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連載記事スローライフ~午後4時の窓辺から~

岡山県立美術館にて

 先日の日曜日、久しぶりに県立美術館に行きました。この日が最終日だった高木聖鶴展目当てのお客でにぎわっていましたが、私が見たかったのは地下画廊で開催中の「撮影された岡山の人と風景--県内作家の近作とともに」展の方でこちらはひっそり、閑散。しかしヨーロッパの人の目に映った2001年の岡山や写真集「bridge」などローカルかつユニークなおもしろい作品が多数展示されていて、こういう企画展こそ都道府県立美術館でなければ実現できないいい展覧会だと思いました。

 そのうち杉浦慶侘(すぎうらけいた)さんという写真家の作品は「暗く沈みこんだ森」がほの暗く写し取られた作品群で「神様の殺し方」という連番タイトルが付けられ、魂を抜かれた自然を人間の暴力性の中で捉え、見る人に深い考察を促す力作だと感じました。ところが、展示場のパネル(説明版)の文面を読んでいて「?」と感じた個所がありました。

 ―杉浦によれば「管理され、虚勢((ママ))されたはずの緑の中に潜むものはー

 文脈から言って「虚勢」ではなく「去勢」であることは明らか。山の木材は資源として利用され、山地は産業振興のため開発され、森は違法に伐採される。「自然としての山と人間は結びついていないのではないかという意識がある」、つまりは一見豊かに見える森の緑も原初の森ではなく「去勢された」森だというのが杉浦のメッセージだと思います。一番大切なキータームである「去勢」という単語が誤変換されているのは一美術ファンとして見逃せない!

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本誌:2022年7月18日号 17ページ

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