WEB VISION OKAYAMA

巻頭特集インバウンドは個人客を狙え

環境整備促進へ協議会発足図るレンタカー ホテルは言語対応が急務 即効性ある国際線充実を

  • FIT客が次々に乗り込む空港リムジンバス

 岡山県のインバウンド客が急増している。観光庁の宿泊旅行統計調査によると、昨年の外国人宿泊者数の伸び率は全国2位。岡山空港に同年国際線が就航した香港、台湾からのインバウンドが増加しており、その多くがかつて主流だった団体客ではなく個人客という。レンタカーなど個人客ならではの需要拡大が期待されるほか、誘致にも新たな手法が求められている。様変わりしたインバウンドをいかに取り込むべきなのか取材した。

伸び率全国2位

 観光庁の宿泊旅行統計調査によると2016年(1~12月)の県下外国人宿泊者数(宿泊者数×宿泊日数)は前年比65.3%増の28万1800人で伸び率は香川の同70.3%増に次ぐ全国2位。全国の同5.8%増を大きく上回っている。

 上位を見ると福島、愛媛、島根、青森など地方の躍進が目立つ。インバウンドが東京―大阪間のゴールデンルートから地方へ波及していることを示す結果となった。

 岡山県の場合、数年前から大阪、京都など人気観光地の宿泊施設がひっ迫し、予約が困難になったり宿泊料金が高騰していることから、次善の宿泊先として選ばれる傾向があった。そんな中、瀬戸内国際芸術祭が開かれたのに加え昨年3月の香港航空香港線就航、同年7月のLCCタイガーエア台湾線就航で両地域からの観光客が急増。県がまとめた16年度の外国人旅行者宿泊者数によると台湾が2万744人増の6万53人、香港が2万3154人増の4万133人に上った。

 ただ増加しただけではない。顕著なのが団体旅行から個人手配の海外旅行(FIT)へのシフト。以前岡山空港に国際線が到着すると、貸切バスが並んでいたが、今では多くがJR岡山駅行きの空港リムジンバスに乗り込んでいく。岡山県観光課によると「中国からの観光客が、リピーターとなりFITで訪れていることに加え、もともと旅慣れFIT客が9割を占める香港や台湾からの観光客が増えたため」と言う。

 ただ、伸び率では躍進しているものの宿泊客数自体は全国26位。これから東京オリンピックに向けさらに増加が期待されるとはいえ、新たな戦場となった地方自治体間の競争激化を考えると、FITへの対応によっては取り残される可能性もあると観光業界では警鐘を鳴らす。

対応急ぐレンタカー業界

 FIT客の増加を受け、活気付いているのがレンタカー業界。香港が日本と同じ左側通行で、台湾も簡単な手続きで母国の免許証での運転が可能なことから、需要は今後も高まると分析。平成レンタカー㈱(倉敷市)によると、岡山空港での両地域からの外国人観光客の利用は前年比2.5倍に達しているという。

 レンタカー業界にとって、FIT客が有望なのは、単に数の問題だけではない。岡山県の外国人宿泊客の月別推移を見ると、レンタカーの閑散期となる冬場に増加。利用の平準化が図れるメリットは大きい。この流れを受け(一社)岡山県レンタカー協会(会長・梶谷俊介㈱トヨタレンタリース岡山社長)では、昨年11月に発足した青年部「桃太郎会」(代表幹事・牧智弘平成レンタカー社長)を中心に、インバウンドへの対策を検討。6月から、三井アウトレットパーク倉敷(MOP倉敷)と連携したサービスを開始。中四国9県と兵庫県、各県のレンタカー協会などがキャンペーンを実施し、西日本高速道路㈱(大阪市)などが、域内の高速道路乗り放題(本州四国連絡高速道路を除く)の割引パスを発売し後押しするなど、地域を上げてのレンタカー利用促進の動きも活発になっている。

 しかし、受け入れ態勢は十分とはいかないようだ。各社の言語対応はもちろん、各社がブースを構える岡山空港1階のレンタカー案内窓口はすでにキャパシティーオーバーで、ロビーでの滞留時間が長くなるという問題が発生。空港から車を引き渡す各社営業所への送迎車スペースも完全に不足しているという。さらに利便性を考えれば、引き渡し車両の待機場所を設け、空港ですべての手続きが完結するのがベスト。このため桃太郎会では、岡山空港での受け入れ環境整備とサービス向上、誘致促進のための協議会の発足へ向けた取り組みを推進。同空港での利用状況などのデータを取りまとめるとともに、「関係各社一丸となって県などに働き掛けられる体制を早急に築きたい」(牧代表幹事)という。

