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[法律] 営業秘密の保護について

Q. わが社はパン屋を営んでいますが、ある独特な製法でパンを製造しており、幸いにもおいしいと評判です。しかし、このようなパンの製造方法はわが社が長年の研究によって作り上げたものであって、社員が退社した後に秘密が他社に行き渡ってしまわないかが不安でたまりません。このような従業員の退職による営業秘密の漏えいを防止するために具体的にどのような方策をとればよいでしょうか。

退社時に誓約書提出を求めるべき

A. まず、従業員は労働契約上の付属義務として、営業秘密の守秘義務を負っています。従って、従業員は在職中であれば、営業秘密を漏えいすることは当然に許されないことになります。それでは、その従業員が退職した場合はどうでしょうか。従業員は、その退職により契約関係が終了した以後も、信義則上一定の範囲で在職中に知りえた会社の営業秘密をみだりに漏えいしてはならない義務を負うとされています(大阪高裁平成6・12・26)。従って、従業員は退職した後も、会社の営業秘密をみだりに漏えいしてはいけません。仮に、従業員がこのような義務に違反し、不当な対価を取得しあるいは会社に損害を与える目的から競業会社にその営業秘密を開示する等許される自由競争の限度を超えた不正行為を行った場合には、そのような者は損害賠償責任を負う可能性もあるといえます。

 しかし、現実には、退職後の社員の行動まで把握することは困難です。そこで、退職時に改めて、面接を行うなどして、在職中に取り扱った秘密情報を特定し、その秘密情報の重要性を認識させ、退職後にも一定の範囲で秘密保持義務を負うことを確認したうえで、その内容を記載した誓約書の提出を求める等の措置をとることが望ましいといえるでしょう。また、退職時に、秘密保持義務を課すという内容の合意を得ることも考えられますが、このような合意はその秘密の性質・範囲、価値、労働者の退職前の地位等に照らして合理性が認められない場合には無効となる可能性があることに注意が必要でしょう。

 本件でも、従業員は退職後も一定の範囲で営業秘密をみだりに漏えいしてはならない義務を負うことを確認して、退社時にこのような誓約書の提出を求めてみてはいかがでしょうか。

松永法律事務所
松永 憲一郎 氏
岡山市北区野田屋町2-6-22
TEL 086-238-7422

本誌:2011年6.27号 25ページ

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