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高橋大輔・トリノ2010

 バンクーバーオリンピックでは惜しくも銅メダルだった高橋大輔がトリノのフィギュアスケート世界選手権大会でついに金メダルを取りました。浅田真央とともに男女とも優勝という文句なしの快挙です。しかも今年は第100回の記念すべき大会でした。

 目の肥えたヨーロッパの観客に高橋はどう映ったのか、それはYouTubeにアップされたイタリアやフランスのテレビ動画を見ればよく分かります。解説員がすっかり興奮して「素晴らしい」「最高」「お見事」「音楽性と技術が完全に溶け合っている」などと絶賛。

 日本のテレビはオリンピックに比べると世界選手権の扱いが小さく、なかなかノーカットで放映してくれないのですが、YouTubeなら好きなだけ繰り返してみることができます。

 ヨーロッパで絶賛されるだけあって、高橋の演技はもはやフィギュアスケートというスポーツの枠を超えて鳥肌が立つような身体パフォーマンス芸術の域に達していると思います。華麗なステップはもちろんのこと、小さな指先の動き、首の振り方、表情に至るまでこんなすごい役者は私も見たことがありません。

 高橋の今シーズンのフリーの曲目がフェリーニの名画「道」のテーマ曲(ニーノ・ロータ作曲)であったこともイタリアの観客を狂喜させました。

 第2次大戦直後、日本に負けず劣らず暗く貧しかったイタリア。なんとかその日1日の食事にありつくために人々が必死で生きていた時代の悲しみや憩いのひとときを現代の日本の若者が魔術師のように再現してみせたのですから、イタリア人が喜ばないわけがありません。

 花1輪をジャッジ席に差し伸べアピールするシーンについて高橋は「今日はジャッジが全員男性だったので困った」と朝のワイドショーで笑わせていました。

 観客の興奮をよそにやや抑え気味にインタビューに答える高橋はユーモアのセンスも一流です。来年の東京大会ではどんな魔法を見せてくれるのか今からワクワクします。

本誌:2010年4.12号 14ページ

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