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インタビュー・対談トップ対談~急成長アパレル&地場金融機関

成長の秘密と企業戦略を探る ~社長の信念と個性が企業力を高める

  • (左から)江見氏、石川氏、泉氏

出席
●(株)アフリカタロウ社長 江見 いづみ氏
●(株)クロスカンパニー社長 石川 康晴氏
●(株)中国銀行専務 泉 史博氏

 日本のアパレル業界の中で今、最も注目されている急成長企業と言えば、高級レディスファッションの(株)クロスカンパニー(石川康晴社長)と、低価格・個性派路線追求の(株)アフリカタロウ(江見いづみ社長)だろう。「志は高く、何時かは世界戦略を。高級ホテル並みの接客技術に加え、心の教育を徹底する」と石川氏。「世界中探してもどこにもない会社を目指す。毎日365日がチャンス」と江見氏。そして、伸びんとする地場企業を育てる立場が(株)中国銀行。同行、泉史博専務は「当行もリスクを恐れぬ銀行になった。どんな相談にも、グローバルな視野でサポートし苦労を共有していく覚悟」ときっぱり。3氏に夢と意気込みを聞いた。
(司会:本誌編集長 猪木正実)

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***「志は高く、全国へ、世界へ(石川)」***
***「自分にしか出来ないことを(江見)」***
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◇[猪木] アパレル業界で急成長中の両社ですが、創業時、あるいは1号店出店当時の思いや夢、目標を振り返っていただきたいと思います。

●[石川] 私は23歳で独立し、わずか4坪の店からスタートしました。仕入れしようにも国内では相手にされず、やむなく欧米の展示会などで買い付けた商品を売っていましたが、その頃から「将来はSPA(製造小売)をやる」と決めていました。プライベートブランドを5年以内に立ち上げ全国展開したいと。そしていつか世界戦略をと。志は高い方がいいと思って…。

 今36歳ですが、20数年後は世界で売れているブランドを持つ。そう思い描いて、今は「身の丈」に合った中・長期の目標に取り組んでいるところです。

●[江見] 私は、当初は経営とか戦略といった感覚すら無かった(笑)。もともとフリーマーケットで週に1回、販売していたのが始まりで、初めてのお店を持った時は、「毎日365日チャンスができた」と感激しました。

 その頃もアフリカに行ったり来たり。いわゆる「自分探し」の最中でした。アフリカの人たちからもらったものを言葉にすると、「ハッピー」であったり「おおらかさ」「明るさ」「フレンドリー」「素直」といったもの。

 店を構える時は、まず、私にしか出来ないことをやろうと。それで、アフリカで学んだハッピーをお客様に伝えて、お客様と共に人生をエンジョイしたい…。それが店づくりのコンセプトになりました。

◇[猪木] 地場銀行のトップとして、両社の成長ぶりをどう見られますか。

● [泉] 経済成長率というものは、全世界的にみると年5%、日本では2%がいいところ。ところがこちらの2社は「倍々ゲーム」で成長されている。両社に共通しているのは、失敗を恐れずに進んでいることだと感じます。 

 当行も同様です。かつてのイメージと正反対、つまりリスクを取る銀行になった。当行では新たに起業したいという案件を年30件位お世話しています。そういうお付き合いの中、成長もあれば倒産もあるのが当然。そのリスクを承知しながら、銀行として企業を応援していく体制を整えてきました。

 今という時代は失敗を恐れてはNOなんです。こちらの2社は、それを実践し、成功に導かれたよい例でしょう。

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***「流行は時代のニーズ、観察を怠らない(江見)」***
***「リスクヘッジとして全方位の客層に対応(石川)」***
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◇[猪木] 両社はそれぞれ、個性を強く打ち出しています。クロスカンパニーは、新たにオープンした「トピックラックス」も含め、高級あるいは上質という印象が強い。

