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巻頭特集中小企業診断士特集

コロナ不況乗り切り、チャンス掴め! 経営者、従業員と共に答え導き出す

  • 左から岡山県信用保証協会 井原英二常勤理事、足羽憲治会長、(一社)岡山県中小企業診断士会 安藤覺会長、松本直也専務理事
  • 地域経済の現状について意見交換

 新型コロナウイルスの感染拡大により、県内中小企業も大きな打撃を受けている。いまだ底が見えず、先行きは不透明のままだが、金融機関や商工会・商工会議所などの中小企業支援機関では、さまざまな支援制度が実施されている。今回、(一社)岡山県中小企業診断士会の安藤覺会長らと岡山県信用保証協会の足羽憲治会長らに、地域経済の現状や今後の見通し、課題、アフターコロナでの診断士の活用法などを語ってもらった。

安藤 新型コロナウイルスの感染拡大により、県内中小・小規模企業は大きな影響を受けています。喫緊の課題である資金繰りにおいて県信用保証協会は、さまざまな支援制度を実施していますが、まずは簡単に信用保証協会の業務内容について教えてもらえますか。

足羽 中小・小規模企業が金融機関から事業資金を借りる際に、公的な保証人になる機関です。資金繰りに公的保証を利用することで、金融機関からの融資を円滑化しています。また、中小・小規模企業が融資の返済を履行できない場合は、我々信用保証協会が企業に代わって返済します。

安藤 近年、法改正により、今まで以上に中小企業を支援していく施策が取られていますね。

井原 2018年に中小企業信用保険法等の改正があり、業務内容に中小企業の経営支援が本業の一つの柱として明記されました。これを契機に、より一層中小企業の経営支援をしていくために、組織体制を強化しました。以前は保証と経営支援を切り離していましたが、現在は保証を担当する部署に経営支援部門を統合し、金融支援と経営支援を一体的に取り組む体制を構築しています。

足羽 法的に経営支援を実施することが盛り込まれましたが、我々だけでできることは限られています。そのためさまざまな中小企業支援機関に協力を要請しており、2013年から中小企業診断士を中心に専門家派遣を実施しています。さらに15年度からは岡山県中小企業診断士会と業務提携し、より実践的に中小企業支援に取り組んでいます。

松本 我々も県信用保証協会の要請に積極的に取り組んでおり、現在、支援回数は年間で300件ほどあります。

安藤 新型コロナウイルスの影響で、これまで以上に県信用保証協会からの要請が増えると予想していますが、現状はどうでしょうか。

井原 正直なところ多忙を極めています。5月以降、前年同月と比べると5~6倍の保証の申し込みがあります。これは過去を見渡しても、前例がないほどの数になっています。

足羽 5月からの3カ月で、1年間の申し込み数に達する勢いです。特に岡山県融資制度の「新型コロナウイルス感染症対応資金」では、無担保で3年間無利子、据置期間最大5年、保証料減免という過去前例のない制度が施行されました。それほどの経済危機に直面しているのだと感じています。

松本 どういった業種の申し込みが増えていますか。

井原 やはり飲食業、ホテル業、サービス業が中心ですが、全業種から申し込みがありますね。

安藤 当面は資金繰りを手当てしないとどうにもならないでしょう。ここまで先行きが見通せない状況になると、多くの中小・小規模企業は資金ショートした段階で倒産してしまいます。こういう危機的状況において県信用保証協会の役割はとても大きい。民間の金融機関では、新型コロナウイルス感染症対応資金などの制度を実施することは難しいと思います。

足羽 新型コロナウイルス問題は、国内に限らず全世界的な問題です。経済が以前のように元に戻るためには相当時間がかかるでしょう。ある程度落ち着いた後、しっかりと経営支援に取り組まなければなりませんが、厳しい時期がくることは間違いありません。

松本 リーマンショックの時は、金融や製造業への打撃が中心でしたが、今回は実体経済そのものが影響を受けています。冬場に感染症が広がれば、どれほど社会経済に影響が出るか分かりません。これから中小企業診断士は、本当の意味で真価が問われるでしょう。県信用保証協会との連携を強化し、難題に取り組んでいかなければなりません。

足羽 本来は今年度から事業承継に力を入れていく予定でしたが、コロナ禍の影響で事業承継ができずに廃業する企業が増えることを懸念しています。今は、まず後継者が安心して事業を引き継げるようにすることが迅速に取り組むべき施策だと思います。

