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巻頭特集求人難で岡山でも時短、定休日導入

ふた開ければ「客を逃すかも」は取り越し苦労 ポイントは傾向分析

  • 働く仕組みを変えることで水曜定休を実現した安藤嘉助商店の玉島本店
  • 閑散とすることも多かった平日に来客が増えた(シティライトJAC店)

 求人難が深刻だ。特に深刻なのは小売り、サービス業で、人不足でシフトを組むのがぎりぎりという店舗も多い。これまで営業時間は、客のニーズにこたえようと長くなる一方だったが、新人確保や既存社員の退社を防ぐため、県内でも営業時間の短縮や、定休日を設ける動きが出ている。機会ロスを懸念する声も多い中、これらの取り組みを実現することは可能なのか。各社の動向を追った。

 小売り、サービス業では、少人数でもニーズがあれば答えるのがサービス向上で、24時間営業に代表されるようにイメージアップのため「より長く」営業することが当たり前となっていたが、近年顕著になった求人難の影響により、風向きが変わりつつある。

 昨年、ロイヤルホールディングス㈱(福岡市)が運営するファミリーレストラン「ロイヤルホスト」が24時間営業を取りやめるなど、時短や定休日導入の動きが見え始めた。

 岡山県下でも1月の県下有効求人倍率が1.87倍とバブル期並みの高水準を記録し、企業からは、「人が集まらない」という悲鳴が聞こえてくる中、この傾向は広がりつつある。

日中の来客が増加
 中古車販売の㈱シティライト(岡山市北区野田3-1-7、丸山明社長、資本金5000万円)は、旗艦店のJAC店(岡山市)で、1月10日から平日の営業時間をそれまでの午後8時閉店から1時間短縮したうえ、それまでの無休を水曜日定休とした。

 導入理由は、かねて社内にあった「新人の確保ができない」という現場の声だ。昨年、訪店した丸山社長自身も、「接客状況に余裕がないのではないか」と感じたことが決定打となり、本格的に検討を始めた。

 幹部会議では客と接する時間が短くなるとその分商機を逃すと懸念する意見が続出。しかし、実際には午後7時以降の来客が少ないという実績を根拠に影響は軽微と結論付け、導入を決めた。

 ふたを開けたところ、売り上げは例年並み。残業代の抑制で人件費の削減にもつながり、経営サイドとしては大きな成果があったといえる。

 また、これまで短縮または水曜日に来店していた客がほかの日に移ったことで、日当たりの来店客が増加。さらに福永恭也執行役員営業本部副本部長兼販売部部長は「にぎわいが客を呼ぶのか平日の昼間でも客足が良い」と思わぬ効果に顔をほころばせる。

 社員の勤務体制は、もともとの朝番遅番のローテーションから、交代なしの勤務体制となり、シフトの組み方に大きな余裕が生まれた。

試験的時短は「メリハリ」が重要
 比較的人数が少ない個店で営業時間を短縮したシティライトに比べて、就業者が桁違いに多い大型施設も、時短を実現させている。

 三井アウトレットパーク(MOP)倉敷は、今年2月の1カ月間、平日の営業時間を午後8時閉店から1時間短縮する試験的な時短営業を実施した。

 テナントの求人難が顕著になる中、従業員満足度(ES)の向上による人材確保のため、17年初頭位から時短導入の意見が管理サイドで出るようになり、本格的に検討。初売りが終わった後の閑散期で実施した。

 テナントからは導入に懸念の声があったが、ふたを開けてみれば時短で人繰りに余裕が出たため、日中の忙しい時間帯に店舗スタッフを厚めに配置することで「接客ロス」が減った上、接客の質も向上。これが貢献したとみられ、月間の売り上げは、前年同月の数字を上回った。

 従業員からのアンケートは、99%以上が好評との回答で、「メリハリを持って働けたため、接客にも張り合いがでた」という声が多く上がった。

 来年度以降も閑散期(2月)に実施できるか検討している。ES向上は今後も大事なテーマ。MOPとして全国初の従業員用託児所も4月1日に開所。従業員確保に向け、働きやすい環境づくりのため、試行錯誤が続く。

