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巻頭特集オタク市場取り込め!!

コラボイベントやデザイン活用活性化 成功のカギは「細かいキャラ設定」

  • 5月に岡山ドームで開催したアニメイベント

 企業や自治体で人気アニメとコラボしたイベントやアニメキャラクターをパッケージデザインに採用し、ヒットした例が全国的に増えている。県内企業でも新たな販路を求めて商品パッケージに美少女キャラクターなどを採用する動きが出始めた。デザインを取り入れた狙い、岡山でのアニメ事情などを取材した。

“オタク市場”が一般化
中小企業、自治体参入相次ぐる

 世界に誇る輸出コンテンツとして注目される日本のアニメ。年2回東京ビッグサイトで開催される漫画同人誌即売会などの「コミックマーケット」では、3日間で50万人以上が集まる国内最大のイベントとして定着している。その集客数の多さからアニメなどを好むいわゆる「オタク」市場に注目する企業は増加しており、大手食品メーカーなどは人気漫画とコラボした商品を開発。中小企業でも既存品のパッケージ変更で売り上げアップを期待できると取り入れている。テレビゲームやアニメ関連商品などを販売する「メディオ!」の運営会社㈱ドリスピ(岡山市)によると「ここ数年、さまざまなメディアにいわゆる『萌え系』キャラクターが取り上げられたことで市場が一般化した。それによりアニメなどのキャラクターをパッケージにデザインした商品が増加。大手企業に限らず自治体や地方の中小企業からも参入が増えている」と話す。

瀬戸農産物加工企業組合
パッケージ変更し売り上げ10倍に

 岡山県でも成功事例が出ている。瀬戸農産物加工企業組合(岡山市)は、2010年7月にトマトやピオーネなど県産フルーツを使ったゼリーのパッケージに、オリジナルの美少女キャラクターをデザインした「じゅれみっくす」を発売。インターネット通販に掲示したところ全国から問い合わせが相次ぎ、1年間で約8000個を販売した。それまで販売していた土産用の通常パッケージのものに比べ10倍の売り上げとなった。キャラクター商品企画開発などの㈱シービスケット(大阪市)から企画を持ち掛けられ、不安もあったが「岡山県の特産品として何とか若い世代に向けてPRしたい」との思いから開発に踏み切った。現在は第3弾が発売され、人気シリーズとして定着している。
 
備前長船刀剣博物館
単発イベントで年間入場者迫る

 備前長船刀剣博物館(瀬戸内市)では、2011年7月から約1カ月半、ゲーム開発、販売の㈱カプコン(大阪府)が開発した戦国時代の武将が登場する人気ゲーム「戦国BASARA」とコラボしたイベントを開催。
 
 内容は、ゲーム内に登場する真田幸村や伊達正宗などの武将にまつわる刀や武具をキャラクターイラストとともに展示するというもの。展示物の撮影を自由にしたことで、来場者が撮影した写真をブログや投稿サイトに掲載。それが同ゲームファンの間で話題となり、期間中に2万人を超える来場者が訪れた。同博物館の1年間の平均来場者数が2万7000人ほどなだけに、企画を担当した学芸員の植野哲也氏も「これほど注目を集めるとは思わなかった」と反響の大きさに驚いている。

 今年は、第2弾となるイベントとして7月14日から、今秋に最新劇場版が公開される人気アニメ「エヴァンゲリヲン」とコラボした特別展を開く。

 特別展では、アニメに登場するロボットが使っているやりや剣、また刀匠がアニメから受けたインスピレーションにより制作したオリジナルの刀を含め、約20品を展示する。人気アニメとのコラボだけに各メディアで取り上げられるなど注目度も高く、同博物館では期間中3万人の来場者を見込んでいる。今後もさまざまなアニメとのコラボを検討していくことで若い世代に日本刀の文化を浸透させる計画だ。

畠山製菓
若者世代の掘り起こし期待

 県内企業で新たに参入を検討しているのが米菓製造販売の畠山製菓㈱(瀬戸内市)と和菓子製造販売の㈲福井堂(備前市)だ。両社とも顧客層は40~60歳代がメーン。若い世代の掘り起こしが課題となっており、商品を食べてもらうきっかけにしたいと新市場への参入に踏み切った。

