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日中漢字文化の違い

  • 南部稔氏

 中国と日本の交流は、約2000年に及ぶと言われています。この間、日本は多くの文化を中国から学んできました。古事記に記されているように、中国から伝えられた「千字文」(漢字を教えるために用いられた漢文の長詩)は、日本の文字文化に花を開かせました。その文章の冒頭にある「天地玄黄、宇宙洪荒」(天の色は黒く、地の色は黄色であり、空間や時間は広大で、茫漠としている)という句を取り入れて、夏目漱石は「手習いや天地玄黄梅の花」という俳句を詠んでいます。

 しかし、日本の漢字はすべて中国から伝来したものばかりではありません。明治以降、日本人はヨーロッパの近代文明の導入に漢字を活用し、新しい言葉を工夫してつくり出しています。例えば、欧米の文献を翻訳する過程で「学術」「芸術」「文学」「化学」「観察」「実験」「立法」「行政」「概念」「現象」「象徴」「主観」「客観」「議会」「独裁」などの造語をつくり、これが中国に逆輸出され、現在では中国でも広く使われています。

 日本では、ローマ字など外来語を受け入れることに成功しましたが、懐の深いコスモポリタン的言語であるはずの中国の漢字には、排他的な面が強く見られるため近年では外来語の取り込みがうまくいかず、無理に漢字に訳され理解に苦しむ言葉が多くあります。

 外資を受け入れ、急激な経済発展を遂げる中国ですが、文化の面ではまだまだ譲れないものがあるようです。

本誌:2010年7.5号 12ページ

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