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巻頭特集急拡大の介護事業に新たな潮流

生き残り模索する事業者 「特化型」「異業種」「海外」などがキーワードに

  • 弱った筋肉の動作性を改善するパワーリハビリ(レッツ倶楽部岡山西)

 超・高齢化時代の到来で、数少ない成長分野として注目される介護事業。頻繁に行われる法改正への対応は何かと大変だが、市場は拡大の一途で、岡山県下でも施設数は増加を続けている。特に規制の少ないデイサービスは異業種からの参入も多く、「飽和状態」の声も聞かれ始める中で差別化が課題となっている。介護業界の新たな「潮流」と、ビジネスとしての可能性を探った。

 岡山県長寿社会課によると、県下で介護サービスを提供する事業所は、今年4月1日現在1万650施設。この10年余りでほぼ倍増=表参照=し、ここ数年は横ばいだが、施設数を制限する「総量規制」がないデイサービス(通所介護)は初期投資も抑えられることから比較的参入しやすく、655施設と1年で51施設増えた。高齢化という“市場性”に加え、9割は保険で賄われるという介護保険制度の仕組みや、4月の制度改正で国が「施設から在宅へ」の方針を示したことも流れを加速させている。

 一方、岡山はチェーン展開している事業者が多く「既に飽和状態に近い」と指摘する事業者もあり、開業したものの営業力不足などで閉鎖に追い込まれるケースも増加。今年4月の制度改正はデイサービスに厳しい内容で、報酬カットを避けるため営業時間を伸ばし、結果的に人件費が膨らんだ事業者も多い。改正時の調査では30%が赤字経営で、生き残りへ差別化、サービスメニューの充実が不可欠となっている。

 キーワード①特化型 レッツ倶楽部岡山西

 そうした流れの中で、このところ増えているのがリハビリ特化型施設。9月3日にオープンする「レッツ倶楽部岡山西」(岡山市北区今8-14-13)は、岡山では珍しい半日型のリハビリに特化したデイサービス。6種類の機器(上肢、下肢、体幹)を使い、弱った不活動筋の動作性の改善を図るため、通常より負荷のかからない「パワーリハビリ」を提供する。リハビリ特化型の中でも、さらにニッチなニーズにターゲットを置いた新タイプの施設だ。

 レッツ倶楽部は、リハコンテンツ㈱(千葉県船橋市)が2011年から全国にFC展開しており、岡山西が26施設目。運営に関するノウハウを提供されるため、異業種からの参入も多い。山下哲司社長によると、医療機関でのリハビリの上限が180日と設定され、退院後の“リハビリ難民化”が高齢者の寝たきりの原因になりやすいことから、その受け皿として同業態が注目されている。

 一般のデイサービスでは利用者の大半が75歳以上の後期高齢者の女性だが、レッツ倶楽部は前期高齢者(65~74歳)が40%、2号被保険者(40~64歳)25%で、性別では男性が60~70%を占める。短時間(1回3時間)で機能回復のために必要なリハビリのみを提供するスタイルが、食事、入浴、レクリエーションなどの一般的なデイサービスに拒否反応を示しがちな男性から支持され、オープン1年後で平均80~90%という高稼働率につながっている。

 岡山西を運営する㈱エスピーウエー(岡山市)の春名道子社長は「高学歴の高齢者が増えることからもニーズは見込めるはず。看護師の経験を生かし、開業3カ月で稼働率80%を目指す」と話している。

 キーワード②異業種 セシルグループ

 岡山商工会議所には、創業や経営革新に関するさまざまな相談が寄せられるが、このところ建設業などから介護事業参入に関する相談が増加。昨年12月には医療・介護福祉分野に絞った「ビジネス交流会&セミナー」を県商工会議所連合会主催で初開催し、2度目の開催に向け準備を進めているという。

 昨年10月に創設された「サービス付き高齢者向け住宅」制度の県下第1号として、今年1月にオープンした「セシル国富」(岡山市中区国富792-1)を運営するセシルグループ(江藤幸輝代表)は、県経営革新計画の承認を受け不動産業から参入。別に立ち上げた医療法人と連携し「家庭の延長の暮らし」の提供に努めている。

 参入の狙いについて、江藤代表は「国の在宅介護の方針は、地域コミュニティーと家族、訪問介護をミックスしなければ成り立たない」と現状とのギャップを疑問視。さらに「高齢者がなぜホームに入居するのか考えると、求めるものは“モノ”ではなく“コト(サービス)”」と、サービスの充実した施設の必要性を強調する。

 利用料金の9割が保険で賄われることなどから顧客単価が高く、ビジネスとしての「介護」には魅力も多いが、実際に事業を始めると「介護業界で働いてきた職員との収支などに対する温度差は大きかった」と江藤代表。意識のギャップを徐々に埋めながら、ついのすみかとなる可能性の高い高齢者向け住宅として「死」を真正面から受け止め、質の高いサービスを追求している。

 キーワード③海外 MaCO

 「世界の工場」からマーケットとしての存在感が高まる中国。人口13億人のうち、2050年には高齢者が4億人を突破すると予想されるなど、日本以上に深刻な少子高齢化が社会問題化している。介護・福祉分野でも日本企業の進出は始まっており、デイサービス、介護付有料老人ホームなどを展開する㈱MaCO(瀬戸内市)は、3年後をめどに中国での施設展開を視野に入れている。

 「中小の事業所では聞いたことがない」(中川浩彰社長)という中国進出を考えた背景には、日本国内での深刻な担い手不足がある。介護ロボットの保険適用など国の問題意識も高まっているものの関係者の危機感は強く、中国人を日本に受け入れMaCOの施設で経験を積んでもらうほか、将来中国に開設する施設ではリーダーとしての役割を期待。現地の視察などを重ねている。

 中川社長によると、中国では1人っ子政策に加えて「世間体を気にして施設を利用したがらない」ため、人を雇い在宅で介護するケースが多く、もちろん介護保険のような制度もない。未知の世界への挑戦に「当社の社名は中国の伝説上の仙女『麻姑』にちなんだもので、運命的なものを感じる」と意欲満々で、中国語のマスターに日々励んでいる。

 中小企業診断士の安原朋彦氏によると、介護事業の将来性は「今後30年は高齢者人口が増え市場として有望だが、その分競合が激しく、どう差別化するかが課題になる」と指摘する。医療との連携は必須のほか、顧客満足度を高める上で重要なのが、接客業としてのサービス提供=人材育成と「食」という。

 食事は見過ごされがちな面もあるが、実は施設退去の理由にもなりかねないポイント。安原氏自身も岡山市内の給食事業者と連携して「高齢者が食べておいしい食事」の研究中だ。また、コンサルの立場からは資金調達に伴う事業計画づくりを依頼されるケースが増えているそうだが、介護・福祉に精通した専門家はまだ少なく「現場が分かる人と連携することが重要」と話している。

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