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岡山にアルザスパンの店がオープン

 最近、岡山市門田屋敷にエックさんというフランス人が故郷のアルザス地方のパンを製造販売する店をオープンさせた、という新聞記事を読みました。岡山ではライ麦粉を使った本格的な堅いパンがなかなか手に入らないので、岡山駅からはちょっと距離があるのですがチンチン電車に乗って出かけてみました。

 門田屋敷の交差点角にあるツタのからまる小さなビルの1階にその店「ベック・アルザスパン」はありました。本当に小さな店で先客が一人でもいると後からきた人は店の外で待つしかありません。

 ドアを開けて「ボンジュール、ムッシュー!」と声をかけたらエックさんは顔に粉をつけたまま笑顔で応対してくれました。野生の酵母菌を培養した発酵種を使ったパンはもちもちした食感と酸味が特徴とか。カンパーニュ、ライ麦パン、バゲットなどいろいろ買ってみました。小麦粉はフランスから輸入したものを使用しているそうです。

 次のお客さんが来るまでのあいだちょっと四方山話をしました。フランス人はとっつきにくい人が割合多く「木で鼻をくくる」とはこのこと、と思わせる人によく出会いますが、エックさんはほんとうに人なつこい人でいろいろご自身のことも語ってきかせてくれました。

 来日して以来、関西を中心にあちこちの店で働いた経験もあるそうですが岡山が気に入ってここに店を開いたとのことです。私のこともいろいろ聞いてくれました。大阪で働いていたが親の介護のために岡山に帰ってきたこと、卒業した中学校が門田にあってこの辺りにくるのは久しぶりだけれど懐かしいなど、たわいもない話をしているうちに次のお客さんがきて店を後にしました。

 エックさんのパンは食べ応えがありました。バゲットは昔アルジェリアに滞在していたころ食べていたような素朴な味のパンでした。スーパーの大手メーカーのフランスパンは不味すぎ、デパートのフランスパンは美味しすぎます。それに対しエックさんのバゲットはドイツとフランスの間にあって苦難の歴史を繰り返したアルザスのつらい歴史を少し感じさせる滋味あふれるものでした。

 忘れかけの私のフランス語では聞き取れなかったこともありましたが、また一人、古里岡山でいい出会いがあったとうれしくなりました。

本誌:2018年2.19号 14ページ

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