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巻頭特集岡山プラザホテル

受動喫煙対策は弱者救済のために 業界初「完全分煙」に踏み切ったの決意

  • 岡山プラザホテルで行われた灰皿供養会

 岡山プラザホテル㈱(岡山市中区浜2-3-12、永山久夫社長、資本金1億円)は、4月から、ホテル内のレストラン、宴会場、宿泊部門のすべてで「完全分煙」のホテルに生まれ変わった。岡山県下のホテルでは初の試み。サービス業だけにマイナスの影響も考えられる中、あえて決断した狙いとは。県下のホテルの取り組みや、禁煙施設の認定状況を取材した。

 3月28日、岡山プラザホテル駐車場で「灰皿供養会」が行われた。関係者約50人が見守る中、用意された祭壇前にホテルで使用していた約2000個の灰皿が置かれ、最上稲荷総本山から招かれた僧侶が読経。永山社長が4月から「快適で安心安全な空間を提供するため完全分煙実施施設に移行する」と宣言した。

 同ホテルによると、灰皿を供養する式典は全国初。読経後には僧侶から、物事の始めだけでなく、終わりにもきちんとしたけじめをつけることの意義について講話があった。

 医学博士でもある永山社長は、2007年の社長就任以来、健康増進法第25条に規定された受動喫煙の防止対策について検討してきた。世の中の流れは禁煙・分煙だが、景気が低迷する中でサービス業として営業的にマイナスになりかねないことには手を付けづらいのが本音。実際、レストランや宴会場で先行実施したところ、一部の利用者からは「灰皿を出さないのなら会場を変える」といったクレームもあり、なかなか徹底できていなかった。

 これに対し、永山社長は「受動喫煙は身勝手な暴力的な行為であり、現代の世界標準が何であるかを知らしめ、従業員ら弱者の救済を考えた」と強調。今秋には岡山市でESD(持続可能な開発のための教育)に関するユネスコ世界会議が開催され、世界中から多くの来客が見込まれる。ホスト役を務める大森雅夫市長は、岡山操山高校時代に同じクラスで机を並べた仲で、「医療先進都市・岡山」での国際会議成功に協力したいという思いも人一倍あり、完全分煙化への決意を広く示す狙いで灰皿供養会を開いた。

 ホテル内のたばこの自動販売機も撤去し、岡山県の「禁煙・完全分煙実施施設」の認定も申請した。最も対応が難しい客室は当初、既存の部屋を禁煙仕様にすることも考えたそうだが、費用に加え居住性を損なうことから断念。6階エレベーター前の1部屋を、大型換気扇などの設備を整え、煙を外部に漏らさない厚労省基準をクリアした喫煙ルームに改装した。費用は約100万円。残り79室はすべて禁煙とし、グループのタクシー、宿泊施設などについても同様の対策を進めている。

 パブリックスペースでの禁煙は時代のすう勢だが、プラザホテル以外に完全分煙にまで踏み切るホテルは県下にはまだない。ホテルグランヴィア岡山(岡山市)は「基本的には分煙の方向」で、宴会場フロアに喫煙コーナーを設けるなどの対策をとっている。ただ、19階にシガーバーがあり、客室も全328部屋のうち146部屋は喫煙可能。「客室は個人スペースだけに対応が難しい」ため、禁煙ルームをこれ以上増やす予定はないとのこと。宴会場でも主催者から要望があれば灰皿を用意している。

 倉敷国際ホテル(倉敷市)は創立50周年で実施したリニューアルを機に、3月から本館は完全分煙。客室(70室)と宴会場を禁煙とし、ロビーに喫煙室を設けた。しかし、「宿泊客の3分の1は喫煙希望」だけに営業面を考えると悩ましく、新館(36室)はこれまで通り喫煙可能。また「室内禁煙といっても中途半端な対応ではにおいは残る」ことになり、費用との兼ね合いから、多くのホテルではフロアごとの“分煙”が主流となっている。

 「脱・たばこ」による売り上げへの影響は未知数だが、あるベテランホテルマンによると「売り上げ以上に懸念されるのが、たばこが吸えないことに対するクレームの増加」と言う。灰皿を撤去した結果、トイレ内での喫煙や空き缶を灰皿代わりにされては保安上の問題が生じてしまい、あるビジネスホテルでは「クリーニングなどのメンテナンス費用を考えると禁煙にしたいのはやまやまだが、現状は喫煙客の割合が高く無理」と胸の内を明かす。

 岡山県は、健康増進法の趣旨に基づき、受動喫煙を防止する環境づくりの一環として「禁煙・完全分煙実施施設」制度を2003年に設け、昨年末までに2204件を認定している。「分煙は排気などの設備投資を伴う」(県健康推進課)ことから、96%に当たる2119件が「禁煙」で、医療施設や学校、官公庁などではかなり浸透している。

 一方で娯楽施設、飲食店、一般企業の認定は合わせて300件余り。「認定を受けて『どんなメリットがあるのか』と逆に尋ねられることもある」(同課)そうで、浸透はいまひとつ。ただ、今年1月に認定を受けた食品スーパーの㈱マルイ(津山市)のように「女性客が多く必要性を感じており、2012年9月の本社移転から完全分煙を実施。その後に県の認定制度を知って申請した」というケースもあり、実際の取り組みはもう少し進んでいる可能性はある。

 昨年3月に策定した県の健康づくりに関する総合的な行動計画「第2次健康おかやま21」では、禁煙・完全分煙実施施設の認定件数を「2016年度3000件」と設定している。県では「プラザホテルのような取り組みをきっかけに、民間施設の認定が進むよう周知を図りたい」と話している。

 岡山市域は2005年に国連大学から「ESDに関する地域の拠点」に世界で初めて認定された7地域の1つ。今秋開催されるユネスコ世界会議に向け、地域の特性に応じた活動を推進するための「岡山ESDプロジェクト」にも岡山プラザホテル(ときわグループ)は参画している。完全分煙の徹底と禁煙教育は、まさにESDの理念に沿った持続的な取り組みが欠かせないものだ。

 ESDに関連するもう1つの柱が、ミャンマーへの医療支援。岡山大学とミャンマーの交流の礎を築いた岡田茂名誉教授が立ち上げた認定NPO法人日本・ミャンマー医療人育成支援協会で永山社長が理事を務めていることもあり、プラザホテルと岡山コンクリート工業㈱(岡山市)、㈱MGH(同)のグループ3社が、設立50周年を記念しクリニックを寄贈している(MGHは今秋開設予定)。

 2011年開設の「ときわ・オカコンクリニック」では乳幼児の死亡率低下などの成果が上がっており、今後もNPOと連携し支援を続ける方針。

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