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連載記事山田響子の魅力を引き出すコミュニケーション術

「全体」ではなく「部分」で考える

 全体ではなく部分で考えると言うことを私はお勧めしています。つい、ネガティブに受け止めてしまったり、自分を責めてしまうと言うことがあるかもしれません。誰かがあなたに罪悪感を与える、ということもあれば、つい自分で自分を責めてしまうということもあるかもしれません。周囲の人から、「そんなに自分を責めなくても」とアドバイスを受けたり、自分でも「どうしてこんなふうに考えてしまうんだろう」と思っても、つい自分を責めてしまう癖を手放すことはできません。

 そんなとき、まずは「こんなふうにネガティブに考えてしまう自分が嫌だ」と、自分を嫌わないでほしいのです。どんなあなたも愛すべきあなた。つい、ネガティブに受け止めてしまう、私は駄目だ、と全体として捉えるのではなく。私には、ついネガティブに受け止めてしまうという、心の癖があるな、と部分として捉えてほしいのです。「私は駄目だ」から「私にはちょっと厄介な心の癖がある」と捉え直すのです。誰にでも一つや二つの癖はあります。癖が治るのは「気づく」ところから。「あ、またやってるな」と気づくから無意識だったものが意識できるようになり、そのうち厄介な心の癖を少しずつ手放せるようになってくるのです。

 苦手な人や嫌いな人がいる、と言う方もいらっしゃるでしょう。そんな時もぜひ部分として捉えてみてください。「あの人が」嫌いだ、苦手だ、ではなく、あの人の「こういうところが」嫌いだ、苦手だと考えてみるのです。そうすると、自分が一体何に価値観をおいているのかが見えてきたりします。自分の中のパターンが見えてきたりするのです。パターンが見つかるということは、ある程度、またこのパターンで来るなと予測できたり、こんな時はこうすればいいんだという対処法が、見つかることでもあります。

 ここで心理学者のアルバート・エリスが提唱した「ABC理論」についてご紹介します。目の前で何が出来事が起こった時、傷つく人もいれば、気にならない人もいます。同じことを言われても腹が立つ人もいれば、何も感じない人もいます。事実は同じでも人によって反応が異なるということです。事実に反応して感情が自動的に生まれるのではなく、そこには自分なりの意味づけや解釈があるのです。さまざまな出来事A(Activating event)に意味づけや解釈B(Belief)を通して、結果C(Consequence)が生まれるとし、その頭文字をとってアルバート・エリスは「ABC理論」と名付けました。

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本誌:2021年2月8日号 19ページ

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