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巻頭特集進まぬ大規模老朽化施設の耐震対策

診断結果公表1年 高額改修費用などネックに

  • 来年夏に全館休館し耐震補強する倉敷国際ホテル

 岡山県と岡山、倉敷など6市が大規模建築物の耐震診断結果を公表して、1年以上が経過した。一部のホテルが対策を具体化させたが、大半の施設では耐震補強か、建て替えか、除却か今後の方向性さえ決まっていない。多額の改修費用などがネックになっているため。大阪府北部地震の直後で関心が高まる中、利用者の安全が最優先としながらも身動きが取れない状況に陥っている。

 昨年3月の大規模建築物の耐震診断結果の公表は、国の法改正に基づき実施された。1981年5月以前の旧耐震基準で建設された不特定多数の人が集まる一定規模以上の建物が対象で、診断結果は震度6強から7程度の地震で「倒壊、崩壊する危険性が高い」「危険性がある」「危険性が低い」の3段階で示され、県内では21施設が「危険性が高い」とされ、このうち約半数が「今後の方向性を検討中」としていた。公表から1年が経過し本誌ではその後の各施設の動きを調査した。

 昨年の公表で「2018~19年に耐震改修」としていた㈱倉敷国際ホテル(倉敷市)は計画を具体化。来年5月~8月中旬の約3カ月間、全館休館し耐震補強工事に取り組む。ホテルとして全館休館は極めて異例の措置。工事を分割し部分的に営業を継続しても騒音などの問題があり十分なサービスができないため。「100年先まで愛されるホテルを目指す以上、安心安全を提供することは基本中の基本」として決断した。

 しかし、既に耐震計画が固まっていた施設などは除き、この1年で計画が具体化したのは一部にとどまっている。大半は耐震補強、建て替え、除却など基本的な方向性や実施時期も未定のままだ。その理由としてウエートを占めるのが億単位となる改修費用。行政の補助も決して手厚いとは言えない。岡山、倉敷、真庭の3市が設けている耐震改修の補助制度では、補助率23%で上限が4800万円。国の補助金が加わっても約2倍の合計最大9300万円程度。国の補助金のみ利用する場合、補助率は最大11.5%。実際ある施設で改修費を試算したところ約20億円とされ、とても賄いきれるものではない。また、3市の制度では耐震改修のみで建て替えは対象外、用途が限定されている。また、億単位の費用を掛けても「今後回収できるかどうか」という点も二の足を踏む理由だ。

 また、工事で業務を中断できない点もネックになっている。築45年の川崎医科大学付属病院(倉敷市)の本館は、休館し診療を止めるわけにはいかず、2年以上建て替えか改修か具体策を検討しているが、未だに結論は出ていない。商業施設も同様。入居店舗の休業補償などの問題も出てくる。

 改正法では耐震診断結果を公表することで所有者に対応を促す狙いだが、耐震改修、建て替えは努力義務で強制力はない。そのため、行政側は所有者に現状をヒヤリングしながらひたすら指導するしかないのが実情だ。

 大阪府北部地震で危機意識が高まる中、各施設とも十分耐震の重要性は認識しつつも身動きが取れないというジレンマに陥っている。資金面の補助も含めて多方面からの政策、議論が必要だ。

公共施設に対象拡大
ブロック塀緊急調査

 大阪府北部地震を受けたブロック塀の危険度などの緊急調査の対象が、当初の学校から公共施設全般に広がっている。岡山市では学校以外の図書館、公民館などを対象に調査に動きだした。施設の数がぼう大なため、まずは公共施設のブロック塀の数を調べ全体像の把握に努めている。倉敷市では約300の公共施設を対象に調査し現在集計中。その中で「異常あり」とされた施設ではより詳細な調査を進め対策を練る。各自治体は「公共施設等管理計画」の策定で、既に施設の建物自体の劣化状況は調査しているが、ブロック塀は盲点だった。先行していた学校の調査は既に終了、近く各自治体で対策などを公表する予定。

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