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アサーティブコミュニケーション

 家族やパートナー、後輩や部下との間のエピソードを聞いていると、「そんなのありえない」「なんで分かってくれないの」「普通は◯◯するでしょ」というキーワードが出てくることがしょっちゅうあります。人は身近な人や自分の影響下にあると思っている人には、言わなくても汲み取ってほしい、と願うものです。でも、もしかすると「伝えていないのに分かってほしい」「同じであってほしい」と願うのは、ずいぶんと傲慢なのではないでしょうか。

 女子会と言われる会では、パートナーや彼氏の話しで盛り上がることがほとんどです。「初めてのデートなのにあんなお店に連れて行ったのよ」「え~ありえない」。「私が体調悪いのに、横でこんなことするのよ」「え~ありえない」と、ありえないの大合唱が繰り広げられるのですが、ちょっと待って、ちょっと待ってお嬢さん(笑)と、言いたい気持ちになってしまいます。

 「初めてのデートでファミレスはありえない」があなたの価値観かもしれません。でもそのお相手は「彼女がなんと言おうと、食事は絶対ファミレス」と決めて、腕を引っ張って行った訳ではないでしょう。たしかに彼にはお店を選ぶセンスが無かったかもしれません。でも、もしかしたら、お昼をずいぶん回っているし、この近所に車が止められそうなお店も知らないし、早く彼女にお昼を食べさせてあげたい、と思った時、ファミレスの看板が目に飛び込んできただけかもしれないのです。

 「せっかくのドライブだから、チェーン店ではないところで食事がしたいな。私もこの辺りのお店は詳しくないので、今からネットで調べても良い?」と、なぜ言わなかったんだろう、と思うのです。それでも、「いや!今すぐ食べたいから、君の意見は却下してこのファミレスだ」と言われたのなら、わたしも「ありえない」と言うかもしれません。「お昼はこの先のファミレスにしようか」と言われて「う、うん…」と言いながら、心の中で「ありえない」と思っているのは罪深いと思うのです。

 言わなくても、以心伝心で「私もちょうどそう思っていたの」と最初から思えれば本当に幸せです。でも、コミュニケーションはクイズではありません。勘を働かせて、ピンポーン当たり。ブブー不正解!というものではないのです。伝えたいことは、伝わるように、伝えなくてはいけないのです。

 その時、大切なことは、事実と主観をきちんと分離して、自分の心をきちんとキャッチして伝えることです。「挨拶したのに無視された」これは一見とても正しいように感じますが、これには主観が入っています。「私が挨拶しても、あの人が挨拶を返してこなかったので、無視されたように感じた」というのが事実です。

 先ほどのファミレスの件も、同じ「気持ちを伝える」ことを選んでも、「デートなのに私をファミレスなんかに連れて行くなんて馬鹿にしているの?」と主観をベースにして、「ファミレスなんかじゃなくて、もっとちゃんとしたところに連れて行ってほしいわ」と言ったのでは、雰囲気は険悪になることでしょう。「初めてのデートでは、ファミレスではない雰囲気のいいところで食事がしたいと『私は』思っている」と、自分事としてしっかり気持ちを理解して、相手の前に差し出すことが大切です。その際「良い悪い」の評価を外すことも大切。「それが分からないあなたは悪い」と評価が入ると、伝わるものも伝わらなくなります。

 自分の価値観や気持ちを相手に伝える、相手にも自分と同じように価値観や気持ちがあることも尊重して、お互いの価値観の重なるところを探していくコミュニケーションをアサーティブコミュニケーションと言います。言わないのに不満に思っていることも、これが常識だ!と力で押し付けることもアサーティブではありません。ビジネスの場でも、伝えていないのに、なぜ分からない、と腹立たしく感じていることは無いでしょうか。

 見て悟れ、と教えられた世代と、手取り足取り教えてもらうことが当たり前で育った世代。友達と遊ぶためには、家に電話してお母さんに取り次いでもらっていた世代と、小学生の頃から携帯電話を持っていた世代では、常識や当たり前が違うのです。「そんなのありえない」「考えたら分かるだろ」とばっさり一刀両断する前に、ちゃんと伝わるように伝えているのか自戒してみてはいかがでしょうか?

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本誌:2015年7.13号 25ページ

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