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連載記事

とどのつまりも人のお話

 「人は城、人は石垣、人は堀、情けは味方、仇は敵なり」どれだけ強固な城を築いても、人心が離れてしまえば世を収めることはできません。情を持って接すれば人は国を護ってくれるし、仇を感じさせる振る舞いをすれば裏切られ窮地にたたされる。戦国最強といわれた武田信玄の想いを端的に表した言葉で、500年を経た現代においてもその輝きは失われていません。

[会社とは今いる人である]

 現在、人をめぐって争奪戦が繰り広げられています。平成28年12月岡山県の求人倍率は1.81(全国平均1.43)まで上昇しバブル期並の求人難となり、採用に関するご相談オファーが私のところにも届いています。

 急に採用増へ舵を切られた人事担当者の戸惑いは小さくありません。ご相談の際には、これまでの採用方針や活動実績をお尋ねすることになるのですが、きちんとした手順を踏んで新卒採用されている企業は少数です。そして、在籍社員や退職していった社員への聴き取り調査に話題が移ると、担当者の表情はさらに曇ります。新規採用よりも既存社員定着こそが人事の基本であるとお伝えすることになります。

 大きなストレスや不満を抱えている職場に新たな人が集う可能性は低くなりますし、採れたとしても簡単に退職してしまいます。人の口に戸は立てられません。ネットで職場の評判を検索できる時代ですから、当座凌ぎの言葉や数字による御為ごかし採用は通用しないのです。

 ですから、採用活動とは直接関係ないように思えることから手を付けなくてはなりません。既存社員の面談やアンケートを実施して僅かでも職場に意見を反映させること。そして、ストレス対策のためにキャリア形成促成助成金等を活用して専門家のカウンセリングを受けるのも効果的だと思われます。

 また、不景気な時期に一騎当千で働いてきた社員は、目の前の仕事をこなすだけに集中せざるを得なかった期間が長いのです。どうやって部下とコミュニケーションするか、組織とは何か、効果的な指導手法等々を学ぶ機会を与えることも忘れてはなりません。受け入れる準備をしなければ、穴の空いたバケツに水をくむ作業となってしまうのです。

[中途採用の功罪]

 景気が上向き、採用が難しくなるほど各社一斉に新卒採用に力を入れます。一から育てて、できるだけ長く自社に貢献してもらおうと考えるからです。そして、新卒だけで人数が足りなければ、同様の理由で中途採用もできるだけ若い人材を採ろうとします。これらの行動が、組織の成長を鈍化させる温床となります。

 組織を拡大するとき、新卒・若手中心の採用の何が問題になるかというと、ずばり役職相応の管理監督能力が無い人が昇進してしまうことです。日本では役職ポストが空くと、内部昇進するのが一般的で、部長が退職すると一つ下の課長の中から次の部長が選ばれます。それでも、事業規模が変わらず、ゆったりと入れ替わりが進めば大きな問題とはなりません。

 しかし、事業拡大に伴って速いテンポで組織が大きくなると本来は部長たり得ない人物が昇進してしまいます。さらにその下で課長たり得ない係長が課長ポストに昇進します。このような昇進が繰り返されると、最悪の場合組織が瓦解しかねません。よって、組織の強度を落とさずに拡大するために、管理職ポストにも実績・実力がある人物を外から招聘し、組織にくさびを打つべきなのです。

 もちろん、中途採用人材がすぐ組織にフィットして采配をふるうのは難しいかもしれません。しかし、自社の外にあった知識・見識を取り入れる度量を持つことは、企業が一流になっていくための関門でもあります。くれぐれも加熱する新卒獲得競争にあてられて、組織内バランスを崩さないようご注意ください。

[ご挨拶]
 今回をもちまして『ビジネス五事七計』から卒業させて頂くこととなりました。8年間のご精読に感謝申し上げますとともに、一層のご隆盛をお祈り申し上げております。


筒井徹也(鉄じぃ)
スウィングモード 代表
倉敷芸術科学大学・倉敷市立短大 非常勤講師
ご感想・ご質問は son57@tteac.com まで

本誌:2017年3.13号 21ページ

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