ホテルではハブ的役割が上昇

 ホテル業界でも近年の高稼働の一因となっているインバウンドを重視。横ばいを維持する団体旅行客に、FIT客が上積みする形となっており、期待は大きい。

 ただ、観光地の状況を見ると、ミシュラン・グリーンガイド・ジャポンで3つ星の後楽園や2つ星の倉敷美観地区、アジアからの観光客に人気の白桃狩りなどに人気が限られているのが現状。それでも宿泊が多いのは、人気の高い関西、広島をはじめ山陰、四国へのアクセスのよさから、岡山に宿泊し日帰りなどで周辺の観光地を巡るなど旅行の拠点となっていることが一因のようだ。

 ザ・ホテルリマーニ(瀬戸内市)とせとうち児島ホテル(倉敷市)を経営する㈱天満屋ホテルズアンドリゾーツ(瀬戸内市)の専務で海外でのリゾートホテル経営の経験豊富なケネス・ミツツネ氏は、「相手が外国人だからと日本的な魅力に偏った観光振興を図っている状況では、ほかの地方には勝てない」と警鐘を鳴らす。

 2週間など長い時間をかけて日本を巡るケースも多いFIT客が求めているのは、日本的な体験だけでなく「自国の文化に近い環境でくつろげる時間を提供することも選択肢として重要」と指摘。「日本人も海外旅行する際、未体験の連続ではすぐに疲れてしまう。そんな中、日本語が通じるスタッフのいるホテルで、日本食を食べることができればほっとできる」というわけだ。

 今年7月の宿泊の31%が外国人観光客でそのうち9割をFIT客が占める後楽ホテルの山本剛総支配人も同ホテルで周辺地域への旅行の拠点として連泊が多い理由を「英語、中国語、ロシア語、フランス語、スペイン語に対応できるスタッフを配置し、『今日はどちらまで行かれたんですか』といったコミュニケーションや問題解決の手伝いなど日本人と変わらないおもてなしを提供できる点が大きい」と話す。FIT客はこういったホテルでのおもてなし体験を、トリップアドバイザーなど海外の旅行予約サイトに評価として書き込む傾向にあり、これがネットによる口コミとなって利用が増加しているという。

 しかし、県下ホテルの外国語対応は、人手不足の中なかなか進まないのが現状。これを受け岡山県は7月1日に電話での通訳サービスなどを提供する「多言語コールセンターサービス」をスタートしているが、あくまで最低限の対応を図るもの。ネットに評価を書き込むような感動体験を提供するためには、スタッフの多言語対応が急務となっている。

観光業界が求める国際線充実

 誘客で重要な役割を果たすプロモーションでは、自治体の役割も大きい。果物の持ち込み制限がほぼない香港では白桃をPR、ネットでの情報発信が盛んな韓国では現地ブロガーを起用、タイでは人気番組「すごいジャパン」で9月にも岡山が紹介される予定など、各国に合わせて実施。さらに台湾、韓国、中国、タイに加え現地PRデスクを新設した香港では、委託先を従来の旅行会社にパイプを持つ事業者でなく、メディアに強い事業者に委託。さらに今年度からコンテンツの作り込みを現地スタッフに任せるなど、「届く」プロモーションに転換している。

 しかし、観光関連業者が総じて求めているのがLCCなど岡山空港の国際線充実。昨年外国人宿泊者数の伸び率で全国トップとなり、今年昨年を上回る外国人観光客が訪れている香川県の躍進は高松空港にあると言われているだけに、「わが県も」という思いが強い。

 両空港とも国際線は「主要4路線」と言われる香港、台北、上海、ソウルだが、高松空港は台北を除く3路線がLCC(岡山は台北線のみ)で訪日客の多い香港が週4往復(岡山2往復)、台北6往復(同4往復)と差は歴然。

 岡山県では国の訪日誘客支援制度も活用し、開設から3年の範囲で着陸料を無料にするなどようやく「他県並みの支援を実現」(県航空企画推進課)したものの、各都道府県が目的地の空港の発着枠を奪い合う厳しい状況。7月20日にはソウル線の発着時間帯を日本での滞在時間を長くするため変更しているが、観光業界では、JR岡山駅から高松空港への無料直行バスを運行する香川のようなさらなる支援を求める声が強い。「予算に限りがあり、難しい」(同課)とはいえ、思い切った国際線誘致が求められている。

本誌:2017年夏季特別号 4ページ

PAGETOP