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巻頭特集激増する中国人留学生と厳しい就職事情

大学→学業優先から支援強化へ、企業→専門職で成果上げる例も、留学生→日本の「就活」になじめず

  • 必死にアピールする留学生

 岡山県下の大学では、中国人を中心に外国人留学生が急増し、卒業後の進路が大きな課題になりつつある。多くの学生は日本での就職を希望するが状況は厳しく、日本人とは違う気質やビザの規制など「留学生ならでは」の事情もある。受け入れる大学は就職支援を強化する方針で、専門スキルを持つ学生を採用して成果を上げる企業も徐々に出ている。また、このところの景気低迷で、学生側に留学・就職での「日本離れ」も生まれつつある。少子化で将来予想される労働力不足を考えると、産業界も見過ごすことはできない留学生の就職事情を取材した。

■留学生総数は2400人

 県留学生交流推進協議会(事務局・岡山大学国際課)のまとめによると、県内大学への留学生総数は2422人(2009年11月1日現在、大学院を含む)。国別では中国が1843人と圧倒的に多く、続いて韓国221人、マレーシア63人など。大学別では岡山大学663人を筆頭に岡山商科大学560人、吉備国際大学472人、倉敷芸術科学大学330人―と続く。

 文部科学省が1983年に「留学生受け入れ10万人計画」を打ち出し、ここ数年は中国の進学熱の高まりに対し大学の定員が少ないこともあり留学生が急増している。これに対し、同協議会集計による2008年度の国内就職者は63人で、うち35人が岡山県内への就職。75人が進学、199人が帰国などとなっている。

 現状について、経済産業省からの受託事業として、日本企業への就職を希望する留学生の専門教育から就職支援までをサポートする「アジア人財資金構想」事業を手掛ける県中小企業団体中央会によると、「留学生はできれば日本で就職したいが難しく、(ビザに滞在規制があり)やむを得ず大学院進学や帰国するケースが多いようだ」と話す。事業の“出口”となる企業との就職交流会を過去3年開催し、100人前後の留学生が参加したものの採用は毎年数人程度にとどまっている。

 ビザの関係上、留学生の就職は通訳などの専門職や技術職に限られる。繊維産業が盛んな岡山では比較的早くから中国に進出しており、過去に失敗を経験したところにはアレルギーもあるようだが、新たに海外で事業展開する企業など「チャンスがあれば採用したい」ところは結構あるという。しかし、肝心の留学生はアルバイトの延長的な感覚が抜けず、プライドの高さも災いし「100社以上の企業に挑戦するような日本の就活システムはなかなか理解してもらえない」と担当者は嘆く。

■企業ニーズに合う人材育成

 もともと大学は「留学生は学業が本分」という姿勢で、特別な就職支援はしていなかった。しかし、これだけ人数が増えるとそうもいかず、アジア人財資金構想事業も「最終目標は支援活動を大学内で確立すること」(中央会)にある。

 岡山大学は院生が多く、就職先は研究機関などに限定されがちだが「留学生を受け入れるのであれば(卒業・修了後も)きちんと対応する使命がある」との考え。具体的な対応は今後検討するが「企業は基本的に日本人と留学生を同じ土俵で競わせるので、企業ニーズに合う人材を育てるにはコミュニケーション能力を高めるのが一番の近道」とキャリア支援室では話す。

 岡山商科大学では、留学生採用の可能性がある企業に関する情報を積極的に提供しているほか、大阪で開催される合同企業説明会へのバスツアーも実施。説明会自体は10数社の求人に対し500人以上が参加する“狭き門”だが、今後は学内で講座を持つ行政書士の協力で「イメージ的に規制が厳しく、企業が採用に二の足を踏む要因と思われる留学ビザについて正しく知ってもらうための取り組みを考えたい」(キャリアセンター課)とする。

■企業の「期待」と「不安」

 中国人の上昇志向の強さによる「1人前になるとやめてしまうのでは…」と懸念する声はあるが、優れた人材も多く、留学生を採用し成果を上げる企業もある。

 外国人向け日本語教育を行う㈱岡山外語学院(岡山市北区中山下2-1-77)は、4~5年前から計3人の中国人を採用(上海駐在を含む)し、募集活動や学生に対するケアなどの業務を担当している。うち1人は同学院の卒業生で「いい悪いは別にして自己主張ははっきりしているが、仕事ぶりは一生懸命で能力は高い」(山中孝志副学院長)と評価。

 発酵食品の企画・開発などを手掛ける㈱機能性食品開発研究所(同市北区横井上49-1)は、中央会主催の交流会参加をきっかけに昨年、岡山大学農学部卒の李今月さん=中国・黒竜江省出身=を海外通訳として採用した。「大学で専門知識を学んでおり、前向きに頑張ってくれている」と池田昭社長。

 同社はマレー半島~韓国にかけての海外取引が売り上げの約30%を占める。華僑経済圏でのビジネスに中国語は不可欠だが、現地で頼めばどうしても母国に有利な通訳になりがちで「日本の文化まで理解できて初めてビジネスの通訳が務まる。中国語を話せる社員がいるということだけで交渉にプラス」とメリットを強調する。

 政府は「留学生30万人計画」を掲げ、留学生は今後も確実に増加する。一方で、少子化による労働力不足が深刻化すれば近い将来、外国人労働者に目を向けざるを得ない状況も予想され、「企業はメリット・デメリットをしっかり勉強しておくべき」と県中央会。機能性食品開発研究所の伊達彰常務は「業種にもよるが、女性、定年を迎えてもスキルのある人材、そして外国人を活用できない企業は疲弊していくだろう」と指摘している。

岡山県中国留学生学友会会長
劉暁邦さん(28)

 中国・大連から来日して8年目、岡山県中国留学生学友会会長を務める劉暁邦さん=岡山大学大学院社会文化科学研究科=に、留学生の就職事情について聞いた。

 ―中国人留学生の就職観。

 「4年ほど前までは日本で就職し、将来は現地の子会社や支社へ―というのがほとんどの留学生の希望でした。しかし、不況などで、今では中国に帰りたいと考える人も増えており、大連や広州などの大都市では、海外に留学している若者を呼び戻すことに政府が力を入れています」

 ―日本への留学と就職希望。

 「日本は留学手続きが難しく、富裕層はアメリカやイギリスを目指すようになっています。日本に留学した場合、日本で働いた経験がある方が母国に帰ってから高い給料をもらえる傾向はあります。人気は東京や大阪の大企業ですが、目的がはっきりしていないため長く続かないケースも多いようです」

 ―日本企業への希望。

 「グローバルな視点で外国人留学生が働きやすい環境を整えてもらえればと思います。留学生側も、日本で働くために必要なマナーなどをもっと身に着けておく必要があるでしょう」

本誌:2010年4.12号 4ページ

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