WEB VISION OKAYAMA

連載記事

グローバル化の時代とブランド

  • 杉山慎策氏

 グローバル化が進展し繁栄が約束されたかのように見えた今世紀初頭の衝撃的事件である9.11を正確に予測したと言われているトーマス・フリードマンはグローバル化を次の3つのステージにまとめている。第1のステージは国家が武力で世界制覇を遂げる時代である。1492年スペインのイサベル女王の庇護を受けたコロンブスは、新大陸発見により得た純益の10%を手にするという赤裸々な略奪的意図に基づいて船出した。

 第2ステージのグローバル化は産業革命の進展により社会における重要性を拡大した企業が世界展開する時代である。これらの企業の中には「アメリカンドリーム」を実現しようとヨーロッパからアメリカに渡り西部に向かう途中、ある姉妹を見初め結婚し義兄弟になった石鹸とローソクの経営者がいた。2人は共同して会社を創設した。プロクター・アンド・ギャンブル社(P&G 1837年創業)の誕生である。イギリスの石鹸製造会社のリーバー・アンド・カンパニー(1884年創業)はオランダのマーガリン製造会社のユニー(当時はジャーゲンズ・アンド・バンデンバーグ社1872年創業)と国境を跨いで統合した。1930年ユニリーバはこうして誕生した。今日P&Gは世界180カ国以上で販売され日々46億人に、他方ユニリーバは世界190カ国で展開し日々20億人に愛用されている。

 1989年の「ベルリンの壁」の崩壊により現在グローバル化は第3のステージを迎えている。崩壊と相前後して急激に発達した情報革命の相乗効果もあり、現在シリア、イラン、キューバ、北朝鮮などほんの一部の国を除いてヒト・モノ・カネの流れが自由になった。国勢調査の語源であるセンサスを実施していたローマ帝国も人口は5000万人前後であり、ユーラシア大陸の東の帝国である漢は6000万人であった。アンガス・マディソンの推定によれば当時の世界人口は約2.3億人であり、東西の帝国ですらカバー率は20%程度にすぎない。今日のグローバル化がいかにすさまじいかを物語っている。余談だがセンサスの実施の目的は言うまでもなく徴税のためである。

 経営学的に見ればこのようなグローバル化は限定された地域での競争から世界が一つの市場として競争するグローバル大競争時代に変化したことを意味する。日本から輸出された伊万里焼がジノリやマイセンに影響を与え欧州での新しい産業を興した。このような協調的市場競争時代から、今日では「ウィナーズ・テイク・オール」という時代に変わった。つまり、優れた製品やサービスが世界をあっという間に席巻する時代に変質したのである。「ガラケー」という携帯電話がスマホに変化し、その変化への対応が遅れたノキアはマイクロソフトに買収された。そのマイクロソフトもウィンドウズに胡坐をかいている時代ではなくなっている。

 製品やサービスのみならず大学も実はグローバル競争に巻き込まれている。タイムズ・ハイアー・エデュケーション(THE)は世界大学ランキングを発表している。就実大学は残念ながら番外であるが、トップ100位に入る日本の大学は東大の27位と京大の54位のみである。安倍総理は日本再興戦略(JAPAN is BACK)において今後10年で100位以内に10校を入れることを目標に掲げている。

 ヒトも製品もサービスも大学も大競争時代に入っている。その中でブランドは非常に重要である。何故ならブランド化しないとコモディティ化し価格競争に巻き込まれるからである。大学が授業料を安くすることで生き延びられると考える人は恐らくそう多くはないはずである。グローバル化の時代であるからこそブランドは益々重要性を増している。

 経営学の中で特に重要なブランド戦略について今後シリーズで考えてみたい。

 すぎやま・しんさく。鏡野町出身。岡山大学法文学部卒業。資生堂UK社長、日本ロレアル副社長、東京海洋大学客員教授、立命館大学大学院教授、岡山大学キャリア開発センター教授などを経て今年4月から現職。特定非営利活動法人スプリングウォーター理事として学生起業家のサポートに情熱を傾けている。専門はマーケティング論。64歳。

本誌:2013年10.7号 23ページ

PAGETOP