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巻頭特集岡山県住宅供給公社

21年度末解散 吉備高原団地処理に妙案なし

  • 広大な空き地が広がる吉備高原団地

 岡山県の外郭団体である岡山県住宅供給公社(岡山市北区蕃山町1-20、理事長・古矢博通県副知事)は、21年度末の解散に向け、未分譲地などの資産処理へ本格的に動き出した。4月1日から一部団地を除き既に一般個人への分譲宅地の販売を中止し、一般競争入札など売却に向け準備を進めている。しかし、深刻な不況で住宅販売は低迷。さらにメーンの吉備高原団地は立地面でも難点があり売却は難航が予想される。資産処理に際し設立団体の岡山県の財政支援は必至の様相だ。県では今後並行して同公社の処理スキームを策定。他府県では3月末で第1陣の4公社が解散したが、いずれも未分譲地が少なかったところ。膨大な在庫を抱える公社の解散スキーム策定は全国にまだ参考事例がなく関係者は頭を抱える。

資産処理損失に数10億円の財政負担か!?

 同公社が抱える分譲団地の残区画数は3月19日時点で589。これに対し、分譲累計は762区画で、全体計画の44%が売れ残った。同公社では平成15年4月に不振団地の価格を下げたほか、17年度から紹介者報奨金制度を、19年7月にはグループ購入報奨金制度を導入し販売促進に取り組んできた。都市部の団地を除き成果は今一つだった。

解散に向け、まず公社の財務内容を確定する必要があるが、それには今後のこれら資産処理の動向がカギを握る。

残余区画は県が取得へ

県や同公社が示した処理策では、「吉備高原団地」(吉備中央町)と「岡山・グリーンテラス郡」(岡山市)は住宅メーカー、デベロッパーなど民間業者を対象に一般競争入札を実施し売却する。特に吉備高原団地は残区画数353と最大で「複数区画をワンブロックとして売却する方針」で、「具体的な区割りは現在検討中」(同公社)。

「しらうめ団地落合」(真庭市)と「オリーブ団地牛窓」(瀬戸内市)は「地元の定住促進が期待できることから、それぞれの地元市への売却を今後協議していく」としている。「中庄夢団地」(倉敷市)は好立地で好調に売れ残区画数2で、従来通り個人客に販売していく。売れ残った資産は最終的に岡山県が引き継ぐ方針。

今秋以降県議会に議案提出

年度末解散に向けたスケジュールでは、今秋以降に県議会へ解散議案を提出し議決を経た後、国土交通大臣へ解散認可を申請する予定。逆算すると、「21年度の早期に入札を実施し夏ごろまでには売却にめどを付けたい」(県住宅課)考え。

資産売却でも焦点はやはり吉備高原団地の売れ行きだが、売却は容易ではなさそうだ。ある住宅メーカーは「過疎地という立地が最大の難点で、値下げ後も割高感があったが価格以前の問題。比較的立地の良いグリーンテラス郡は金額次第では入札を考えてもよいが、吉備高原への入札は考えていない」と言い切る。

岡山市立小学校の在籍児童数をみても、過疎地とは逆に都心回帰の動きが鮮明だ。昨年5月の西小(同北区中仙道)は1207人で2年前との比較で10.5%増。大元小(同大元上町)1052人で同7.0%増。岡山中央(弓之町)729人で同4.7%増。中心部と周辺で高い伸びを示している。ここ数年のマンションブームの動向がそうしたニーズを裏付けている。

さらに、住宅業界を不況が直撃、昨年秋以降、県下の住宅着工戸数の減少傾向が続いている。

立地ネックで「価格以前の問題」

 そうした厳しい状況の中で、仮に吉備高原団地の土地を安く取得しても「売り切る自信はない」というわけだ。

 また、「団地の魅力付けのため、県の何らかの政策的な誘導が必要」との声は強かったが、平成14年3月に「吉備高原都市の今後の整備方針」を策定して以降、吉備高原都市の整備は事実上ストップしたまま。「今後も目立った動きはない」(県地域振興課)と言う。逆に、エヌイーシール(株)(吉備中央町)が既存工場の拡張計画の延期を決定。ニューサイエンス館が県施設としては3月末で閉館するなど後退した印象だ。

 半面、プラス材料では県がバックにいる公社が開発した土地ということで、「“行政”の信用力で個人客に安心感を与えると考え、取得に動く業者もいるのでは」との見方もある。

 いずれにせよ、他の団地はともかく吉備高原団地が完売する可能性は低いとみられる。

そうなると、これらの資産を県がどういう形で引き継ぐかも課題となるが、何らかの財政負担は必至の情勢だ。

岡山県では同公社に20年度に計76億5000万円を貸し付けており、21年度も解散まで継続する。

 現時点での資産の額は未公表。16年度の岡山県包括外部監査によると、15年度末での吉備高原団地の簿価は56億9100万円、時価は42億3400万円だが、その後の5年間で売れた区画があるほか、地価も下落し、その分の金額をそれぞれ差し引く必要がある。今後の競争入札の結果いかんだが、資産処理の損失で最悪数10億円の財政負担を迫られそうだ。

 石井正弘知事は2月県議会で「資産処理額が未確定のため現時点で清算の見通しを明らかにできないが、秋ごろには概算を示せると思う。解散に際し貸付金等を適切に処理し公社と一体となって資産売却を進め県の負担が最小限になるよう努力していきたい」と答弁した。

 当の同公社自体の財務内容は脆弱だ。16年度に1億5000万円の当期損失を計上して以来、欠損が続いている。指定管理者として県営住宅(29団地)の管理受託業務での管理収益5億2900万円(19年度)の安定収益があるが、分譲地の値下げに伴い販売地の含み損を処理しているため。自己資本も年々減少、昨年3月末で2億7400万円。同段階で債務超過ではないがかつての約10億円(15年度末)の4分の1にまで減った。値下げによる含み損を剰余金の取り崩しで処理したため。

低価法で資産再評価

さらに、地方住宅供給公社会計基準の変更に伴い、20年度決算から資産評価で低価法を全国的に強制適用することになった。原価法は時価が簿価の50%を下回った物件だけ含み損を処理するが、低価法は含み損すべてを処理する。従来いずれを採用するかは個別の住宅公社の任意で岡山県の公社は原価法だった。そのため、岡山県の公社では低価法採用と競争入札で現在資産を再評価している。

県営住宅の管理受託業務は、21年度から3年間、(財)岡山県建設技術センター(岡山市)とともに指定管理者となったが、同センターにノウハウを提供し、解散後は同センターが単独で引き継ぐ。

全国的に住宅公社の見直し機運が盛り上がり、この3月末で青森、岩手、福島、富山県の公社が第1陣として解散した。もともと未分譲地が少なく財務内容も良く解散まですんなり進んだ。
香川県は数10区画の未分譲地の処理を進め22年度に解散する予定。

茨城県では「26年度までに資産処理にめどをつけて解散する予定」と言う。債務超過に陥り県からの財政支援で運営しながら、資産の処分を急いでいる。20年度に一部団地で売却先を公募したが、最終的に景気低迷で選定には至らなかった。

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