 畠山製菓は、今年1月ごろから自社のオリジナル商品として企画。パッケージデザインは、萌え系キャラクターなどの無料投稿サイト「ピクマート」を運営する(資)インク(岡山市)に依頼し、試作品として岡山ゆかりの戦国武将、宇喜多秀家と妻豪姫をアニメキャラクターにしてパッケージにデザインした。商品は若者でも気軽に食べられるようにと、もち米にキビを混ぜて焼き上げたほんのり甘い既存品のおかきを採用。岡山駅の土産物店や道の駅、ネットによる販売を検討している。販売時期や値段は未定だが、デザインや商品内容も含めてブラッシュアップする考えで畠山敏雄社長は「キャラクターカードを入れるなど、若者の購買欲を刺激する商品にしたい」と話している。

福井堂
萌え商品のOEM製造狙う

 福井堂は、OEM製造の新規受注につなげようと参入を決めた。今年4月、(資)インクと共同で試作品を製作した。メイド服を着た萌え系キャラクターをパッケージにデザイン。若者向けということもあり、白あんに練乳を混ぜたミルク風味の既存品のまんじゅうにアレンジを加えたものを作った。5月に岡山ドームで行われた同人誌即売会のイベントで試作品を展示。来場者からは「いつから販売するのか」と興味を示す声が多く、反応は上々だったという。これを基に萌え系商品を企画、販売している企業などに対し積極的にPRしていく考え。マクドナルド吉延洋子社長は「現時点で自社ブランドとしての製造は考えていないが、若い人に商品を食べてもらえるような新しい企画に取り組んでいきたい」と話す。

細かいキャラ設定で購買欲刺激

 オタクマーケットに対し新たな販路開拓としての期待が高まるが、㈱ドリスピは「萌え系や美少女キャラクターなどをただ商品パッケージに採用するだけでは売れない時代になっている」と指摘する。同社によると、ここ5年で市場では類似商品が急速に増えており飽和状態。新たにヒット商品を生み出すためには、キャラクターの性格や衣装、ほかの登場人物との関係性など最初の段階で細かい設定が必要。そうすることで購入者はキャラクターに対して独自のストーリーを想像し感情移入することで購買欲が高まるという。また、キャラクターに声優をつけるなど段階を追って付加価値をつけることで、収集したいという気持ちを刺激することができるそうだ。同社は「後発企業が成功するには、キャラクターに感情移入させる仕掛けづくりが重要な要素になる」と話す。

インタビュー
根強いアニメファン多数
イベントに毎回2000人

岡山コミックイベント連合代表 岡本宏志氏

 岡山県の漫画同人誌販売やコスプレショーなどのイベント「ぶちすげぇコミックバトル」を手掛ける岡山コミックイベント連合の岡本宏志代表に、岡山県のアニメファン事情について聞いた。

-主催するイベントは

 イベントは1987年に初開催し、25年が経つ。現在年間5回開催しており、人気アニメをもとに自作した漫画同人誌や関連グッズの販売がメーン。そのほか、アニメに登場するキャラクターの衣装を身に着けたコスプレショーなども人気だ。

-来場者数、売り上げは

 自由に企画したアマチュアの地方イベントでも市場はそれなりに大きい。イベントは1日のみだが来場者は、毎回2000人を超える。基本的に10~20歳代の女性が多いが、30代や40代の人も参加している。出店ブースは約150~200が出ており、売り上げは約1000万円にもなる。人気アニメなどとタイアップしたイベントを行えば、来場者1万人も可能だろう。

-県内のアニメファンについて
 
 岡山は中四国の中では、根強い漫画、アニメファンが多い。また、漫画同人誌やアニメのイラストをかく人の活動も盛んだ。25年間もイベントを続けて来られたのはそのおかげ。今では親子で訪れる人もいる。また、交通の便が良いことから、中四国、関西からの来場者も多い。

-パッケージにキャラクターを使用した商品について

 アニメなどの愛好家は同じ趣味を通じてコミュニケーションを取り、情報を共有化することを好む。そして話題になるような新しいキャラクターを絶えず探しており、特に地方発の商品は話題にしやすい。県内企業が美少女キャラクターなどを商品パッケージにすれば、興味を持つきっかけにできるだろう。地元のアニメファンに認知させれば、ブログやツイッターなどを通じて発信する。手探りでもまずは商品を作ることで何らかのアクションがうかがえ、ニーズをつかむことができるのでは。

本誌:2012年7.2号 4ページ

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