●[石川] 「トピックラックス」は、いわゆる団塊ジュニア世代へ向けて発信している店舗です。この世代は品質と価格に敏感。高いもの=良い商品とは考えていません。キーワードは「トレンド、値ごろ感、高品質」。年齢は「アラウンド30」ですが、意識は25歳という意味の「マインド25」。そんな層をターゲットにしたセレクトショップです。

 ファッション業界はまさに「遊牧民族」。じっとしていると冬が来る。この商品で大丈夫、このテイストで大丈夫と決め付けてはいけない。ですから弊社では、マーケットを最も把握しているマーチャンダイザーの意見を優先して取り入れ、経営判断をしています。アパレルだけど流通業と捉え、マーケット、トレンドに敏感に反応しています。

 また、ニーズは多様化していて高級志向ばかりではない。ロープライスやミディアム的な客層も多いので、リスクヘッジの意味で全方位に対応するため、10のブランドを展開しています。

◇[猪木] アフリカタロウは、大衆路線に徹していらっしゃるようですね。

●[江見] その通りですが、意図したことではなく自然な成り行きなんです。
 私は、自分自身が店頭で販売して、いろんなお客様と出会う体験をさせていただきました。若い女の子が、一生懸命お金を貯めて買いに来てくれる。高いものは欲しいけど買えない。そんな子が、リーズナブルでもかわいいと認めてくれたら、喜んで買ってくれる。

 わが社の場合は、流行をおさえつつ、リーズナブルであることが基本です。ニーズに合わせていったら自然とそういうスタイルになってきました。流行は時代のニーズです。人の気持ちとか、世の中の動向とか、常に考えていたいと思います。

◇[猪木] トレンドや流行を掴むために、どんな努力をされていますか。

●[江見] セミナーに参加したり、パリコレなど世界の流れをよく観察することでしょうか。そして何故こういう状況なのか、例えば今年は「コクーン」と呼ばれる繭のフォルムをイメージしたデザインが流行っていますが、それを自分なりに解釈したり分析したり。そして、自分の客層に反映すると、どんなアイテムになるか、落とし込んでいくのです。

●[石川] 弊社は企画担当が約30人おり、パリコレ、ミラノ、ニューヨークには必ず行かせています。そして小学館や集英社などの雑誌から発信されるトレンド情報を販促担当スタッフがリサーチします。また、デベロッパーが改装を行う時は、改装後どんなものを提供したがっているか、情報を分析します。
そういうさまざまな要因の共通項を見出して、独自性をプラスしていくのです。

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***「徹底して独自性を出すこと(泉)」***
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◇[猪木] 個性は成長の前提だと思います。泉さんはどう考えておられますか。

● [泉] 個性的というと、ある西麻布の縫製会社を思い出します。マーケティングしてすぐ縫い上げる。時間的なロス、機会ロスを極力少なくする狙いです。ニーズに一番近いところで創る。そうやって徹底した独自性を出していた。

 我々団塊世代は、価値観を共有しないと落ち着かない。VANの服を着て、ケンとメリーのスカイラインやムスタングに乗ってといった具合で(笑)。

 つまり、かつては画一的ファクターが重要だったが、今は「これならできる」という独自性をもつことが大切になってきた。ターゲットは狭く、深く。それが成功の秘訣でしょう。

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***「無意識を意識に変えていく(江見)」***
***「高レベルのホスピタリティを追求(石川)」
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◇[猪木] 人材教育にも、それぞれ熱心に取り組んでいらっしゃいますね。

●[石川] 創業時、アパレルの先輩方からアドバイスをいただいたところ、10人が10人とも「人はコスト」とおっしゃいました。接客スタッフをアルバイトやパートで雇用し、人件費を調整できるシステムにすることが必須だと。

