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巻頭特集福祉施設発の売れる商品づくりを

農福連携 県が障害者生産の農産物・加工品をブランド化 プロのデザイナー仲介し包装一新

  • ゴーダチーズのパッケージ。左が現在のもの、右が新デザイン

 岡山県は、農福連携で障害者がつくった農産物や加工食品のブランディング事業を進めている。県がプロのデザイナーに依頼、4月には一新されたパッケージデザインの商品が登場する。また、農産物自体の品質を高めブランド化するため、自然栽培の導入も支援する。全国の自治体でもユニークな試み。せっかく良い物をつくっても売れないという悩みを解消し障害者の工賃アップにつなげようというもので、福祉施設側も期待は大きい。

販路開拓支援し工賃アップ

共通ブランド確立しPR
施設側もざん新さに期待

岡山県が今年度から進めている農福連携支援策の柱の一つに「ハレの福産良品ブランディング」がある。障害者がつくった商品は良い物でも販売のノウハウがない、パッケージデザインが目立たず売れなく、コンセプトが伝わらない、プロのデザイナーと提携しようにも人脈も資金もないという課題がある。これに対し、県がプロとのマッチングを行い支援しようというもの。

農福連携への国の施策が拡充する中で、岡山県でも支援策を検討。全国のほかの自治体が農家と障害者とのマッチングという入口の生産現場での雇用面に目を向ける中、逆に岡山県は「最終的に商品が売れなかったら意味がない」(障害福祉課)として出口の農産物の販売の部分に目を付けた。

昨年11月に県内8施設の9商品を対象にデザイン案を公募、120点の中から55点が書類審査を通過。地元の企業・団体やイベントなどのブランディングデザインを手掛ける田中雄一郎氏らが審査を担当し、2月の2次選考を経て各施設を担当するデザイナーが決定した。現在最終的なデザインを詰め近く完成する。さらにこれらの商品を共通ブランド「ハレの福産良品」として専用ロゴを使い県のイベントなどでPRしていく。

今回の新デザインに対し福祉施設側の期待は大きい。NPO法人土田の里(岡山市)の就労継続支援A型事業所アンジョリロゼールはヤギ乳のゴーダチーズなどを岡山市サウスヴィレッジ、自社工房のみで販売。新たな販路を模索し今まで百貨店、量販店、高速道路SAなどと交渉したが、相手は「このパッケージでは…」と難色を示し惨敗。そのため、今回の事業に参加した。
新デザインは商品名、ロゴマーク、やヤギ、牛など原料となる動物の図柄などが盛り込まれた。旧デザインは商品名もなく牧場風景が描かれているだけのばく然とした内容だった。藤田佳伸理事長は「これで消費者やバイヤーに特徴を伝えやすくなった」と満足気だ。担当デザイナーはデザインだけでなくマーケティング面でも協力、現在東京の量販店、地元のレストランなどの開拓に動いている。

社会福祉法人勝明福祉会きずな(勝田郡勝央町)は生シイタケ、干しシイタケ、キクラゲなどを栽培、道の駅、県北のスーパーで販売している。しかし、商品ごとに袋に貼ったシールのデザインが異なり統一感がなかった。地元で基盤を固めたいがブランドとしてのイメージが弱く認知度が低いのが悩みだった。
そこで今回の事業では全商品のシールを薄茶色にし温かみのあるイメージにしブランド名「勝央町のきずな」も視覚的に目に付く左上に配置。店頭に並べた時に同じシリーズということがわかるようにしPR面での相乗効果を狙った。

福祉と自然栽培がタッグ
タマネギ価格2倍以上に

 岡山県は支援のもう一つの柱として農産物自体の付加価値を高めブランド化する取り組みも進めている。県は、(一社)農福連携自然栽培パーティ全国協議会(松山市、佐伯康人理事長)と連携し、無肥料、無農薬で育てる自然栽培の福祉施設への普及も進めている。同会は、自然栽培を提唱する青森県のリンゴ農家の木村秋則氏、NPO法人岡山県木村式自然栽培実行委員会(高橋啓一理事長)とも交流があり、佐伯理事長らがつくるタマネギは通常の2倍以上の値段が付く。このブランド力に目を付け、その技術を活用しようという狙いだ。

 第1弾として、昨年12月に佐伯氏が社会福祉法人ももぞの学園(岡山市)、同クムレやさい畑クムレ(総社市)など県内6福祉事業所を訪れ自然栽培によるタマネギの植え付けを指導した。
17年度は、さらに水稲栽培に挑戦する。現在ももぞの学園のほか、数施設が検討中。これら自然栽培でできた農産物は県の共通ブランド「ハレの福産良品」にも組み入れる。

農福事業厳しい経営続く
工賃はわずか1万3000円

 農福連携に取り組む施設や業者は、全般的に売り上げが伸びず苦戦し採算面では厳しい。農業や食品加工事業単体では赤字で、介護福祉、児童福祉などグループのほかの事業でカバーしているのが実状。そのため、障害者へ支払う工賃は低い。
障害者が働く就労継続支援の事業所に雇用契約を伴うA型と障害が重く雇用契約がないB型があり、岡山県のB型事業所の月額平均の工賃(15年度)は1万3254円で全国平均1万5033円を下回っている。中国5県の中でも最低。訓練等給付費として国からの補助があってもこの水準だ。これをいかに引き上げるかが課題で、県のブランディング事業の目的はこの点にある。天日干しのシイタケで百貨店への販路開拓を狙うNPO法人未来創造舎和―久(倉敷市)は「工賃を3万円に引き上げたい」と言う。

もっとも、デザインが一新されても一般の商品と同じ土俵に上がったに過ぎず、逆に一般の商品と同じ競争にさらされることになる。関係者は「福祉事業所の商品だからという点が必ずしも購買動機にはならない」という。商品の魅力自体を高めていく必要がある。売れる商品づくりにはまだまだ課題は多い。

本誌:2017年3.13号 4ページ
関連リンク:岡山県庁

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