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巻頭特集再開発進むも見えぬ倉敷駅前の将来像

コンテンツなくして回遊性なし 中央通り東西の連携どう図る!?

  • 今秋開業に向け工事が進む阿知3丁目再開発

 JR倉敷駅前西側の市営駐車場跡などで進む阿知3丁目東地区市街地再開発事業は、西側エリア全体の活性化の起爆剤として期待がかかるが、これを機にどのように町づくりをしていくのかが見えてこない。倉敷美観地区や商店街がある東側に比べ、西側は今までこれといった集客の目玉がなく人通りも少ないまま。西側全体の集客力を高めるためには再開発事業だけでは不十分でさらなる魅力づくりが求められる。

 再開発事業は倉敷駅前から南に伸びる倉敷中央通りの西側の敷地約1.7haで進められ、ビル2棟(延べ計約4万㎡)を建設。ホテル、マンション、飲食店、金融機関、クリニックなどが入居し、市営駐車場(196台)も整備する。住戸数は171戸で中心部の定住人口の増加が期待できるほか、ホテル部門は客室数152室、200~250人収容の宴会場を設け、交流人口の増加も期待できる。

 同事業対象地の周辺は古い木造の住宅、店舗が密集しており、集客の核だった映画館「千秋座」が閉館してから空き店舗が急増、高齢化で空き家も増え、衰退に歯止めがかからない状況だった。計画が浮上してから30年近くかけてようやく再開発事業が実現するわけで、その規模の大きさから周辺も含めた中央通り西側全体のまちづくりの機運醸成が期待される。

 その中で、倉敷市では2021年度から始まる第3期目の中心市街地活性化基本計画(5年間)の素案で、中央通り西側の活性策を盛り込んでいる。再開発で整備する公共空地でのイベントや残存する古民家の再生活用などだ。

 しかし、それ以上の具体的な内容はない。同計画のまちづくりのテーマの一つに「倉敷駅―再開発地区、旧商店街―美観地区の回遊性の創出」が挙がっているが、そもそものネックは東西を分断する中央通りの存在だ。過去には再開発地区の南側の旧街道沿いにある国指定重要文化財大橋家住宅を核に集客を図り東西の回遊性創出を試みたが、中央通りの壁に阻まれ、取り組みも単発のイベントが中心だったため双方向の動線形成には至らなかった。

 そのため、現状の活性化案では「中央通りの壁を越えるまでに人の流れをつくれるのか疑問」との声も上がっており、必要なのは「西側の地域内の要所、要所への集客力のあるコンテンツの整備」という。その受け皿となり得るのが残存する多くの古民家だ。しかし、ただ再生するだけでは「東側の既存の美観地区と同じものができるだけ。ならばわざわざ道路を渡らなくても美観地区内で完結する」という声も。古民家再生であろうと、新築であろうと東側と違った差別化できるコンテンツこそが必要というわけだ。

 例えば飲食。現在西側でも駅近くや再開発地区の隣接の旧一番街商店街ではさまざまな飲食店の集積が進んでいる。再開発ビル内にもホテルの和食レストランをはじめ多くの飲食店が入居する計画。あるまちづくり関係者はこうした点に着目、「自分がもし店を出すなら飲食店で、物販店は難しいと思う」と話し、今後のまちづくりについても「駅前の西側全体に特徴のある飲食の集積を図るのも一つの手かもしれない」と話す。

 いずれにせよ、今後のまちづくりは時間との戦いともなりそうだ。今まで西側は駅前で町の顔であるにもかかわらず関心が薄く再開発事業以外の具体的なアイデアはなかった。しかし、再開発事業で関心が高まっている今は好機のはずだ。これを逃し関心が薄まれば、次の機会はいつになるのか全く不透明だ。

 現在コロナ禍で店舗、コンテンツの誘致を図ろうにも難しいかもしれないが、長期的な視点からまちづくりを考えると今からさらに踏み込んだ活性化策を詰め、手を打つべきだろう。

倉敷市

3期目の中心市街地活性化基本計画
ハードからソフトへ転換

 倉敷市は、第3期目となる中心市街地活性化基本計画(2021年度から5年間)の案を策定した。近く内閣府に申請、年度内に認定される見通し。その中で阿知3丁目の再開発事業を契機に中央通り西側の活性化策を盛り込んだ。

 一つは「阿知3丁目東地区にぎわい創出事業(仮称)」。再開発敷地内に新たに設けられる公共空地(約800㎡)を活用しイベントなどを催す。今までは中央通り西側は建物が密集し、そうした場所さえ確保できなかったため、大きな前進ともいえる。現在市やまちづくり関係者らでイベントなどを円滑に実施できるよう体制整備を進めている。

 また、残存する伝統的建造物を再生し店舗や住居などに活用していく。NPO法人倉敷町家トラスト(中村泰典代表理事)の18年度調査によると、阿知3丁目で108件、隣接する稲荷町40件、川西町87件が残されている。数だけ見れば「美観地区がある中央通り東側と比べてもそん色ない」(中村代表理事)規模だ。しかし、美観地区と違い伝統的建造物群保存地区ではなく古民家などの保護策がないため、残った建物も老朽化が進み解体の危機に瀕している。これに対し同NPOなどが啓発活動を行い古民家再生の機運を盛り上げていく。市もこうした動きを支援していく。

 市では、過去2期の同基本計画で美観地区を中心に林源十郎商店、奈良萬の小路など民間の古民家再生事業を後押しし、ハード面で集客施設の整備を重点的に進めてきた。コロナ禍以前にはそれらが奏功し、もともと裏通りだった本町・東町通りににぎわいが生まれ成果を上げてきた。そのため、新基本計画では東側の整備は一部の事業を除きとりあえず一段落。半面、再開発が始まった時期とも重なり西側の活性化策を盛り込んだ。



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