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ロレアルのストーリー(2)

 ロレアルは現在グローバル・ブランドを32持っている。1931年にブランド・マネジメント・システムを始めたプロクター&ギャンブル(P&G)から1970年代に学び、それ以来自社でブランド管理の在り方を研究し、作り上げたのが今日のロレアルのブランド・マネジメント・システムである。荀子の「藍は青より出でて、藍より青し」を正にビジネスの世界で実現していると言ってもよい。32のグローバル・ブランドのうち自社で創り上げたのはロレアル・プロフェッショナルとロレアル・パリの2つだけで、残りの30のブランドは買収により獲得したものである。そのブランドをロレアル独自のブランド・マネジメント・システムで育み大きく成長させたところにロレアルの偉大さがある。多くの企業は買収してもなかなか自社のブランドとして育成できず、買収した金額からすれば信じられないような安値で売却するケースもある。失敗の要因は、大きく分けて4つあると考える。

 ①ブランド・マネジメント・システムを取っていないこと

 ②管理会計のスペシャリストがいないこと

 ③ブランドの世界展開ができないこと

 ④地域ブランドの上手な取り込みができていないこと

 P&Gが編み出したブランド・マネジメント・システムは一言で言えば「ブランドをヒーローにすること」である。従って、ブランドの下にマーケティングや営業が入ることになる。多くの企業はこのような簡単なことができていない。営業や製造の方がブランドの上位にある。従って、ブランドが育てられないのである。営業が月に1000万円の予算が与えられていて、複数のブランドを担当していると仮定すると、最終的には1000万円を達成することが重要なので、担当ブランドの売上バランスではなく、その中の売り易いブランドを売ることになる。P&Gの「ブランド・マン」の提案のように、アイボリーというメガ・ブランドとキャメイという弱小のブランドがある場合、営業は数字を作るためにどうしてもアイボリーを売り、キャメイへはそれほど力を注がなくなる。ロレアルは一つ一つのブランドに専従のマーケティングと営業を張り付ける。このようにすることで唯一ブランドは成長する。

 優れたブランド・マネージャーでも必ずしも会計の専門家ではない場合が多い。経営を成功させるためには数字が大切であることは言うまでもない。ブランド・マネージャーをサポートする管理会計のスペシャリストが参謀として必須である。このような管理会計のスペシャリストなしに日本企業が買収に突き進む場合、その後の経営を現地任せにし、管理不在で不正の温床になったり、あるいは、ブランド価値が下降傾向をたどる結果になることがある。名門企業の東芝や富士フィルムのケースはその一例と言えるかもしれない。

 買収するためには通常はプレミアムを支払う必要があり、投資金額の回収のためには現状の売り上げや利益を数倍、否、数十倍にする必要がある。ロレアルの場合は世界中の化粧品のすべてのチャネルにバランスよく営業網を確立している。従って、メイベリンのような買収をしてもそれを直ちに世界展開し、売上や利益を買収時の数倍に引き上げることが可能となる。多くの日本企業の場合そのような営業力が欠如していることが多い。結局ホームマーケットである日本市場で売上を拡大するしか売上拡大のすべがない企業が多いのではないだろうか。

 既に述べたようにロレアルはブランドに地域名をプラスすることに長けている。ロレアルにパリをつけたり、メイベリンにニューヨークをつけたり上手に地域名を活用している。シュウ・ウエムラは文字通り日本の名前なので特別に東京という地域名をくっつけて展開はしていない。嘗て、資生堂は「東京・銀座・資生堂」というコマーシャルを展開していた。資生堂ブランドに東京・銀座を付加することは優れたブランド戦略である。岡山でも「岡山」より知名度の高い「倉敷」を加えたブランドを展開し成功している企業がある。地域名を入れたブランド名を展開することについてはかなり厳しい規制があるが、一旦獲得できると素晴らしい優位性を得ることになる。是非一度ロレアルがどのように地域名をブランド名に取り入れているか研究してみてほしい。

本誌:2017年9.4号 19ページ

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