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巻頭特集倉敷市悲願の鉄道高架化実現への一歩!?

「前提」の区画整理前進へ 倉敷市が仮換地指定

  • JR伯備線と沿道の仮線用地

 倉敷市悲願のJR倉敷駅周辺の連続立体交差事業(鉄道高架化)に、進展の兆しが出てきた。同事業の前提とされる周辺の区画整理を、倉敷市が一気に進めたため。「駅南北の回遊性で中心部の活性化を」と、トーンダウンしていた地元の期待も再燃しつつある。高架化に慎重な岡山県に対し、倉敷市はこれを機に強力にアピールし攻勢をかける。

次のハードルは「費用対効果」


全地権者に仮換地指定実施
高架化の条件徐々にクリア

 倉敷市は、1月11日、倉敷駅北西の区画整理対象地の日吉町で、一部強硬な反対派を残しながらも地権者に再配置先を指定する「仮換地指定」に踏み切った。2016年11月に先行し行っていた石見町と合わせ、これで対象地全域での指定となる。仮換地指定により市は今後補償契約の締結や宅地造成工事などができるようになる。工事に必要な仮線の用地も確保できる。

 岡山県は以前から「高架化は周辺の区画整理と一体的に進めることが必要」と主張。今まで区画整理が進展していないことを理由に高架化に対し難色を示し、倉敷市との議論は平行線のまま、こう着状態が長く続いていた。それが仮換地指定までこぎつけたことで、「事業の進ちょくを県に対し大いにアピールできる」(倉敷駅周辺開発事務所)と自信を強めている。

 ここにきて区画整理が進展したのは、5割に満たなかった日吉町の地権者の同意率がこの1年で8割程度に急上昇したため。先行させた石見町で道路工事などが進み事業の前進を印象付け、日吉町の地権者も前向きになったためだ。

商業施設で交通渋滞深刻化
マイカー客回遊性に支障も

 背景には、高架化事業について08年の市長就任から一貫して推進を訴えてきた伊東香織倉敷市長の並々ならぬ思いがある。昨年12月市議会の所信表明で「必要性はますます高まっており、早期の事業化を」と県に強力に働きかけ関連事業を積極的に進める方針を改めて強調した。実際伊東氏は、昨年8月に伊原木隆太知事に直接要望。さらに県議会土木委員会や地元選出の議員連盟が県に推進の要望書を提出するなど、県議らの後押しもあり、この半年間で県への攻勢を強めている。

 高架化事業はもともと鉄道で分断された駅周辺の交通混雑解消、駅南北の一体的なまちづくりを目指す目的で始まり、1998年度には国の「新規着工準備個所」として採択された。それから20年間に大きな進展はなく、その間渋滞などの問題は深刻さを増していた。

 倉敷駅北ではアリオ倉敷、三井アウトレットパーク倉敷が開業し年間約1000万人を集客。駅南の倉敷美観地区も年間約300万人の観光客が訪れているが、鉄道で分断され両者間の相乗効果が十分でなく、間にある商店街がにぎわいから取り残されている。

 さらに、交通渋滞でマイカー客の南北間の移動に難点があり、駅北施設への来店客を南に誘導しようにも難しい。駅東側にある“開かずの踏切”の寿町踏切の遮断時間が長く、周辺の交通渋滞が深刻なため。同踏切の自動車の一日踏切交通遮断量は1994年時約4万台だったが、2011年は2倍の約8万台に上昇した。1日当たりの交通量に遮断時間を乗じたもので、国の基準でボトルネック踏切とされる5万台をはるかに超える。さらに踏切近くでは現在分譲マンション2棟(計約110戸)が建設中で、今後定住人口が増え交通混雑に拍車を掛けるのは確実だ。

 また、最近南海トラフ巨大地震への対策が求められる中で、南北分断が防災上でも問題視されるようになってきた。駅周辺の主要な避難場所は倉敷みらい公園だが、線路に沿って約2.5㎞にフェンスが設置され、駅南側の住民が同公園へ迅速に避難できない。また、救急活動や緊急物資輸送のための緊急輸送道路が駅周辺で南北につながっていないため、駅南から同公園に緊急車両が向かう場合、大きくう回しなければならない状況だ。

 倉敷商店街振興連盟の野嶋雅弘会長は「こうした状況を抜本的に解決するには高架化しかない」と強調。長年目立った動きがなく地元にも半ばあきらめムードが漂っていたが、区画整理の進展や市などの積極的な要望に期待が再燃しつつある。

事業化に慎重な県に危機感
市費用対効果を独自に算出

 また、市を突き動かしているのは、岡山県の慎重なスタンスに対する危機感も背景にあるよう。県が13年1月に算出した費用対効果の数値は0.85で1を割り高架化の効果は薄いとする。そこで課題となるのは、県を納得させるだけの費用対効果の数値を示せるかどうか。倉敷市は昨年8月に市民アンケートで渋滞のいらいら感解消などの効果を盛り込み独自に1.18と算出し高架化の効果を強調した。県はこれに対し「信頼性、有効性の観点から課題がある」と一蹴し攻防が続いている。現在は岡山県が1年前に新たに提示した高架化区間短縮などコスト縮減3案の効果額を試算中で、2月定例県議会までにまとめる。

 県が事業化の可否は、区画整理の進ちょく状況なども加味し総合的に判断するようだが、ベースになるのは費用対効果の数値とみられる。区画整理の進展は高架化実現に向け大きな前進だが、まだまだハードルは高い。


倉敷駅周辺第二土地区画整理事業

 JR倉敷駅北西の同市石見町、日吉町など22.5㏊が対象。都市計画道路・寿町八王寺線、公園3カ所などを設ける。駅に近い石見町(5.3㏊、地権者126人)は同意率が80%程度に達し2016年11月仮換地指定を実施。残る日吉町(9.1㏊、196人)もこの1年で50%未満から80%程度にまで急上昇し踏み切った。地権者の高齢化が進み、「やるなら早くしてほしい」との声が高まっている。一方で、農地を持つ強硬な反対地権者も数人残る。

JR山陽本線等倉敷駅付近連続立体交差事業

 事業区間は、JR山陽本線が倉敷市大島から四十瀬まで約3.2㎞、伯備線が倉敷駅から酒津まで約2.2㎞。水島臨海鉄道が倉敷市駅から四十瀬まで約1.7㎞の区間。除去踏切は9カ所。交差道路は都市計画道路6路線を想定。総事業費は約609億円。事業費は鉄道事業者が7%、残る93%のうち55%を国、岡山県と倉敷市が22.5%ずつ負担。岡山県は2016年12月に山陽本線西端約400m、伯備線北端約520~720m、水島臨海鉄道一部路面電車化など高架化区間縮減の3パターン案を提示している。

本誌:2018年1.29号 4ページ
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