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連載記事スローライフ~午後4時の窓辺から~

山田ねずみ大根

 冬の食卓を代表する野菜のひとつに大根があります。もともとは地中海沿岸地方が原産とのことですが、なぜか極東の果ての日本で大根は民衆からこよなく愛され、他国では考えられないほど大きさ、色形もさまざまな品種が育成されました。圧巻は重さ30㎏にもなる桜島大根と長さ2m近くまで伸びる守口大根です。ともに同じ大根とは信じられないほどマニアックな野菜をよくぞ作り出したものだ、と昔の人の研究熱心さに驚かされます。

 日本には上記2種ほどユニークではないにしても、全国各地に特有の固有種があり、なかでも私が毎年作っている品種に「山田ねずみ大根」という滋賀県特産の真っ白で小振りな大根があります。山田ねずみの特徴はお尻がきゅっと締まり、まるでネズミのしっぽのように主根がピンと飛び出しているからです。肉質は緻密で柔らかく、また葉っぱも棘がなくすべすべして煮食いに最適。

 そして何と言っても、市販の大根が現代の少人数家庭の食生活にマッチしないどでかい代物であるのに対し、山田ねずみは独り者でも食べきるのにちょうどいい大きさなのです。

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本誌:2020年7月13日号 10ページ

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