WEB VISION OKAYAMA

連載記事人材育成のタネ 87

職場でのセクハラはなぜ解決しないのか

  • 竹本幸史氏

 セクシャルハラスメント(以下セクハラ)という言葉は、1970年代に学術界に浸透し、77年には法的な概念として注目を集めるようになりました。最近、改めて考えることがあります。過去、企業でセクハラに対する解決策として実施した研修プログラムや苦情処理制度によって、職場環境は女性にとって、より快適なものになったのだろうか、特に、これらの取り組みが女性の管理職の数にどのように影響を与えているのかを。

 実際、このあたりを弊社で調査したところ、従業員向けに課している研修も導入した苦情処理制度も、職場環境でのセクハラを解決する力にはなっていなかったのです。それどころか、その2つとも、従業員の不満と離職率を高めているという結果も見えてきました。では、具体的にどのような問題があったのか。まずは、セクハラ研修の問題点について見ていきたいと思います。一番の問題は、研修の提示の仕方にあります。通常、研修は義務化されており、それによって男性にはこの問題に注意を払いなさいというメッセージを送ることになります。また、禁止行為という基本的な部分をフォーカスすることにより、男性はやってはいけないことの境界線を分かっていないと言わんばかりになります。基本的に「あなた達が悪い」と責め立てるような研修を実施すれば、それがどんな研修であっても受ける人は防御的になります。そうすると、受講者が解決に向けて協力する可能性は低くなり、逆に抵抗しようとします。場合によっては、男性は被害者をより責めるようになる傾向も出てきます。

 次に、苦情処理制度の問題点について考えてみましょう。まず考えなければならないのが、制度自体の問題です。調査してみると、そもそもこの制度自体が逆効果となっているケースが数多く見受けられました。セクハラを告発した被害者が報復を受けるからです。加害者や周囲からののしられたり、嘲笑されたりといったことです。こういった報復は長期的な影響を及ぼします。被害者の心身の健康状態も低下してしまいます。

 では具体的にどのような行動を会社全体で取ることがセクハラに対する解決策になるのか。大きく3つあると考えています。1つ目は、トレーナー訓練プログラムです。これは従業員をセクハラ問題の専門家として育ているというもの。2つ目は、ハラスメント・タスクフォースで、問題の診断と解決策の設計を従業員が担当するというもの。3つ目は全員が進捗を確認できるように数字を公表ことです。「測れないものは管理できない」という言葉のとおり、問題を明らかにするデータを公表すれば、従業員もそれに注目してその問題を解決することが文化となっていきます。最終的には企業文化を変えて、この問題解決にもっと多くの人を巻き込む必要があります。企業文化は究極的にはリーダーが創造するものです。リーダーはこの問題に責任を持つことを公に示し、自らのチーム(企業・組織)でこの問題解決を試み、すべての管理職の手本になる必要があるのです。

●竹本幸史● 元㈱リクルート岡山支社長。現在は人材育成を主としたコンサルティング業務の㈱SWITCH WORKSを立ち上げ奔走。またリーダー養成スクール「法人会員制・定額制ビジネススクール」を開講中

本誌:2021年3月1日号 14ページ

PAGETOP