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連載記事

低成長時代は割り切ったニーズを掴め

 昨年から今年にかけて、岡山県内の普通科高校からキャリアコンサルタントとしての講演依頼が増えています。講演内容は時代を反映し「面接対策」「社会人の自覚」等の就活対策が多数を占め、教育機関の変化を肌で感じています。以前は普通科からは進学する生徒が大半でしたから、今後はこうした取り組みがもっと手厚く必要なのかもしれません。「学ぶことの意味」や「自己のキャリア」を再検討したり、「コストとキャリアバランス」を考慮すれば、普通科高校から就職という選択肢は当然出てくるはずです。もっとキャリアの多様性が認められる世の中へと、より社会が成熟していくことを望みます。

消費者ニーズは多様化したのか?

 ラヂオから聞こえてくる美空ひばりさんの歌声は、世代や嗜好の垣根を越えて多くの人を魅了しました。今日では同じアーティストのファン同士が、偶然に巡り会うことは稀でしょう。このように消費者ニーズは多様化・高度化され、マイクロマーケティングやペルソナマーケティングといった手法で、「個人」または「狭い範囲」のニーズを掴もうと各業界が必死です。ショッピングモールを見ても、店の外からどんなファッションかはっきり分かる店が殆どで、財・サービスともにカテゴリーキラー(特定の分野に特化し、種類や価格で差別化を図る小売店業態)が有効戦略と考えられています。

 一方、ユニクロはどうでしょう。同店舗では、子どもからご年配の方まで楽しそうに買い物をされています。売り場には定番商品が当然のように並び、サイズ・色違いが用意されています。そこには、メーカーや流通が追い求めた細分化されたニーズではなく、「他人や別世代と同じ物でもかまわない」というニーズが見て取れます。低成長からの脱却が見えてこない現状では、「本当に差別化が必要なこと以外には、お金をかけない」という割り切ったニーズもあるのです。このように成熟市場での消費者ニーズは、「多様化」と「簡素化」が共存するのかもしれません。

安かろう悪かろうは愚の骨頂

1.安価 
2.シンプル 
3.古さを感じない 
4.使いやすい

 これらのキーワードでも「安価」がやはり重要です。安価とは単純に安物を意味するのではありません。サンヨーの充電池エネループは1本300円程度しますが、約1500回使用できますから1回あたりでは20銭。充電にかかる電気代も1回約20銭ですから、十分安価な商品といえます。安物を買うのではなく、本当のお買い得品を消費者は見分け始めています。これは、成熟社会では先輩にあたるヨーロッパの市場に近い傾向ではないかと思います。

UDのものづくり

 簡素化されたニーズへのヒントとして、ユニバーサルデザイン(以下UD)があります。UDとはノースカロライナ州立大学のロナルド・メイス氏が提唱した概念で、「老若男女、障がい、能力の差異を問わずに使える設計(デザイン)」を目指すことです。缶ビールの上面には視覚障がいの方にも分かりやすいように「お酒」と点字表記されています。この点字のお陰で、子どもにも「ここに点々があるのは飲んではダメ」と分かりやすく教えることができます。また、指をかけるタブ(引き金)手前を少し凹ませて、指が引っかかりやすくしてあります。一見すると販売促進には無関係に見える部分に優しさや分かりやすさが求められ、徐々に評価され始めています。ターゲット(対象)にフォーカスしながらも、多くの人に受け入れられるポジション(立ち位置)をとることで製品寿命を伸ばせるかもしれません。「ロングセラーは生まれにくい」という現代マーケティングの定説にあえて挑戦できないでしょうか。スクラップアンドビルドから世代を超えて使えるものづくりを考える時期かもしれません。次回はUDについてもう少し詳しくお話しいたします。

筒井徹也(鉄じぃ)
(有)エヌティ・クリエイト プランナー
倉敷芸術科学大学 観光学科 非常勤講師
キャリア・コンサルタント

ご感想・ご質問は son57@tteac.com 鉄じぃまで

本誌:2011年2.14号 21ページ

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