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花田少年史~幽霊と秘密のトンネル~下

 映画のロケ地を訪ねる「シネマで散歩」、第15回は前回に続き平成18年公開の「花田少年史~幽霊と秘密のトンネル~」(監督/水田伸生、主演/須賀健太)。主人公が自転車で走り抜けた竹原市忠海の町なかを歩いてみた。

広島県竹原市

(こんな映画) 
小さな港町で暮らすわんぱく少年・花田一路(須賀健太)は、ある日、トラックと衝突する大事故に遭う。九死に一生を得た一路だったが、幽霊が見えるという不思議な力を授かってしまう。父(西村雅彦)や母(篠原涼子)、そして幽霊たちを巻き込んで、一路のひと夏の冒険が始まる・・・。

一路がばあちゃんに叱られた”宮島さん”の前

映画のオープニングは、ど派手な親子ゲンカでスタートする。
学校から帰った一路(須賀健太)、おやつのブドウを食べながらテレビをつけるが、画面は乱れっぱなし。怒った一路、近くにあったギターを振り上げ、テレビを打ちのめす。まっぷたつに折れるギター。そこへ入ってきたのが母・寿枝(篠原涼子)。ほうきを片手に髪を逆立て怒った、怒った。「私の大事な青春の遺産を壊したな!」「テレビが古いのが悪いんだ。新しいテレビを買え!」「うるさい!許さん!」ここから母と子の奇想天外な大立ち回りが始まる(篠原涼子が怪演)。結局、一路はブドウを口にくわえたまま、自転車で逃げ出すことになる。

逃げ出した一路が愛車に乗って走り抜けた忠海の町なかを歩いてみる。先ずは、吉川のばあちゃん(もたいまさこ)、一路を怒鳴る、というシーンが撮影された場所だ。午前中に訪ねた忠海ほほえみタウン商店会の北方さん達に教えてもらったその場所を案内図で確認する。先ほどまで取材をしていた忠海東小学校のすぐ近くだ。

小学校の西側に広がる忠海東町5丁目は、路地が網の目のように伸び、その周りを昔ながらの民家がびっしりと軒を並べている。昭和30年代の子供の頃にタイムスリップしたような懐かしさにあふれた町並みだ。ロケ場所にやってきた。

四つ辻の角に朱色が鮮やかな祠がある。自転車に乗って家から飛び出した一路が、この祠の前で、ばあちゃんの愛犬ジロのえさの入った食器を轢いて逃げようとしたのだ。「待て!」。ブレーキをかけて急停止する一路。「花田一路、地獄に落ちさらせ!」。一路、振り向いてブドウの種をプッと吐き出す。「フン!」。ばあちゃんに背を向け再び走り出す一路・・・。

忠海は港町。町なかのいたるところに、神社や祠がある。四つ辻にある新中商店の奥さんによるとこの祠は”宮島さん”と呼ばれているそうだ。数ある祠の中でも一番印象に残る”宮島さん”だった。

一路が自転車でかけ上った高台の坂道

”宮島さん”をあとにして、次のロケ地をめざす。東町5丁目の中心地点にあるロータリーまで歩く。近くには今も銭湯が健在だ。そこから幅1メートルほどの路地をくねくねと通り抜け、映像にも残っている特徴のある門柱の家を探す。見つけた。間違いない。この通りだ。ブドウを食べながら真っ赤なTシャツを着た一路が、自転車で走り抜けたのは。

狭い道の両側に立ち並ぶ民家の軒下にはたくさんの植木鉢が置かれている。桔梗の花が太陽の光をもろに受け止めて立ち向かっている。格子窓のある家の軒先では釣忍が揺れている。うだるような暑さだったが、路地を行きつ戻りつしながら、忘れてしまいそうになる懐かしいふるさとの香りと風情をしばらくの間、楽しんだ。

門柱の家のある通りで親友の壮太(松田昂大)と出会った一路は、今度は壮太と一緒に忠海の町なかを疾走する。海沿いの道を、呉線の踏切を、東小学校のグラウンドを、商店街(この部分は竹原中央商店街でロケ)を・・・。

最後に2人がやってきたのは、東町3丁目にある上り坂。坂道のすぐ上が忠海中学校という高台にある場所だ。一路、「おりゃ!」という掛け声を出しながら、自転車に乗って坂道を上ってくる。一方、壮太は、自転車を押しながら、今にも泣きそうな顔で必死に一路を追いかける・・・。そんなシーンが撮られたところだ。

坂道の中ほどあたりで立ち止まり、忠海の町を見おろす。町並みの向こうに穏やかな瀬戸の海が広がっている。手前に浮かんでいるのが大久野島と小久野島。その向こうに見える島々は、墨絵のようにうっすらと横たわっている。タイトルバックの風景も、多分、ここから撮影されたのだろう。

ガードレールの手前に腰をおろし、しばし一服する。時おり海の方からゆるやかな風が吹き上げてくる。ほんの少しだが汗がひいていくようだ。
坂道をゆっくりと下り、国道185号に出て、忠海駅にもどった。
           (おかやま魁 鷹取洋二)

「花田少年史~幽霊と秘密のトンネル~」
 ・平成18年(2006)、「花田少年史」製作委員会作品
 ・DVD発売中/価格:5,040円 発売元:バップ
        (C)2006「花田少年史」製作委員会

本誌:2010年11.15号 2ページ

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