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ロレアルのストーリー(1)

 ロレアルのミッションは下記のように定義されている。(筆者が英文のHPより翻訳したもの)

 「一世紀以上、私たちは私たちのエネルギーと能力をたった一つのビジネスである「美」に注いできた。「美」には深い意味がある。何故なら「美」はすべての人々の個性を表現し、自分自身に対して自信を持たせ、他者と向き合うのに役に立つからである。」

 ロレアルは1907年にウージェンヌ・シュエレールにより設立された。彼は化学者であり、髪の色を自在に染める技術を開発した。ヨーロッパでは長年人の評価は髪の毛の色でなされた時代があった。自由に髪の毛の色を変えられるのは正にマジックのような技術であった。偏見を減少させることからノーベル平和賞を受賞してもよいくらいの技術革新と言える。

 ロレアルの創業はこの「ヘアダイ」であった。ロレアルはこのブランドを「ロレアル・プロフェッショナル」と名付けた。ヘアダイという美容師の専門的知識を必要とするブランド故に展開したチャネルは美容室であった。ロレアルは早い段階からチャネルの特性に合ったブランドを展開することを基本戦略としてきた。ロレアルは世界の非耐久消費財の中の超優良企業であるが、顧客が誰なのか、どこで発売すべきなのか、絶えず顧客中心に経営を進めてきた。ロレアルの成功の秘訣はここにある。

 ロレアルは創業者が持っていたこの研究開発(Research & Development=R&D)を遺伝子の中核に持っている。毎年売り上げの3%前後を研究開発に投資し、その結果としてここ10年ほど毎年500前後のパテントを取得している。一年は365日であり、実働日は200日以下のフランスで500を超えるパテントを取得するためには一日に2~3個のペースでパテントを申請する必要がある。世界中でこれだけの数のパテントを毎年取得している企業は少ない。どちらかというとローテクに近い化粧品業界では稀有と言ってよい。

 英語に”Walk The Talk”という言葉がある。これは「言った通りに歩け」つまり「有言実行」という意味である。会社の経営者が変わるとミッションやビジョンなどが暫し書き換えられるが、ミッションは企業のDNAの中核であり大切にして欲しい。

 ロレアルのR&Dのもう一つの特徴は「美」に奉仕する企業なので、研究開発を「美」に関連するところに集中させていることである。つまり、「皮膚」と「毛髪」と「カラー」の領域である。多くの企業ではともするとR&Dは野放図に薄く広く拡散する傾向があるが、厳しく研究領域を限定し、集中してパテントを取得していることは見習うべきであろう。

 加えて、ロレアルでは最高経営責任者は若い時に抜擢され大体20~30年経営を続ける。このことによりDNAがしっかり守られているとも考えられる。現在のCEOであるジャン-ポール・アゴン氏は創業から第五代目のCEOである。創業されてから110年弱でたった5人しかCEOがいない。一人のCEOが大体20年位経営を担うことになる。上場企業であるが、このような体制を維持することでオーナー企業的な体質も併せ持つことができる。この意味からもロレアルはユニークである。

 ロレアルは前述のロレアル・プロフェッショナル以降、メーキャップやスキンケアなどへの進出を果たす。ロレアル・コスメティックスの発売である。それ以降ロレアルは自社で新しいブランドは一切出さず、全て買収によりブランド王国を築き上げてきた。ランコムは1964年に買収した。ランコムは高級化粧品ブランドであり、既存のブランドではカバーできない上級顧客を対象としている。ロレアルのマーケティングの匠さはこのランコムにファッションの世界の中心であるパリをくっつけたことにある。

 1995年にはアメリカのメーキャップブランドであるメイベリンを買収した。ロレアルはこのメイベリンの本社をテネシー州メンフィスからニューヨークに移し、メイベリンにはニューヨークをブランドにくっつけた。世界的に有名な都市であるパリやニューヨークを上手に取り組むことでブランド価値を大きく高めている。

本誌:2017年夏季特別号 31ページ

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