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連載記事

方言ばあじゃ

 山陽新聞の投書欄に「方言ばあじゃ」というコーナーがありますが、私はあの欄はなるべく横目で見て素通りするようにしています。

 なぜ読みたくないかと言えば生粋の岡山っ子であるが故に、純粋岡山弁はあまりに恥ずかしい。あられもない醜態を人様に見られてしまったような気がするのです。岡山弁は「じゃーじゃー、がーがー」耳で聞く分にもえげつないのに活字にすると字面の汚さが一段と強調されます。

 「方言ばあじゃ」の投稿者はほとんどが女性で若い人もけっこう多い。岡山弁の達人たちは連日紙面で悪のりし、自己陶酔し、読者の羞恥心をかき立てるのに腕を競っています。

 でもたまには「ああ、そんな言葉もあったな」と懐かしく思い出すものもあります。例えば3月26日の朝刊では31歳の美作出身の女性が「そ」という言葉を紹介していました。人に物を渡すときに「そ」と言い、それは反抗期の高校生の心をも開かせる「魔法の言葉」であると。

 「そ」、確かにそんな言葉がありました。子供のころお年寄りが、ミカンやお菓子をくれるとき「そ」と言ってました。

 現在、60歳の私は何事も一筋縄でいかない父の食事を毎日作っています。いろいろ工夫してけっこう凝った料理を作るのですが、「親父、飯作ったから食うかい?」の一言がどうしても言えません。父も三文芝居じゃあるまいし、「せがれ、すまんな」など口が裂けても言えん、と顔に書いています。

 でもきょうから父に料理が載ったお盆を出すとき「そ」と声を添えてみようと思います。これ以上短い言葉はないし、「そ」ってそもそも意味があるのかないのか不明瞭なところが煮詰まった親子にはありがたいのです。まさに魔法の言葉です。

本誌:2009年4.6号 14ページ

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