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巻頭特集「倉敷チボリ公園」が無くなる!

ダメージ大きい「観光くらしき」 「まちづくり」も混迷

  • 倉敷チボリ公園とJR倉敷駅周辺

 「倉敷チボリ公園」(倉敷市)が閉園に向けて動き出した。岡山県の“丸投げ”を倉敷市側として、到底受け入れ難いと思えるからだ。しかし、いざ閉園になったと考えてみると、観光面、地域開発面、あらゆる面でダメージはあまりにも大きい。倉敷市の中心市街地にポッカリと空いた空間をどうする…。

 滞在型観光は後退する
 修学旅行の受け皿も消失

 「倉敷チボリ公園を県主体から倉敷市主体で市民公園として運営してほしい」―。岡山県の石井正弘知事は、9月5日、倉敷市を訪れ古市健三市長にこう切り出した。しかし、この県のチボリ“丸投げ”方針に地元倉敷市は市議会も含めて反発を強めるばかり。すんなりと市民公園化する見通しはない。結果として最悪の「閉園」という事態も想定されることとなった。

 そうなると、まず影響が出そうなのが観光面だ。

 (社)倉敷観光コンベンションビューロー(会長・吉本豪之(株)橘香堂社長)によると、倉敷市内の宿泊観光客数(18年)は、前年比2%増の104万7553人。美観地区周辺の施設に限定すれば、2ケタ近い伸びを示している。

 小野亀専務理事は「日帰り客が減る半面、宿泊を含めたツアー利用が増えている」と話し、2時間の通過型と言われた倉敷観光が、徐々に滞在型に移行しているという。

 それには、当然チボリ公園の存在が大きい。チボリの夜間のイルミネーションは、もはや観光くらしきの重要な売り物だ。「チボリ公園の夜景が見えるというのがセールスポイントの1つ」と乾研二倉敷ステーション開発(株)常務。チボリ公園は、ホテル倉敷をはじめ、駅周辺ホテルの宿泊需要を掘り起こした。

 美観地区とチボリ公園の2大観光拠点はそれぞれ単独ではなく、相乗効果によってバリエーションを広げ、滞在型への移行に寄与している。

 また、幅広い客層の観光客の受け入れという点でも、チボリ公園は寄与している。美観地区とチボリ公園では性格が異なり客層も異なる。美観地区は年配者が多く、チボリ公園は家族連れが多い。美観地区だけでは誘客できなかった異なる客層を開拓している。

 「美観地区とチボリ公園をセットにしてこそ、家族連れから年配者まで幅広い客層に来倉してもらえる」(小野専務理事)わけだ。

 その中で、チボリ公園が閉園すれば、倉敷の滞在型観光はどうなるか。

 「倉敷全体の宿泊客という点では閉園しても影響は軽微なのでは」という見方がある一方、依然それなりの集客規模があるだけにやはり影響を懸念、観光くらしきが再び通過型に後退することを危惧する声もある。

 また、チボリ公園は現在、修学旅行の受け皿ともなっている。「修学旅行は高知、奈良、山陰などからが多い。小学校が大半。件数、人数は減少傾向だったが、再び営業に注力し18年度は前年度を上回った」(チボリ・ジャパン)と言う。

 呉ポートピアランド(広島県呉市)や宝塚ファミリーランド(兵庫県宝塚市)などの相次ぐ閉園に伴い、今やチボリ公園は近畿・中国地方有数の遊園地として貴重な存在だ。閉園となれば受け皿がなくなり、観光くらしきそのものが修学旅行のコースから外される可能性も出てくる。

 修学旅行は現在の直接の観光客誘致というだけでなく、成人した後に“思い出の地”としてリピーターになる。そのために、13年に官民で倉敷市修学旅行誘致委員会を組織し誘致に力を入れてきた。チボリ公園が消えれば、長期的に見ても観光面では大きなマイナスだ。

 そのほか、チボリ公園にはコンベンション機能がある。アンデルセンホールは「宴会場としてフロア面積が市内最大級なので大型の懇親会を多数受け入れている」(チボリ・ジャパン)。カルケバレン劇場(450人収容)も発表会、式典などで利用。両施設を式典と懇親会のセットで使うケースもある。

