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特集[ウィズコロナのビジョン/総論] 中国学園大学・中国短期大学副学長 杉山慎策氏

コロナの裏で進む「劇的変化」を見逃すな イノベーションと市場開拓が2つの軸に

  • 「コロナ禍の裏で進む変化への対応を急げ」と語る杉山氏

 子どものころ、父親から「種もみは食べるな」と厳しく言われました。日本人は二千数百年前に稲作を始めましたが、翌年のために必ず種もみを残しておかないと稲作は継続することができません。

 2000年の間にはSARS(サーズ)や新型インフルエンザなどの疫病、大飢饉など幾多の危機がありましたが、人類はそれを乗り越えてきました。危機が押し寄せてくるほど原点に返る。今われわれが毎日ご飯を食べられるように、「種もみ」さえ残していれば、次につなぐことができるということです。コロナ対策のために債務が増えて未来へのつけは残すことになりますが、脈々と営みを続けていくことこそが大切で、コロナ禍にあって父親から言われた言葉を「いい言葉だな」と数十年ぶりに思い出しました。

 第3波が広がる中、世の中ではコロナ対策がクローズアップされています。リーマンショックの時には金融機関をはじめとする大企業が打撃を受けたのに対し、今回影響を受けているのは中小企業が中心で、目の前の人たちが困っているのが良く分かります。

 しかし、見えないところでは100年来の大きな変化が起きています。1つはゼロエミッション。菅義偉総理は2050年までの達成をコミットしており、今後水素自動車やEVが急速に普及するはずです。このようにコロナの裏の見えないところでIoT、AI、スーパーシティ構想…など、劇的な変化が起きると思っています。

 1905年のニューヨーク・タイムズスクエア前の写真には馬車と馬ばかり写っていますが、20年後にはすべて自動車に変わっています。100年後の今日はそれ以上の大激震の時代なのかもしれません。バブル崩壊後の最高値を付けた株価の75%は未来の収益の見込みに対する価値で、市場関係者はすでに「アフターコロナ」を見据えて動き始めています。

 だからこそ、岡山の企業経営者の皆さんには「コロナ禍をどうしのぐか」という喫緊の課題への対処だけでなく、すごい勢いで進む変化を的確につかみ、長期的な指針をしっかり考えてもらいたいのです。テレワークを導入することで生産性が上がりますが、本誌連載の「岡山消費者動向分析」の調査結果(2020年7月20日号掲載)によると、岡山は全国より10㌽ほど導入率が低く、業務自体が「テレワークに向いていない」と考える傾向が出ています。しかし、単にコロナ対策というのではなく、大変であってもいかに生産性を上げるかという取り組みは不可欠で、ひょっとすると企業同士の合併なども必要になるかもしれません。

 岡山は豊かな地域で資本の蓄積があります。多くの経営者の方もバブルに踊らされることもなく、短期の利益の極大化を追求することなく、じわじわ攻めていくタイプが多く、老舗企業の多くは今の状況が2、3年続いても十分生き延びることができるはずです。

 幕末、財政破綻寸前の備中松山藩を再建した山田方谷がすごいのは、「たたら」を使い「備中鍬」をつくり、それを客が一番多い江戸で売ったこと。人口が減少する岡山だけでは商売は成り立たず、アジアの中で中国、インドに加え、特に狙うべきなのはこれから伸びるアセアンの富裕層。地場企業の中でも国内の人口減を見据えてベトナムを始めアセアンに目を向けるところが増えています。

 今後、アメリカと中国という2つのスーパーステートがどう世界を牛耳ることになるかは分かりませんが、自社のイノベーションを起こすことと新しい市場開拓という2つの軸への投資で、未来を切り開いていただきたい。コロナ禍はある意味、産業転換のいい機会でもあり、全国のモデル地域を目指す意気込みでぜひ変革を進めてもらいたいと思っています。

鏡野町出身。資生堂UK社長、日本ロレアル副社長、東京海洋大学客員教授、立命館大学大学院教授、岡山大学キャリア開発センター教授、就実大学副学長・経営学部長を経て現職。専門は「マーケティング戦略」「ブランド戦略」「地域活性化」など。

本誌:2021年1月1日号 5ページ

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