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連載記事人材育成のタネ 85

同一労働同一賃金度の本格施行

  • 竹本幸史氏

 2020年4月1日から全国の大企業で一斉に施行された「同一労働同一賃金(別名:パートタイム・有期雇用労働法)」。中小企業に対しては今年の年4月から適用されます。同一労働同一賃金とは、同じ職場で同じ仕事をする正規雇用と非正規雇用の待遇や賃金格差をなくすという考え方です。それまでも労働関係の法律で一定のルールは設けられていましたが、今年からそのルールが明確化され、すべての事業主はこれを徹底しなければなりません。では実際に企業は、同一労働同一賃金制度に対し、今後どのように対応しなければならないのでしょうか。企業(事業主)側のメリット・デメリットを紹介したいと思います。

 これまで仕事内容に対する正当な評価がされず、かつ満足な給与支給がなかった非正規労働者にとっては、同一労働同一賃金が企業で正しく導入されれば、自身の働きを認めてもらうチャンスとなります。さらに同じ職場で働く正社員と同じような評価方法や給与体系となれば、日常業務に対するモチベーションが向上し、労働生産性もそれに伴い高くなっていくことが期待できます。また、従業員を平等に評価する制度が企業の中でしっかりと組み込まれていることが社内外に広まれば、「ここはしっかりしている会社だ」と、正規・非正規問わず社員からのその企業への評価が高くなるでしょう。そうなれば自社内にいる優秀な人材が外部へ流出する可能性は低くなります。また、採用面でもプラスの効果を与えるでしょう。

 企業にとってのデメリットとして、一つ目は、人件費の上昇です。どのような雇用形態にとっても平等な評価と報酬が与えられること自体は、全ての企業が目指すべきあり方です。しかし、これまで日本では正社員と非正社員との格差が当たり前に行われてきた歴史があります。その歴史や古い企業体質を変革し、給与体系を新しいものに変更するのは容易ではありません。ただ、働き方として正しい方向へ向かっているので、ここではデメリットではなく、チャレンジととらえた方が良いでしょう。

 同一労働同一賃金制度では、社員から企業へ「なぜこの給料なのか」「どのように評価するのか」といった説明を上長へ要求する権利が与えられます。あらかじめ企業側から社員に対して詳細な説明は行われるべきですが、都度対応しなければならない場面も出てくるでしょう。その際にこれまで実施していなかった説明会の開催や理由を調べるための調査時間などが新たに発生する可能性があります。なるべく社員間で疑問が生まれないための準備や仕組みづくりも企業側に求められます。

 同一労働同一賃金への対応は、一朝一夕にできるものではありません。新法が施行された以上、企業はそれに合わせて十分に対応しなければなりません。実際、このタイミングでの人事制度全般を見直す中小企業も多く、弊社への問い合わせも急増しています。事業主からすれば人件費が上がることを心配しているかもしれませんが、一方で、これまで人事制度が理由で働くモチベーションが上げることができなかった社員もいるかもしれません。そうした社員の働きがいや目標が新しくできることによって、企業全体の生産性が向上する可能性も十分考えられます。また採用においてもプラスの効果が期待できます。

 同一労働同一賃金をピンチではなくチャンスととらえ、社内の雇用制度の確認、社員理解、制度設計、周知といったプロセスを、余裕を持って実施することが重要です。

●竹本幸史● 元㈱リクルート岡山支社長。現在は人材育成を主としたコンサルティング業務の㈱SWITCH WORKSを立ち上げ奔走。またリーダー養成スクール「法人会員制・定額制ビジネススクール」を開講中

本誌:2021年1月1日号 87ページ

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