 これら2社は、来店データを分析し、影響の少ない時間・曜日は閉めるという方法で時短を実現した。これからいよいよ目標としている採用が本格化する。従業員本位の取り組みをPRすることで、成果につながるにちがいないと期待している。

IT化など「仕組み」変革が有効
 時短を実現する上で、システム導入などにより、働く仕組み自体を見直した企業もある。

 住宅リフォーム業の㈱安藤嘉助商店(倉敷市玉島中央町1-22-30、安藤辰社長、資本金1000万円)は、無休で営業していた玉島本店(倉敷市)を15年9月、働き方改革が本格的に唱えられる前に、水曜日を定休とした。同店はもともと水曜定休だったのを、客がいつでも相談できる店舗にするため15年ほど前に無休としており、以前の形に戻した格好だ。

 定休日なしで営業していた時、社員はシフト制で休んでいたが、休みの日に顧客から依頼があれば、なかなか休めないのが現実だった。従来から働きやすい環境の整備に熱心だった安藤辰社長は、確実に休みが取れ、オンオフがはっきりした労働環境実現のため、変革に乗り出した。

 倉森仁司建築事業部長がリーダーを務める「働き方委員会」で検討したところ、確実に休みをとるためには定休日を作ることが必要との結論に達した。

 同じ仕事量をこなしながら確実に休めるようにするため、真っ先に取り組んだのは「仕組み」の変革だった。かなりの時間が割かれていた建築現場との打ち合わせに行く移動時間に着目。現場の職人にタブレット端末を貸与し、遠隔で打ち合わせができるようにすることで、大幅な省時間化が可能となった。

 こうした工夫の積み重ねで効率良い働き方を追求し、水曜日の定休を実現した。

 導入当初は、多少の戸惑いもあったが、定休日が周知されると、客も当然という風に受け入れた。
ほかの営業店2店は木曜日が定休のため、水曜日にかかってきた電話はこれらの店に転送され、新規顧客からの問い合わせを逃すことがないよう工夫している。

 社員からは、「ローテーションで休んでいた時は、希望のシフトを指定することに抵抗があった。決まった日が休みのほうが良い」との声が聞かれ、好評だ。

時短の動き県内に広まるか
 3社とも、採用での成果はこれからだが、時短や定休日導入により営業時間が短くなっても、売り上げを落としていないことと、従業員からも好評なことから、ひとまず取り組みは成功を収めたと言って良いだろう。

 とはいえ、来店可能な時間を自ら減らすという決断は企業にとって勇気がいるもの。こうした取り組みを始めた企業はまだ少なく、県内に本格的に波及するかは未知数だ。

 これから新卒者採用のシーズンを迎えるが、人員確保に良い影響が出るか、注目が集まる。

識者の声
生産性向上を伴う働き方改革を
岡山県中小企業診断士会会長安藤覺氏
 人手不足は近年、経済界で大きなテーマになっている。特に、長時間労働の会社はリクルートで敬遠されることが多く、時間短縮の流れは避けられない。

 収益を確保しながら労働時間も減らすという、二律背反するテーマを追求するには、ひと言で言えば、「生産性向上を伴う働き方改革」が必要。しかし、これらの両立は「言うは易く行うは難し」。最適な方法は企業の業態や規模で異なるからだ。
例えば、顧客とのやり取りをICT化して御用聞きの訪問を減らし、余裕ができた時間を本来の営業活動に回すことで、残業を減らした事例がある。

 「仕組みの改革が必要」と漠然と理解していても具体的な方法を考えることができていない経営者も多いが、方法は外部に頼むのではなく、自ら考え抜いて決定する必要がある。
人不足がこれからもっと深刻になるのは人口動態からも明らか。時短・定休日導入をはじめ、変革をためらう経営者は多いが、魅力的な会社にしなければ求職者に入社してもらえず、事業が継続できなくなる。これまでのやり方を変えるには勇気がいるが、腹を括って、労使双方が「ウィン・ウィン」となるような仕組みを作り他社に先んじて生産性を上げる取り組みが必要だ。

本誌:2018年4月16日号 3ページ

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