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言葉以外のコミュニケーション

 「コミュニケーション」と聞くと、誰もが話す技術にスポットを当てそうになります。近頃では聴く技術も大事だと認識されている方も増えました。しかし、それ以前に大切にしていただきたい「言葉以外のコミュニケーション」について今号ではお伝えしたいと思います。

 講師として接客の指導を担当することも多い私は、ついついお店の人の接客に意識が向かってしまいます。感じの良い接客と、そうでない接客はどこが違うのか、コンビニでもレストランでも、分析してしまうことが習慣になっています。

 とある休日のこと、口コミでおしゃれと話題のカフェに行きました。カランラランと入り口のドアを開けると、カウンターの中にいた店員さんが、2人でこちらを向いて「いらっしゃいませ」と言ってくれました。その言い方に、思わず「あ!もう閉店ですか?」と聞いてしまいました。店員さん2人ともがどこか「迷惑そう」な反応だったのです。「いえ、お2階にどうぞ」と言われて、その違和感に思わずこけそうになってしまいました。

 その日の夜、台湾料理の居酒屋に行きました。階段を下りてドアを開けたら、正面にガラスで仕切られたオープンキッチンがあります。ドアを開けて姿が見えた瞬間、厨房の中から料理人の方が「いらっしゃいませ」とキラキラする笑顔で迎えて下さり、「お2人ですか?こちらのお席にどうぞ」と手で示してくださったのです。たったそれだけのことだったのですが、このお店には歓迎されているという気がして、楽しく食事をすることができました。

 カフェも台湾料理のお店も同じ「いらっしゃいませ」と発していながら、そこから伝わるニュアンスは全く違うものでした。言葉以外のコミュニケーションを「ノンバーバルコミュニケーション」と言います。声、表情、振る舞い、といった言葉によらないコミュニケーションです。人は「言語」と「非言語」に違和感があるときには「非言語」から発せられる情報を信じてしまう傾向があります。

 「ねえ、怒ってるの」と聞いた相手が、腕を組んでそっぽを向いてきつい口調で「怒ってないよ」と言った場合、「この人は怒ってるな」と判断するものです。忙しそうな飲食店で、お店の人に「すみません」と声をかけたら、「少々お待ちください」と言いながらも「今忙しいのよ」と「迷惑そう」な気持ちが伝わることがあります。お客さまに「声をかけて悪かったかな」と思わせることに、何の意味も得もありません。今すぐ対応できない事実があるのなら、そのことを素直に伝える表現をするべきです。

 皆さんもお客さまからの依頼や上司からの指示に「はい、分かりました」と言いながら、違うメッセージを非言語で表現してしまうことはありませんか?「言語」と「非言語」に違和感がある人に対して、信頼感を持つことは難しいのです。何かくみ取ってほしい状況があるのであれば、そのことを素直なメッセージとして伝えるべきでしょう。そのような、非言語の受け答えはクセになっていることが多く、考える前に反応してしまっていることが多いようです。

 まずは自分の言葉以外の表現を、自分自身で意識する習慣をつけましょう。自分の体の向き、表情、しぐさ、声のトーンや口調がどうなっているか、他人目線を持って意識してみましょう。それと同時に、他人の非言語のメッセージをくみ取る意識も磨いてみましょう。伝えるコミュニケーションがうまくなっても、相手が受け取れない状態のときがあります。相手が受け取れる状態に無いときは時を改める、アプローチの方法を変えてみるなど、見分ける力がつくと交渉力でも有利に働きます。

 非言語のコミュニケーションを考えるとき、「ペーシング」という技法も意識してみてください。ペーシングは、行動心理学から派生した分野で扱われる、コミュニケーション技法です。人は自分と共通点があると無意識的に好感を抱くと言われます。相手の話し方や状態、呼吸などに自分を合わせることで、信頼感を得やすくなることを言います。まずは声の調子や話すスピード、声の大小、音程の高低、リズムなどを意識してみることからスタートしてみてはいかがでしょうか。

本誌:2015年6.8号 19ページ

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