WEB VISION OKAYAMA

特集[ウィズコロナのビジョン/ものづくり] カーツ㈱社長 勝矢雅一氏

今立つのは大手と同じスタートライン 事業転換視野に成長への道選択せよ

 今の状況は時代が変革しているという点で第一次世界大戦終戦のころによく似ていると思います。当時は石炭から石油へのパラダイムシフトが起こった時代でした。日本にとっては、それまでの資源国としての恩恵が消失する危機にもかかわらず、その重要性を見逃していました。その証拠が第二次世界大戦での石油の乏しいドイツ、イタリアとの同盟です。

 ここ数年でAI、5GなどICT技術の発展とともにスマート社会への転換、そして脱炭素社会への取り組みが始まり、産業構造が大きく変わろうとしていました。そこに新型コロナウイルス感染拡大が発生し、デジタル化や生産性向上に待ったなしで向き合わなければならなくなったことで、この変化が加速しました。今自覚しなければならないのは、変化に対応しなければならない大きな転換点にすでに立っているということです。

 さらに、このパラダイムシフトの下では、中小企業も大企業もシャッフルされ、同じスタートラインに立つことになります。まさに横一線でスタートを切れる環境にあると言っていいでしょう。この状況はさまざまな企業が生まれやがて高度経済成長をけん引した第二次世界大戦の終戦後と同じような状況とも言えます。地方の中小製造業者にとって大きなチャンスであるとともに、選択によっては経営努力ではどうにもできないリスクを抱えることにつながる、チャンスにもピンチにもなる状況です。

 特にすそ野が広く岡山県で重要な位置にある自動車産業では、EVシフトへの対応が重要な課題となっています。脱炭素社会の実現へ国が具体的な期限を検討するなど、いよいよ待ったなしの状況です。部品点数は大幅に減り、バッテリー、モーターは外部調達され、従来の利益構造は成り立たなくなります。さらに、家電メーカーなどの他業界からの参入も進むかもしれません。EVに変化するから、それに合った製品を作ればいいというものではない、大きな選択を迫られています。

  また自動車産業に限らずスマート社会への転換も、モノづくりへの影響の大きいポイントになるでしょう。自動運転、遠隔操作などその応用範囲は多岐にわたり、すべてのものがコネクトする時代が来ると言っても過言ではありません。カーツでも、芝刈り機で挑戦しています。技術、アイデア次第でさまざまな道が開けます。

若手の挑戦に期待

 このパラダイムシフトは、社会変化への対応を前提とした製品転換、さらには業種転換ができるチャンスです。今の経営者にとっては最後のチャンスとも言えるでしょう。設備などに依存する製造業にとっては、大変難しい選択になりますが、どうしたら変化した社会で成長を目指すことができるのか、考えていかなければなりません。

 流れに乗るのも1つの方法ですが、あえて逆張りすることでニッチな市場で勝負を懸けるのも1つの方法。分野にもよりますが中小企業にとってはむしろ、ニッチなところで存在感を発揮することが向いているのではないかと考えています。

 いずれにしても、取引先の判断を待つだけでは、出遅れてしまうでしょう。自らニーズを見つけ切り拓いていかなければなりません。

 本当に必要なものをしっかり見極め、先の先まで見据えて、本来の在り方をどう見つけていくかが、すべてのものづくり企業に問われています。

 期待しているのは、新しい発想、感覚を持った若手経営者・企業の活躍です。アイデアがあるのに商品化、量産化できないといった若手を、設備・能力のある企業とつなげば、東京の大企業と互角に戦える状況に持ち込むことも夢ではないと考えています。

 今、後継者問題などで廃業する必要のない優良企業が廃業している問題が、コロナ禍で加速しています。これは岡山の経済にとって大変な損失です。この問題についても、若手経営者・企業とつなぐことが、事業承継を促し、優良な事業を創出する一つの手段になるのではないかと期待しています。

 それだけに、スタートアップ支援や起業後のサポートが重要になります。各企業が変革に挑む中、商工会議所をはじめとする経済団体、金融機関の役割は今後ますます大きくなっていきます。

メモ
カーツ㈱(岡山市)は、国産にこだわり草刈り機、芝刈り機などを製造する園芸・産業機械メーカー。現在環境負荷が小さいエンジンの自社開発を進めている。勝矢社長は、岡山商工会議所の副会頭として工業支援を推進

本誌:2021年1月1日号 7ページ

PAGETOP