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連載記事山田響子の魅力を引き出すコミュニケーション術

人に分かるように言語化する

 「言葉にできるは武器になる」そんな本がベストセラーとなりました。この本のタイトルを書店で見かけた時、まさにその通り!と思わず心の中で叫びたくなりました。「それと同じようなことをわたしも考えていました」「それはわたしが前からやっていたことと同じです」とあとでいくら言ったとしても、はじめに明確に言語化できた人が勝ちなのです。

 「言葉にできないのではない、言葉にできるほど考えられていないのである」とこの本の著者は語っています。私たちは1日に何万回も「考えて」いるのに「感じて」いるのにうまく言葉にできないのはなぜでしょうか?うまく言葉にできない人は、うまく言葉にすることを諦めている、と感じることが多々あります。わたしは「伝え方のコンサルタント」として、起業家の方々の告知や商品設計のお手伝いをさせていただいています。そんな時、売り手はその製品やサービスの魅力を一番知っているはずなのに、うまく表現できないというお悩みを持っているのです。いえ、厳密には魅力を痛いほど分かっているのですが、それを人に分かるように伝えることができないのです。

 言語化には練習が必要なのです、練習中は失敗もしますし、うまく言葉にできないもどかしさもあります。一回でぴったりくる言葉を見つけ出せたらいいのですが、そんなことは稀で、大抵は「言いたいことをうまく言えない」という状況に陥ります。そんな時「一度来てもらえば分かる」「体験さえしてもらったら良さが分かる」と言いたくなりますが、それは言葉にすることを放棄している状態です。世の中には「無料」や「格安で」のオファーにあふれています。その中からも取捨選択をしています。たとえ無料であったとしても「時間」や「手間」が奪われるのであれば、魅力が伝わらなければ体験してみたいとも思わないのです。

 うまく言えないという状態になった時、難しい、分からない、と考えることを放棄しないでほしいのです。どう表現すれば伝わるんだろう、と頭を抱えることこそが、自分のその製品やサービスへの愛着となり、お客様の未来へのコミットメントとなるからです。

 「お客様の未来」と言いましたが、全ての製品やサービスはお客様にとってちょっとうれしい未来を作り出すためにあるのではないでしょうか?困ったことを解決したり、痛みをとったり。または、よりリラックスしたり、気分が高揚したり。私達の製品やサービスの魅力をより良く伝えたいと思った時には、まずはお客様が手にできるちょっとうれしい未来ってなんだろう?と考えてみてほしいのです。

 売り手にとって、「ここが差別化のポイントだ」「ここが特徴だ」と熱い思い入れを持っていることでも、お客様になる方々が、それが私にどう関係していて、それが私にうれしい未来をくれるものなのかが伝わらなければ、「へえ、それはいいですね」で終わってしまい、決して「欲しい」「見てみたい」のスイッチを押すことはできません。だから私たちは、お客様の関心に関心を寄せて、私たちがお客様に提供できる、ちょっとうれしい未来は何かということを想像力豊かに考えてみるところから始まるのだと思います。

 その際、やはり、うまく表現できないという壁に当たることもあると思います。その時には、違うなと思いながらでも数出してみることが大切です。コピーライターは何百もの案をとにかく出して、その中から光るものを選び出していくそうです。言葉のプロであるコピーライターでもそうなのですから。「こうかな」「やっぱり違うな」「こうかな」ととにかく紙に書いたり言葉にしたりして出すのです。

 少し表現が適切ではないかもしれませんが、「出しもしないで、一人でうんうん唸っているのは言葉の便秘と同じだ」と、とあるコピーライターの方の言葉が私にはささりました。まずは、違うかもしれないなと思いながらでもどんどん出してみること、人の反応を聞いてみること、そうすれば、これだと思える表現が見つかってくるのではないでしょうか?

 参考文献 「言葉にできる」は武器になる。梅田 悟司著 出版社 : 日本経済新聞出版
書くのがしんどい 竹村 俊助著 PHP研究所

本誌:2020年12月7・14日号 25ページ

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