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韓流スターの死

 ワールドカップ、対パラグアイ戦の惜しい結末を報じるスポーツ紙の巨大な見出しに割って入ってきたのが韓流スター、パク・ヨンハの自殺です。品のある顔立ち、誠実な人柄、甘い声。「冬のソナタ」で一躍日本女性のハートをつかみました。

 自殺の動機として推測されているのは父親の病気、事務所のもめごと、多忙なスケジュールからくるストレス、目の病気ゆえに兵役を免除されたことに対する世間の非難…等々、しかしどうもピンときません。

 私が今までに出会った韓国人はみんなたくましく感情をストレートに出してきます。フランス人と結婚した女性など亭主が他の女をチラッと見ただけでフライパンで打ちのめすという怖いうわさが会社で広がったりしたものです。

 しかし、日本人に比べ自己主張が激しいと思われている韓国人も表向きよりずっと他人の目を気にし、すべての人にとって「いい人」でありたいという願望が強いようです。ここ2、3年だけでも、知人に高利で金を貸したとか整形疑惑があるとネットに書かれただけで有名女優が自ら命を絶ちました。

 その点日本人は京都人を頂点に世知に長けているというか妙に覚めているところがある。人には浮き沈みがあるし人間には裏表がある、いや裏の裏があるのが人間だということを長い文化を通してよく了解しているようにみえます。

 例えば民話に出てくる「飯食わぬ女房」。美人で働き者であるうえに飯も要らぬという女性に出会い大喜びで結婚したケチな男がどうも米櫃の減り方が激しいことに気付く。ある日天井裏から女房の様子をうかがっていたら、女房は米を一升も炊いて、頭のてっぺんの髪をかき分けそこに現れた巨大な口に釜の飯をいっきに放り込む。

 人間とはこの女房みたいなもの、都合のいいことばかりじゃない、表があれば裏もあるのが人間の本質であると民話は教えています。

 韓国の風土では困難なことかもしれませんがパク・ヨンハにはもう少し気楽に、もう少し“いい加減”に、これからの長い人生を生きてほしかったと思います。いい人、誠実な人であることに息苦しくなっていたのなら髪をパカッと割ってみせて「これが本当の私だ、文句あるか」と言えばよかったのです。合掌。

本誌:2010年7.12号 12ページ

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