WEB VISION OKAYAMA

巻頭特集林原グループ

私的整理から会社更生法に転換 金融機関同士の調整が付かず

  • 2月5日関係人集会を岡山市内で開催

 ㈱林原(岡山市)、㈱林原生物化学研究所(同)、㈱林原商事(同)の3社は、2月2日、事業再生ADR(裁判外紛争解決)による再建を断念、東京地裁に会社更生法の適用を申請した。負債総額は1500億円以上(㈱東京商工リサーチ調べ)。同日東京で開かれた債権者集会で取引金融機関の間で調整が付かず私的整理に必要な全債権者の合意が得られなかったため。メーン行の㈱中国銀行(同)は当面の資金繰りを支援。今後再建策の協議の中でスポンサーの確保と債務の圧縮が焦点になりそうだ。

 「担保評価巡り許容範囲に食い違い」

 林原や中国銀行では、当初事業再生ADR手続きでの再建を最善策として進めていた。「法的整理に比べ期間が短く林原の事業価値の毀損が最小限に抑えられる」というのが理由。一般債権者を巻き込まず金融機関だけの調整で済む利点もある。事前の債権者への打診では「ADRについて多くの金融機関が支持してくれた」(同行)と言う。

 しかし、林原は会見で「金融機関の担保の取り扱いに差」「不正経理がADRになじむのか」「法的整理と私的整理の長所短所を勘案して」-などの点を挙げ法的整理に切り替えたという。また、一連の報道で林原の信用不安が広がり既に原材料調達のなどに影響が出始めていた。それを回避することが重要課題となり、さらに時間をかけて金融機関同士の調整をするのは困難な状況になっていたことも背景にあるよう。

 金融機関の担保の問題では、同行や住友信託銀行㈱(大阪市)など一部債権者が昨年末から年初にかけて相次ぎ林原の不動産に相次ぎ根抵当権設定を登記。「有利な立場で事前にADR申請の動きを知り担保を取ったのでは」として、「不公平感がある」「担保効力、対抗要件もどうなのか」というもの。

 同行は、JR岡山駅前の本社・駐車場の敷地の大半(3万9000㎡)に昨年12月に根抵当権設定の登記をした。1989年ごろに既に担保契約を締結したが登記留保していた。その後、林原の不正経理が発覚した後ADR成就に向け同敷地の残りの土地(6600㎡)を担保に追加融資などの支援をする中で「(既存の土地の)登記をきっちりした方がよい」と判断した。ADRの動きを知り急に担保を取ったのではないと言う。

 注目を集めている直前の駆け込み的な登記問題だが、同行では「債権者集会でこれが問題となったわけではない」ときっぱり否定する。担保の問題でも全く別の問題で「守秘義務で具体的には言えないが、要はADRを進める上で担保評価について弊行と一部金融機関と意見が分かれたため」と言う。「弊行はかなり譲歩したのだが…」とも付け加える。

 林原の不正経理の問題も影響。集会では他の債権者から「ADRより透明性のある法的整理の方がよいのでは」との声もあったとされる。

 中銀は資金繰りを支援

 会社更生法での再建で、金融機関以外の一般企業からの商取引債務は全額支払う方針。中国銀行は当面の林原の資金繰り支援のため、40億円のコミットメントライン(融資枠)を設定する。他行とのシンジケートローン(協調融資)ではなく単独で実行する。
ちなみに、同日林原3社向けの債権額が454億7100万円と公表。担保で保全されていない198億円を貸倒引当金に繰り入れ処理する。更生法になったことで債務者区分が「破綻先」となりADRより負担は増加したが、「コア業務純益が計画を上回るペースで推移し年度決算では黒字を確保できる見通し」(永島旭頭取)とした。

 中核事業に特化し再生

 今後更生法での手続きでは、地裁から更生手続き開始決定が下りた後、更生管財人を選任。管財人が林原の財務、債権債務を精査し更生計画案を策定。並行してスポンサーとなる企業を選定する。経営陣は刷新される。

 当初のADRでの計画では、競争力のある食品、化粧品などの中核事業に特化、非中核事業から撤退、資産の処分、グループ企業の再編、リストラなどが骨子。更生計画案も基本的にはこの路線を踏襲するものとみられる。

 再生はスポンサー獲得カギ

 また、更生法では特にスポンサー確保がカギとなる。県内では、ケイ・エス・ケイ・カード㈱(倉敷市)で㈱青山キャピタル(福山市)、シンコー電器㈱(井原市)で㈱タカヤ(同市)がスポンサーとなった。林原でも既に名乗りを上げている企業があるよう。その点では有利だ。

 債務の圧縮も課題。ADRでの案では、債務の株式化290億円、返済猶予・分割払い215億円などが盛り込まれたが、これは見直され新たなスキームづくりの公算が大きい。

 当初ADRでは対象となっていた太陽殖産㈱(岡山市)は資産超過のため更生法申請は見送られた。

 また、同日不正経理の責任を取り林原健社長、弟の靖専務が退任。林原生物化学研究所の福田恵温常務と林原商事の十川高尚常務がそれぞれ社長、専務に就いた。


 今後の焦点はスポンサー
 商取引先全額支払いは英断

 弁護士 菊池捷男氏

 多くの事業再生案件を手掛けてきた、弁護士菊池捷男氏に今回の会社更生法申請、今後の見通しを聞いた。

 ―事業再生ADRが見送られた理由

 一番大きいのは、粉飾決算による不信感ではないか。事業再生ADR手続きは、提出される内容に信頼を置けてこそ成り立つ。また、抵当権に関する不公正感があった場合、議論の対象となり、当事者間の調整となる私的整理では解決が難しい。

 ―民事再生法でなく会社更生法を選択

民事再生法は再生債務者が主導する。今回は経営陣への不信感があったため、スポンサーを入れ、経営陣、株主から抜本的に変える会社更生法でないと再建が図れないと判断したのではないか。原則会社更生法では債権は一律平等だが、今回商取引先の債権を全額支払うとしたことは、英断だと思う。取引先への信用を保つことができ、今後手続きを進める上でプラスになる。

―成功するためのポイントは

 スポンサーだ。今後1~2カ月で探し、再建を任せられるスポンサーが見つかれば、その経営者が管財人となる。更生計画の内容は会社、債権者にとってベストな方法を模索するが、管財人の考え方によって変わる。また債権者が満足できる更生計画を出せるのか。資産をどれだけ高く売れるかがポイントになるだろう。

PAGETOP