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毎日お世話になるけど、はばかられる話

 就職活動のマナーについて指導をするときの話です。「例外もありますが、一般的に女性の方が男性よりも清潔感についての意識が高い。ですから、髪型やスーツの着こなしは、できるだけ女性の眼で最終チェックしてもらいましょう」と伝えます。それほどに男女間での意識格差は存在するのですが、今回はその感覚の違いが最も顕著に表れる「トイレ」のお話です。

[成否を分ける要因]

 西日本旗艦店と称されるイオンモール岡山ですが、意外なことにネットでの検索ワード上位に「トイレ」があります。話題のトイレは3階にあり、女性の部屋をイメージさせる壁紙や絵画などがおしゃれにディスプレーされていて、中には「ここに住みたい」というツィートも見受けられるほどにメルヘンチックな仕上がりとなっています。これらの反応からも、女性にとってトイレはとても重要な意味を持つスペースであることが分かります。

 ですから、女性を飲食店にお連れするとき、ある意味では提供される料理よりも気を配らなければならないのがトイレなのです。もちろん、彼女たちは店内のクレンリネス(清潔な状態の維持)にも敏感ですが、それ以上にお手洗いへのダメ出しや生理的な嫌悪感を示すケースは多いのです。

 これは、男女の清潔感に関する意識差だけではなく、お手洗いに期待する機能面での違いも影響していると思われます。通常男性は用を足すのみですが、女性は身支度を整えたり化粧を直したりする大切な場所でもあります。そのため、平均滞在時間は長くなりますから、より強い印象を受け取ることになるのです。

 よって、ターゲティングが男性のみの業態ならば影響は小さいかもしれませんが、一般的な飲食店においてお手洗いという衛生環境が平均以下の評価では苦戦をまぬがれないともいえます。さりとて、すぐにイオンと同じことを目指すのはとても現実的とは思えません。まずは、ティッシュ・綿棒・大きめの鏡・悪臭対策等々のさりげない気配りでポイントを稼いでいる人気店から学ぶのが良さそうです。

[トイレがつくる街・組織]

 江戸の街が当時としては世界最大級となる100万都市に成長できた最大の要因は、トイレの充実と排泄物の循環システムが理想的だったからという説があります。独自の技術発展を遂げた日本の農業ですが、安土桃山時代には糞尿が下肥(農業用肥料)として使われ始めました。次第に農家が野菜と交換で引き取りを始め、ついには商品として独自流通するようにまでなりました。結果、町民にも衛生管理意識が芽生え、都市部周辺には豊かな農場が拡がって街の台所を支えたのです。

 一方現代社会においては、労働の安全衛生について定めた厚生労働省令の中に、お手洗いの基準が示されているのをご存知でしょうか。組織維持のためには、この程度は必要であると明確に決められているのです。

[労働安全衛生規則第628条より]
①男女を区別すること。
②男性用大の数は、同時に就業する男性60人以内ごとに1個以上
③男性用小の数は、同時に就業する男性労働者30人以内ごとに1個以上
④女性用の数は、同時に就業する女性労働者20人以内ごとに1個以上
⑤汚物が土中に浸透しない構造
⑥水を供給する手洗い設備の設置

[お手洗いと運気]

 トイレ掃除と運気の因果関係を指摘する書籍は枚挙に遑がありません。また、故松下幸之助さんやビートたけしさんなど、出世してもトイレ掃除を率先してやり続ける方も大勢いらっしゃいます。しかし、本当にトイレ掃除と運気には関連性があるのでしょうか。

 歯磨きや洗濯洗剤でお馴染みのライオン株式会社が行った調査によれば、トイレを清潔に保っている人の世帯年収平均は542万円。それと比べトイレが汚い人では平均454万円となり、両者の間には100万円近くの差がつきました。トイレ掃除と金運の関係性が、統計によって裏付けられたといえるかもしれません。あなたの家や職場のお手洗いは清潔に保たれていますか? 


筒井徹也(鉄じぃ)
スウィングモード 代表
倉敷芸術科学大学・倉敷市立短大 非常勤講師
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本誌:2016年7.11号 29ページ

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