込めて天満屋入居説が浮上したわけだ。もっとも福山のように両店舗使うなら良いが、仮に全面移転し現店舗が空くとなると周辺の商店街は集客面で大打撃を受ける。そのため、うわさの段階にもかかわらず釘を刺す意味で、地元商店街は今年3月に現店舗へ残留するよう要望書を天満屋と倉敷市に提出している。

 倉敷店は三越閉店後、毎月前年同月比で2ケタの伸びで好調に推移。チボリ内店舗を含めた全売上高(外商は岡山本店に移管)は「当初予想の60億円を上回りそう」と言う。しかし、同社では今後同店を抜本的にどうしたいのか、将来像となるとはっきり読めない。

 仮に3社のうちに天満屋が入ってなかったとして、進出候補の別の百貨店としては地元の天満屋の存在はやはり気になるところ。今年1~3月にかけて全国の小売店に1回目の誘致活動に動いた時、「近隣の天満屋に配慮し辞退したところもあった」と言う。

 いずれにせよ、関係者らに当たった感触からして誘致活動はいよいよ大詰めか。

[後継店誘致への課題]
 一部は各論で合意せず
 ビル運営費の負担難色

 誘致活動と並行して、東ビル側でも後継テナントの受け皿づくりが重要な課題だ。まずはビル全館の一括転貸に向け、73地権者全員の合意形成が図れるかどうか。大勢では一括転貸賛成に傾いているが、具体的な各論となるとまだ最終合意には至っていない。対策会議側では、11月下旬に地権者を集めて再度協議するが、その結果がどうなるのか、現段階で読めない。

 後継店誘致に当たっての絶対条件は「ビルの一括転貸」。当初旧三越部分のみで百貨店などを誘致したが結果は全滅。その際により広い店舗面積を確保できる一括転貸の要望が強かったことから、対策会議側では一括転貸を検討。8月16日の会議で、この条件で9月から誘致活動を再開することを決めた。

 一括転貸となると、区分所有で床を持ち営業している専門店には配置換え、退出を迫られる恐れがある。同ビル内にしか生活基盤を持たない店もあり、彼らは同意するにしても生活を保障してくれるような条件を付ける。

 この1年間の彼らの主張は「退出を要請されるかもしれない。移転費用を捻出するためにも床を市で買い取って欲しい」「後継テナントが未定で、今後設立予定の受け皿会社からの賃料も示されず、これでは是非の判断はできない。先に一括転貸だけ迫るのは後出しジャンケンといっしょで不公平」「市側が移転先の紹介あっせんくらいしてもよいのでは」―など。主張は時々で異なるが、行き着くところ今後の生活への不安が根底にある。また、営業はしていないが賃料で生活していた権利者もおり、三越当時の賃料がもらえるのか、同様の不安がある。

 これに対し、市を含めた対策会議側は市域全体の空き店舗の問題を背景に抱えており、公平性の点から東ビルだけ特別扱いにはできない。そのため、「市は床を買わない」「(三越が負担していた)誘致担当のコンサル会社への料金も市は負担しない」―とする。地権者への賃料に関しては「後継テナントが決まらずいくら賃料がもらえるか分からないのに現時点で示せるわけがない」とも。

 また、外部の一般からの意見には「そもそも三越に非協力的で撤退の遠因をつくったのは専門店の方。ある程度譲歩すべきでは」との指摘もある。

 三越が5月に閉店した後も専門店側では59店が営業を継続。その後、順次閉店し現在41店、年末にかけさらに店は減りそうだ。また、三越からの毎月の賃料、共益費計2600万円も契約期限が切れ10月末でなくなった。一方で電気代などビルの運営費用は毎月1500万円。

 本来なら契約期限が切れる10月末で、経費節減のためエレベーター・エスカレーターを停めるはずだったが、残って営業を継続する専門店から猛反発を受け、そのまま稼働させている。残った専門店が自己責任で三越の共益費分を負担するならともかく、そうではなくだれが負担するのかあいまいなままでの稼働継続だ。専門店が今後も営業を継続する場合、もし既に閉店した店や他の地権者らに今後余分に負担させるとなると、「何で他人の営業のために負担する必要があるのか」と今度は彼らが猛反発するだろう。

 流通関係者によると、再開発事業で大型店閉店後のゴタゴタは同ビルだけの問題ではなく全国的にも似たような事例が多発しているそうだ。
中には権利を主張するのみで公共的な街づくりへの視点が欠如している地権者もいるが、一応全員の合意形成をどう築くか、誘致実現のカギともなる。

 また、その次の課題は交通混雑解消のための駐車場の確保だ。誘致活動の中で「近隣に大規模な駐車場があれば」との声もあった。それも踏まえてビル東側に隣接する「倉敷駅前東土地区画整理事業」(区域内の面積3.6ha)で、その区域内に駐車場を確保する案も出ているが、正式に採用されるかどうか未定だ。

 そのほか、誘致後の話になるが、近い将来設立予定の受け皿会社の体制をどうするのかも焦点。全地権者の床をまとめて借り上げ後継テナントに一括賃貸する窓口となる。旧三越時代に同様の機能を持った市全額出資の倉敷市開発ビル(株)があるが、その拡大版のようなイメージ。しかし、現在の市開発ビルやビル管理会社、団地管理組合法人には運営機能がなかったため、ビル全体の一体的な運営に難点があった。

 そのため、一部地権者から「新会社には運営機能を持たせるべき。そうした会社を早く設立して欲しい」との要望が出ている。それに対し、「一括転貸なら後継テナントが全館を運営するから、運営機能は不要」とする声もある。

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