 チボリ公園がなくなると、倉敷のコンベンション機能はどうなるか。市内全体のキャパは十分あり問題なさそうだが、駅に近いという立地、テーマパークゆえの独自の雰囲気の空間での会議という異色の施設がなくなる分、“厚み”がなくなる。

 駅付近のまちづくりに影響
 将来の開発構想に影


 公園の閉園は、倉敷市中心部のまちづくりにも微妙に影響を与えそうだ。これらはチボリ公園の存在を前提にしている事業も多く、倉敷市の各担当部署は「どのような形でどれだけ影響があるのか読めない」と口を揃え困惑の表情を浮かべる。

 倉敷市は、平成5年3月に「倉敷地区都市拠点総合整備事業総合整備計画」を策定した。チボリ公園の立地が決まったのを機に、その受け皿整備をしようというもの。特にJR倉敷駅北の開発を進め、南北格差の解消を狙った。この中に鉄道高架化、区画整理事業などが盛り込まれ、現在の駅周辺のまちづくりのベースになっている。

 JR山陽本線等倉敷駅付近連続立体交差事業(鉄道高架化)は、7年度に旧建設省(現国土交通省)が新規調査個所に、10年度に新規着工準備個所に採択した。

 鉄道高架化は地元の長年の悲願で倉敷市も意欲を見せるが、目立った進展はない。やはり膨大な事業費(約600億円)と工事中の仮線確保のための地権者との交渉の膨大な労力がネック。

 また、倉敷市が14年度から施行している周辺の第二土地区画整理事業(石見町、日吉町など)が難航する中、事業主体の岡山県と地元の同市との間で温度差もある。

 岡山県は「投資に見合った効果となると、周辺の区画整理と一体でやるべき」(都市計画課)と主張。倉敷市は、大都市部での区画整理と切り離して都市計画決定、国の事業認可となった事例を根拠に「区画整理をすべて完了しなくても県の都市計画決定は可能なのでは」(鉄道高架推進室)とする。

 県事業評価監視委員会(委員長・鳥越良光岡山商科大学大学院教授)が7月に事業継続を「妥当」としながらも「事業着手時期を明確に」と付帯意見を付けたのを機に、両者で8月3日に協議したが、主張は平行線だった。

 こうして遅々として進まない中、仮に閉園となるとどうなるか。「チボリ公園の観光客の車で踏切が混雑していたわけではない。閉園しても通勤などで周辺の踏切を利用する交通量に変化はなさそう」と担当者。

 交通混雑解消という目的は残るが、駅北の集客の核の消失となると南北一体の発展という事業の理由付けはトーンダウンせざるを得ない。

 駅南側で進められている阿知3丁目東地区市街地再開発事業は、4月11日、14年の歳月を経てようやく、市の都市計画決定となった。1.5haの対象地に分譲マンション、高齢者向けマンションなどを核に整備する方針。

 さらに、現在の観光くらしきの欠点を補うべく、土産品を販売する観光市場や団体客用の食堂を併設する案も浮上しているが、同準備組合では「もしチボリ公園閉園となると、観光市場構想にも影響しそう」と懸念する。

 倉敷市では、19年度から、中心市街地活性化法の新法での基本計画策定に向け準備開始。「現在調査研究をしている」(まちづくり推進課)段階。13年11月に旧法下で策定された基本計画は対象地が駅南側のみだったが、新法では対象地は広がる可能性もある。その時に、仮にチボリ公園閉園となると、駅北は含まれるのかどうか。

 三越跡への(株)天満屋(岡山市)誘致では、床の天満屋への転貸に未同意の地権者が「残り数人」(東ビル対策会議)にまで絞られ、いま一歩だ。

 天満屋は現在の倉敷店の老朽化が激しく、三越跡への入居に意欲的。そのため、誘致関係者は「観光と商業は別次元の問題。仮にチボリ公園閉園でも三越跡への出店がなくなることはないだろう」とみている。

 既に事業計画決定している第二土地区画整理事業、都市計画決定している倉敷駅前東土地区画整理事業、さらに三越跡への天満屋出店など、現段階で手堅いとみられている事業も、実際にチボリ公園がなくなるとどうなるか、見通しは全く立たない。

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