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連載記事

映像配信の拡がりから見えたもの 後編

 2年前、大学を卒業したての学生たちと岡山市内へ繰り出しました。居酒屋で乾杯したまでは良かったのですが、料理が運ばれてくるやいなや、彼らはスマートフォンで写真を撮り、ツイートし始めたのです。突然のことで少々あっけにとられたのですが、「目上の人が同席する場合は、一応断ってからスマホを操作した方がいいよ」とやんわり伝えました。数年前であれば「店内での写真撮影は、店の人に許可を貰いなさい」と注意するべきでした。しかし、この頃には誰もがブログやツィッターで料理や生活シーンを紹介し始めており、提供された商品やサービスを撮影するのはマナーか否か微妙になっていたのです。


[映像公開されるノウハウ]

 2003年9月、マサチューセッツ工科大学が世界初となるオープンコースウェア(OCW)サイトを立ち上げました。OCWとは、大学などの教育機関で提供された講義内容をネットで無償公開する活動です。当初はシラバス(講義計画)や講義資料が中心でしたが、近年では通信回線の大容量化にともない、講義映像をそのまま公開する大学も現れました。一般にはあまり知られていませんが、東大など日本の有名大学の授業映像も一部が無料配信されています。また、ハーバード大学マイケル・サンデル教授の講義は、あまりにも人気が高く、ついには『白熱教室』としてテレビで公開されるに至りました。


[優先された利便性]

 35年ほど前までは、テレビというものはオンエアされている放送を生で楽しむものでした。しかし、1970年代後半、家庭用のビデオデッキが瞬く間に普及し、録画という概念が生まれました。近年では、録画した番組をスマートフォン・タブレット・ノートPC等の端末で視聴できるようにもなりました。自宅のネットワークに接続するか、録画したデータを端末にコピーすることにより端末での視聴が可能となったのです。

 そして、昨年規制が緩和され外出先から自宅の録画データを視聴できるようになり、さらに今年に入るとリアルタイムで放送されている番組を自宅から配信させることもOKとなり、誰もがテレビをより自由に扱えるようになりました。デジタル放送は高品質な録画データを安易に再配信・コピーされることが当初から懸念されていました。残念ながらネットでの違法配信は顕在化しており、テレビ局と違法配信のイタチごっこの最中に規制緩和されたことは意外でした。穿った見方かもしれませんが、テレビは著作者の権利を守るよりも、視聴者のテレビ離れを食い止めるために、より手軽に視聴できる方向へ舵を切ったのかもしれません。

[情報公開とリスク]

 生産現場(工場)にカメラが入る番組が増えています。以前の工場は「関係者以外立ち入り禁止」にされ、撮影などもっての外でした。自社製造ラインは一般的な公開をせず、ノウハウの流出の可能性を少しでも防ごうとするのがあたりまえだったのです。しかし、昨今では番組取材であれば、自社ノウハウの映像公開に躊躇しない企業が増えています。

 これには、大きく分けて二つの意味があると推察します。一つは、番組内で自社商品・サービスを宣伝してもらう代わりに、従来撮影させなかった情報を提供するというバーター(交換条件)という考え方。もう一つは、前述の教育機関やテレビ業界と同じように、「真似されるリスク」よりも「伝わらないリスク」「手にとってもらえないリスク」のほうが大きいと判断し始めたのかもしれません。


[自由な発想で楽しむ]

 facebookで10秒程度のミニ動画掲載をよく目にするようになりました。デジカメは勿論のこと、スマホでも簡単に綺麗な動画が撮れる時代となり、若者たちは日々面白い使い方を模索しています。彼らは少々マナーに疎いかもしれませんが、若い感性には目を見張るものがあります。ときには苦言を呈することも大切ですが、一緒にワクワクしてしまったほうがビジネスチャンスに近づける予感がしています。


筒井徹也(鉄じぃ)
くらしきベンチャーオフィス
   インキュベーションマネージャー
倉敷芸術科学大学 観光学科 非常勤講師
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本誌:2014年4.14号 29ページ

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