安藤 コロナ禍によって事業承継自体も困難になっており、廃業を選択肢にいれる企業も増える可能性はあります。ただ、地域社会を支えているのは中小・小規模企業です。我々としてもできるだけサポートし、事業を継続できる施策を提案していきたいと思います。

松本 たちまちは資金繰りですが、単純に資金を調達するのではなく、事業を継続するために根本的な構造改革などの仕組みづくりにも着手できればと思います。

安藤 今までのビジネスモデルをそのまま継続しても、今後、事業が盛り返すことは難しいでしょう。もう以前のような仕事のやり方に完全に戻ることはできないと思います。中小・小規模企業がこれまで取り組んでいなかったIT化や働き方改革なども含め、新しい取り組みを実行しなければ、アフターコロナの世界を生き抜くことはできないと思います。

井原 世界中の人々の生活様式や考え方が変わってしまった以上、それに合わせたビジネスを展開しなければ、社会経済活動も維持できません。今後はもっと変化が著しくなるでしょうからね。

松本 経営者の考え方を変えるという意味ではチャンスでもあります。これまで手を付けずにいたことをやらざるを得ない社会情勢になっていますから。

足羽 過度な支援が新陳代謝を阻害するという場合もありますが、地方では金融・経営支援は必要だと思っています。中小企業の倒産が増えれば、雇用の場がなくなり、地域社会が成り立たなくなります。

松本 第一弾で金融支援、第二弾で経営支援という形になるでしょう。おそらく冬以降には、経営支援がメーンになってくると思います。そこで我々中小企業診断士を有効活用してほしいですね。経営者は、コロナ禍をきっかけにビジネス構造を見直し、これからの社会ニーズに合わせたものにするという考え方が必要だと思います。

安藤 コロナ禍の影響で図らずも自社だけで問題解決を図ることはできなくなってしまいました。経営者は今まで以上に広い視野を持たなければなりません。そういった時に、我々中小企業診断士を有効活用してほしい。アドバイスを聞くことで必ずヒントが見つかると思います。もちろん最終決断は経営者がしなければなりませんが、色んな意見を検討するということは必須だと思います。経営者も知らない支援策もありますからね。まずは、多くの有益な情報を集めることです。

松本 県信用保証協会には事業承継に対する特別保証がありますよね。

井原 はい、あります。

松本 こういう情報も知らなければ使うことができません。また、コロナ禍の中にあっても、利益を上げている企業はあります。そういう情報を聞き出すだけでも、診断士を活用するメリットはあると思います。

井原 事業を継続する上で、社員を巻き込んでいくことも重要です。そうしなければ、事業継続のための人材が育ちません。今後は経営者が社員に対して指示するのではなく、社員が中心になるボトムアップ型にしなければならないと思います。

安藤 そうですね。社員が中心になる場合の注意点としては、成功事例をそのまま、まねしてしまうことが挙げられます。どの会社も経営環境や状況は同じではありません。現状を分析した上で色んな事例を参考にし、自分たちでカスタマイズした方法を導き出さなければ意味がありませんからね。

松本 我々専門家も同じです。企業を支援する場合、同じ業種であっても全く同じやり方で支援して上手くいくことはまずありません。日々学びながら、各企業に合わせたオーダーメード式のコンサルティングをしていかなければ結果は出ません。アフターコロナの岡山県下では、より適切なアドバイスやコンサルティングができなければ、地域経済において存在価値がないという危機感を持って、全力で支援にまい進する考えです。

安藤 経営支援においてこれだという正解はありません。日々変化する状況を把握しながら、より適切な一手を考え続けるしかないのです。経営者、従業員と共に答えを導き出していきたいと思います。不安も多いですが、悲観する必要はありません。5年後は必ず明るい未来が待っています。チャンスは必ず来ます。その時まで何とか生き残ることが大前提です。そのために岡山県中小企業診断士会は全力で企業を支援していきます。みんなで力を合わせて頑張っていきましょう!

設立60周年記念式典

 (一社)岡山県中小企業診断士会は、11月10日午後3時から、岡山市北区駅元町1-5のホテルグランヴィア岡山で、設立60周年記念式典を開く。
 
 前半は、食品加工用乾燥機製造販売など大紀産業㈱(岡山市)の安原宗一郎社長が「当社の経営革新と海外でのSDGs活動について」をテーマに講演。後半は同会の歴代会長が対談し、歴史を振り返りつつ中小企業診断士がどのように活躍してきたかを語り合う。

 問い合わせは、同会(電話086-225-4552)へ。
 

本誌:2020年10月12日号 4ページ

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