 そういうスタッフは待遇が良くないわけですから、アパレルは就職でも人気が悪いし、人材が育たないというのがこれまでだったと思います。

 しかし私は、全員正社員雇用を基本とし、その上で1人ひとりの労働生産性を上げようと考えました。

 生産性を上げるには、製造業で設備投資を行うのと同様に、人間的投資、つまり教育が必要となります。押し付けではなく、満足して買っていただけるように…。

 弊社の企業理念は「お客様第一主義」です。将来、アパレル業界全体が、一流ホテルよりホスピタリティが優れていると言われるようになりたいと、それを目指して努力しています。

 具体的には、入社後は4段階のステップを経て新人教育を行います。また、年7回の接客塾には全員参加、半期に2回はチーフ研修。いずれも教育とテストを組合せ、その結果を踏まえて権限、昇格・待遇を連動させています。
 
 さらに女性支援策に力を注いでいまして、ここに関しても、アパレル業界の中で、当社がリーディングカンパニーとなっていくつもりです。

● [江見] わが社では、入社時に3泊4日の合宿研修を行います。ホスピタリティとは何か、といった内容から、やはりカタチから入らないと理解できないこともありますから、そういう接客の訓練。それらを通じて、心や販売員としての誇りを教えていく。

 何より合宿の1番の良さは、心が1つになり、絆、つながり、一体感、仲間意識が生まれること。会社の掲げる理念に向かって1つになれる。

 また、毎週「お掃除研修」を1時間行っています。掃除には、仕事のやり方や人格が出てくるものなんです。無意識についやってしまうことがある。良いことも良くないことも、無意識を意識化することが大切で、仲間同士、気付いたことを教え合い自覚してもらう。立場は関係なく、私自身もスタッフから注意してもらうこともあります。

 そういう教育はマニュアルではできません。日々実践の中で、繰り返していくことが大切ですね。

●[泉] 中銀は研修の塊のような企業でして(笑)。ありとあらゆる研修や教育をやっていますが、入社して半年ぐらいで「フレッシュアップ研修」というのがある。少し仕事に慣れて気分が緩んだところで、仲間と過ごすと団結心も生まれ、「やってやろうじゃないか」という気分になれる。

 先日、60数人の学生と質疑応答する機会があったのですが、若い人にどういう話が利くかと言うと、仕事上の知識とか技術とかではなく、結局「人生論」じゃないかと思う。家や学校で教えてくれないことを求めているんです。社長やトップの生の声を、5分でいいから伝える。これが一番残る。

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***「企業は教育から逃げてはならない(石川)」***
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● [石川] 同感です。家庭や学校で教えないことは、企業が教えなくてはならないし、企業がそれを嫌がったり逃げたりしてはいけない。

 入社式での私の訓示の中で、どんな話が印象に残っているかと社員に尋ねたら、電車の話だと言う。満員電車に老人が乗ってきた。自分は座席に座っているが仕事で疲れ切っている。どうするか。私は、「クロスの社員になった以上、席を譲ってください」と言ったんです。

 また弊社では、社内ロールプレイングコンテストを実施して、その上位5名へのご褒美として、ミラノやパリの富裕層御用達のホテル、セレクトショップ、レストランなどを巡り、セレブの生活を体験させています。今後は富裕層と同じレベルで物を見ることができるスタッフも必要ですから、将来の布石となる人材の育成と考えています。

● [泉] 当行でも行外研修を行いますが、通じるところがありますね。技術や知識は組織内で向上させることができるが、能力、技術にプラスして、自分の会社を外から見る目が持てる。若い時に社外の価値観に触れるという体験は、非常に重要だと思いますね。

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***「中国進出-(江見)」「年商500億-(石川)」***
***「成長にはグローバルな視点・支援が必要(泉)」***
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[猪木] これからの目標、将来構想についてお聞かせください。

●[江見] 「世界中探しても、どこにも無い会社」-というのが、私の一番の目標です。そこを目指して、社内内部システム、制度、人、商品、広報…あらゆるコトを高度化・高次元化し、基盤をしっかりさせてから次の目標へと進みたいと思います。

