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巻頭特集ドライバー不足、罰則強化で物流に赤信号

輸送力確保へモーダルシフトの注目度高まる

  • 広大な西岡山駅

 トラックのドライバー不足問題が深刻化している。リーマンショック後の景気後退で忘れられていた同問題が、輸送量が回復した昨年夏に表面化。依頼を断らざるを得ないケースも発生している。さらにドライバーの長時間拘束解消への動きが、長距離輸送に打撃。基準の1日13時間を超過する可能性がある東京への輸送を断る事業者も増えているという。次善の策として鉄道に注目が集まるなど、これまでとは異なる動きも見られだしたトラック運送事業者の動きを追った。

物流危機が現実に

 「昨年夏と今年3月、多くの事業者で依頼が輸送能力を上回り、荷物を運べない事態が発生した」(桐岡尚一岡山通運㈱常務)。2008年の国土交通省の報告書ですでに指摘されていた深刻なドライバー不足が現実のものとなった。

 同報告書では2015年に14万人が不足すると指摘。しかし直後にリーマンショックが発生し、その後も東日本大震災が発生するなど日本経済が停滞したため深刻には受け止められていなかったという。ところが製造業を中心に回復傾向に入ると、再び業界が抱える不安材料として浮上。昨年4月に同省が発表した「貨物鉄道輸送の将来ビジョンに関する懇談会報告書」で同数字を引用した際には、「2015年危機」と取りざたされるようになっていた。

 それが、昨年夏の予想以上の荷動きの回復と消費増税前の駆け込み需要で2015年を待たずしてオーバーフロー。駆け込みの反動のあった増税後も危機的状況は変わらず、歳暮シーズンに輸送手段を確保できるか、トラックの奪い合いが避けられない状況に戦々恐々としている荷主も多いと言う。

解決には値上げが不可欠

 国土交通省の交通関連統計資料集によると、トラックドライバー従業者数は2006年の91万8000人をピークに減少を続け、2011年には77万3000人に激減。年齢構成は大型ドライバーの場合2011年で40歳以上が73%を占めており、先行きは厳しい。

 (一社)岡山県トラック協会(新見健会長)をはじめ全国のトラック協会ではドライバー減少の一因として、利用頻度の高い総重量5t以上のトラックを18歳の高卒者が運転できなくなった2007年創設の中型免許制度を挙げ、要件緩和などを警察庁に要望。貨物限定で18歳でも取得できる「3.5t以上7.5t未満」の新たな区分を設ける方針が決まり、法改正へ動くこととなった。

 しかし、「根本的な原因は、低賃金など待遇の改善が進まないことにある」と同協会の田中明夫専務理事。1990年の規制緩和で新規参入により輸送単価が大幅に下がり燃料価格が高騰してもなかなか改善が見られない中で、中小零細企業の6割が赤字という状況では、「給料を上げるのは難しい」と話す。

 荷主に対する値上げ要請は、複数社で行うと独占禁止法に触れてしまい、地方の事業者が単独で交渉しても歯が立たない。何より他社に乗り換えられてはかなわない。

 このため燃料高騰、人手不足などのコスト上昇要因などを理由に9月1日、24年ぶりに運賃改定し15%の値上げを行った日本通運㈱(東京都)など、大手の動きに期待が集まっている。


長距離輸送自体も困難に

 ドライバー不足で頭を抱える中、さらに長距離輸送自体不可能になりつつあるという大きな問題も同時進行。2012年4月の関越自動車道高速ツアーバスの事故を受け、トラック業界でもドライバーの長時間労働解消へ監査体制や重大違反に対する罰則を強化したためだ。

 岡山から東京へ荷物を運ぶ場合、渋滞や配達先の物流センターで順番待ちによる待機時間が発生すると、労働大臣告示で規定されている拘束時間1日13時間を超える可能性があり、1人での輸送は実質不可能ということになる。2人で運行する手もあるがコストが跳ね上がり、ドライバーも不足している状況では非現実的。コンプライアンスを重視する事業者にとってはリスクが大きい。

 このため多くの事業者が長距離輸送を敬遠するようになった。岡山通運の桐岡常務は「1人で輸送できるぎりぎりのラインは500㎞圏。さらに帰りの便の荷物が期待できるとなると名古屋が分岐点」と指摘する。
地場中堅事業者では、国が拘束時間の問題など安全管理について問題視した時点で、長距離輸送から距離を置くようになっていたが、昨年9月に通達が出されたことで、中小零細にも広がりつつある。

鉄道利用が増加の兆し

 ドライバー不足の根本的な解決に時間がかかり、長距離輸送も困難になる中、次善の策として荷主から配達先への輸送ルートのうち、中間の長距離輸送部分を鉄道に置き換えるモーダルシフトが注目されている。

 特にその要因となっているのが、荷主の意識の変化だ。岡山から荷物を送る場合、関東以遠でなければトラックよりコスト高になり時間も大幅にかかるためこれまで敬遠していた荷主の一部が「ドライバー不足で荷物を動かせないという危機感から鉄道利用を承諾してくれるようになった」(桐岡常務)という。事業を維持するためには背に腹は代えられないというわけだ。
日本貨物鉄道㈱(JR貨物)岡山支店によると、新規の通運会社や荷主からの問い合わせが昨年以上に増えており、実績も上がっているという。県内2カ所の貨物駅「西岡山駅」「東水島駅」の貨物取扱量はリーマンショック後2012年度に53万7000tにまで激減していたのが、昨年度から一転回復基調に入った。今年度に入ってからも4月は消費増税の駆け込みの反動があったものの、5月以降は荷物量を大幅に落とした大口荷主がある中で前年並みを維持。同支店は「新規案件や、既存客の増送がかなり増え、特殊要因での減少分をカバーしている」としている。

 リーマンショック前までは、モーダルシフトの原動力は企業の環境対策だった。特に京都議定書の発効を受け2006年に施行された改正省エネ法で荷主、輸送業者に目標の設定と定期報告が義務付けられた際には、大きくシフトが進んだ。しかし経済が停滞すると、コストやスピードがより優先されるようになり、取扱量が減少。それが今や環境対策ではなく、物流を維持するための手段となりつつある。

 課題は旅客優先で輸送量に限りがある点。味の素グループが2016年度までに船舶、鉄道へのモーダルシフト100%を目指すと発表するなど、今後ますます取り組みが加速することが確実なだけに対応が急がれる。

本誌:2014年10.13号 4ページ

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