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連載記事山田響子の魅力を引き出すコミュニケーション術

意思疎通を円滑にするポイント

 「何度言っても分からない。前も言ったのになぜできてないんだ!?」

 身近な家族や、部下・後輩についそんなふうに思ってしまったことはないでしょうか?そんな時、「使えないヤツだな」なんて言葉が脳裏によぎったりするかもしれません。うっかり口について出てしまおうものなら「ハラスメント」と認定されてしまいます。実は、伝わらないのは受け止め手ではなく、伝え手に何か改善するポイントがあるのかもしれません。

 先日友人グループで食事をしていた時の出来事をご紹介します。なんだか自慢話のようになってしまったら恐縮なのですが、わたしがごく自然にやっていることが、友人たちには驚きだったようなのです。

 アイスクリームが大好きなわたしは、食後にアイスクリームを追加オーダーしました。小学生低学年と保育園児の兄妹を連れてきていた友人が、うちの子もアイスを、という話になったのです。一人一個は食べきれないということで、兄妹で分け合って食べようという話になりました。

 一番通路側に座っていたわたしがその注文を伝える係となりました。「アイスクリームを2つください。1つにスプーンを2本つけていただけますか」とお願いしました。明らかにアルバイトであろうと思われる女性店員さんの表情に戸惑いが見られたので、さらに説明を加えました。

 「アイスクリームが2つ、そしてこちら側のアイスクリームにはスプーンを2本つけてください」と指の動きを使って、イメージさせるように伝えたのです。

 しばらく経過したあと、運ばれてきたアイスクリームには、それぞれの器に1本ずつのスプーンしか添えられていませんでした。その時わたしは全てを察して「もし、よろしければスプーンをもう1本いただけますか?」と店員さんに伝えました。

 その時です。テーブルを囲んでいた友人たちが、「あんなに分かりやすく伝えた、分かりましたと言った、その上で間違えたのに、もしよろしければと伝えるんですね。わたしは正直、言いましたよね?と思ってしまった」と口々に伝えてくれました。

 わたしは、改めてその時の自分の思考に気がつきました。アイスクリームを運んできた女性店員さんは、差し出したアイスクリームに向けられた全員の視線に、明らかに「あ、違ったか?」といった表情をしました。だから、もうこれ以上「あなたが間違えた」と伝える必要なはいと思いました。そして「あの伝え方では伝わらなかったか」と自分を省みました。この瞬間いち早く得たい結果はスプーンをもう一本もらって、兄妹が仲良く1つのアイスクリームを味わうこと。自分の伝え方を省みているので「もしよろしければ」という言葉を添えて、「スプーンをもう1本いただきたい」という意思を伝えただけだったのです。

 その後、同席していた友人がわたしの言動をブログに書いてくれました。そのブログには「響子さんはスプーンを3本ほしいと伝え、分かりやすく指のアクションを交えてこちらに1本、こちらに2本と伝えたのに間違えられた」と書かれていました。

 それを読んでわたしはハッとしました。彼女の記憶は事実とは異なっていたからです。わたしは「スプーンが3本ほしい」という全体像を伝えていなかったのです。はじめに全体像、そのあと部分を描く伝え方をすれば、きっとあのアルバイト店員さんも一度で要求に応えられたはずだったのです。そう、やっぱりわたしの伝え方の方に改善点があったということでした。

 わたしの尊敬する若手経営者の男性が、このような話を聞かせてくれました。それを聞いた時ますますその方を尊敬してしまいました。「同じことを言って伝わらない時、7回目までは伝え方が悪かったと思うようにしている。しかし8回目があった時、もしかしたら資質に問題があるのかもしれないと思う」

 同じことを7回伝えるまで、自らの伝え方を省みる。わたしも流石にそこまでは徹底できていません。何度言っても分からないのは、もしかしたら何度も同じ伝え方をしているのかもしれません。どう伝えれば伝わるのだろうと工夫を凝らす。7パターンくらいは工夫のしようがあると、その経営者の方は考えていらっしゃるのかもしれません。伝わらないのは伝え手の工夫不足かもしれない、そんな自戒を持ってほしいと願います。

本誌:2020年10月12日号 19ページ

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