 次の目標というのは、わかりやすく言うと「メジャーな会社」になること(笑)。ファッション業界で勝負するからには、東京にデザイン事務所を開き、雑誌などにも露出していきたい。さらに何年か先になると思いますが、中国にも進出したいと考えています。

 既に製造においては、中国の人たちと10年来の家族的な付き合いができるようになり、生産ラインも安定しています。今後もその比率は上がっていくと思います。

●[石川] 先日発表した長期計画では、「2017年に500億」を新たな目標として掲げています。そこに向かって新しいブランドを開発し、メンズ市場へも参入したい。

 その過程で、商品の品質、販売力共に日本一を実現したい。精神論で終わらないよう、出店先のデベロッパーにアンケートを取り、いずれ全館1位をいただけるよう目指しています。

 また商品品質については、不良品比率を1つの目安としています。今業界全体で平均1%ぐらい、当社も同じぐらいですが、これを0.1%以下とするのが目標です。

●[泉] 両社とも、非常に経営を冷静に見られていると感心します。当行としては、皆さんの成長の途上でお手伝いできることをやっていきたい。

 銀行として、地場企業を育てることは1つの使命です。お金の面の支援は当たり前のことですが、成長していく上での、本当のニーズは何か…。株式上場やM&Aであったり、世界進出であったり、今後両社とも直面する課題であることに間違いないと思います。

 どんなご相談を受けても、グローバルな視野でサポートし、苦労を共有していく覚悟で臨む。そのために、外部に対してオープンで、行内の情報伝達や意思決定がスピーディーな体質へと、改革を進めてきたのです。

 両社のような岡山発信の元気な企業を支援し、地域に貢献できればと願っています。

◇[猪木] 両社のますますの発展をお祈りしたいと存じます。本日はありがとうございました。


*** <SHOP紹介> アフリカタロウ ガマガエル ((株)アフリカタロウ)***************

>所在地:岡山市本町6-30 岡山オーパB1F
>TEL: 086-231-2101
>岡山を代表するファッションスポット「オーパ」内にあり、中・高校生から20代のおしゃれに敏感な女の子たちが集まる人気ショップ。1900~3900円とリーズナブルな価格帯と、“旬”な商品ラインアップ、そして友達感覚で話ができる元気で明るいスタッフが武器。「お客様1人ひとりに似合うコーディネート」をアドバイスし、おしゃれの楽しさを発信している。


■(株)アフリカタロウ DATA■
>本社:岡山市田中105-102(電話086-246-8139)
>代表:江見いづみ
>設立:平成9年10月
>資本金:500万円
>年間売上高:26億5000万円(平成18年実績)
>経常利益:1億9200万円(平成18年実績)
>店舗数:中四国地区中心に青森から宮崎まで48店
>従業員数:297人
>事業概要:カジュアル衣料品の製造販売。トレンドをおさえた低価格路線を追求し、独自の店作りと品揃え、元気な販売員を特色とする。


*** <SHOP紹介> トピックラックス ((株)クロスカンパニー)***************

>岡山市駅元町1-1 サンステーションテラス岡山北館1F
>TEL.086-227-2882
>8月23日、新名所「さんすて北館」にオープン。「モード&ワーク」をコンセプトとするセレクトショップで、トレンド志向の洗練されたウェアや雑貨を提供。岡山が1号店、岡山初上陸ブランドも多数ラインアップと開店前から話題集中。27歳前後の女性を中心に多大な支持を受けている。岡山に引き続き、横浜、大阪天王寺、池袋PARCOに展開。

■(株)クロスカンパニー DATA■
>本社:岡山市幸町2-8(電話086-235-8216)
>代表:石川康晴
>設立:平成6年6月
>資本金:1億円
>年間売上高:163億円(平成19年度見込)
>経常利益:24億4500万円(平成19年度見込)
>店舗数:全国に130店
>従業員数:593人
>事業概要:アパレル衣料品の企画・製造・小売販売及びショップ運営。高級志向。徹底した接客教育が特色。

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