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連載記事マネーの道しるべ 56

馬鹿論

  • 森康彰氏

 「馬鹿は隣の火事より怖い」とは、亡くなった落語家、立川談志師匠の言葉です。「いや、隣の火事の方が怖いでしょう。なんたって、自分の家に燃え移ったら、すべてを失うことになるじゃないですか」と言われ、談志師匠は「その馬鹿が隣に住んでて自分の家に火をつけたんだよ。だから、馬鹿の方が怖い」と返しました。馬鹿とは、自分の家に火をつけたら大変なことになることすら分からないのです。つまり、談志師匠は馬鹿を状況判断できないヤツと定義したのです。

 この定義だと、大きな組織ほど馬鹿が多いなと感じます。つい先日、あまりにも腹が立つことがあったので具体的な話を書こうと思ったのですが、その会社全体が馬鹿すぎて書いてしまうと立つ瀬がなくなるなと、今回は割愛しました。責任の所在があいまいになりすぎると組織が犯した過ちをだれも正すことができないどころか、何が問題なのかの判断もできなくなってしまいます。最終的には、「御社で判断することができないのであれば、労働基準局と金融庁に相談するしかありませんね」と伝えると責任者らしき人が来ましたが、謝罪ではなく保身のためでした。この手の金融機関の役員報酬は、会社規模の割に高くはないのですが、退職金がかなり高額です。出世競争もからんでくるので、何が悪いか分からないけど謝ることで問題にしないでもらおうということなのでしょう。最終的に謝罪に来た方は、「上司は悪くないです。私一人が悪いのです」ということを一番強調して帰られました。

 談志師匠は、馬鹿論を「馬鹿には話しても分からないから、痛みと恐怖を味わわせる」と締めくっています。確かに、先方が上司の保身のために終始するのであれば、それぞれの問題を解決してもらえる組織、今回であれば、労働基準局と金融庁にすぐに報告して対応してもらったほうが良かったという結論にたどり着きました。そんな人が出世していくような組織相手に仕事を続けるのは骨が折れますから。

●森康彰●2年間、保険代理店に勤めた後、2008年に保険コンサル会社㈲e.K.コンサルタントを設立。2014年に東京支社を設けるなど、首都圏へも業務を拡大中。 敬愛する人物は、稲森和夫、立川談志。

本誌:2019年10月28日号 10ページ

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