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認知と想起

 ブランドの棲家は消費者の頭の中であることを述べた。良い商品だからブランドになると錯覚することの危険性も述べた。理由は単純である。21世紀の今日、世の中には良い商品が溢れているからである。縄文時代なら商品が少ないので良い商品であればブランドになる可能性はあった。

 北は北海道から南は九州まで、日本の各地の遺跡で発見される翡翠の全ては越の国(新潟県)の糸魚川で採れたものであると言われている。糸魚川の翡翠は縄文人にとっては最高のブランドであったに違いない。不思議なことに仏教が伝来した頃に日本人の翡翠信仰は終了する。グローバル化した今日、翡翠はミャンマー、ロシア、メキシコなどが主要な産地となっていて、糸魚川の翡翠はもはやナショナルブランドではない。

 では、消費者の頭に棲むブランドはどのようなリサーチをすれば理解できるのだろうか。一般的手法としては、「ブランド想起」、「好意度」、「過去の購入ブランド」、「イメージ」などの項目を調査する。想起には2つある。「あるカテゴリー」を聞かれて想起されるブランドは何かという純粋想起と、商品写真などを見せて想起するかどうかの助成想起との2つである。

 助成想起のレベルは認知のレベルとなる。ブランド理論を構築したアーカーは認知されない段階のことを「ブランド未知」、純粋想起でカテゴリーの中で真っ先に想起されるブランドを「トップオブマインド」と定義している。ブランドが好きかどうかを調べる「好意度」も重要な指標である。何故なら有名だから知ってはいても自分とはあまり関係ないと思っている場合、売り上げには結びつかないからである。また、実際に購入した過去のブランドもチェックしておく必要がある。人はなかなか本当のことを言ってくれないのだ。

 ブランドの持っている「イメージ」がどのようなものか競合品と比較してしっかり把握しておく必要がある。トヨタは「いつかはクラウン」という名コピーのため「高級品」「高額品」「年配向け」のイメージが強い。豊田章男社長の指導の下でこのイメージを修正しようとしている。ピンクのクラウンや86、トヨタの名前を冠さないレクサスなど一連の展開は新しいトヨタのイメージを狙ったものである。当然のことであるが、一旦強いイメージが浸透すると変更するのに時間と費用がかかる。ブランドをどのようなイメージで作り上げるのか、ブランド戦略にはしたたかな長期戦略が必要である。

 広告の世界からマーケティング論やブランド論に大きな影響を与えたロッサー・リーブズの理論はUSPに代表される。USPとはUnique Selling Propositionの略である。凡そ商品が消費者に価値あるものと認められるためには消費者に有益な価値提案(Proposition)がなければならない。そうでなければ消費者はその商品の価値が理解できないからである。また、消費者にとって1つのブランドは1つの価値提案により代表される。「あれもできるこれもできる」と複雑な提案をしても消費者は覚えてくれないし逆効果にもなる。

 長年日経BPコンサルティングが実施する「企業メッセージ調査」ではロッテの「お口の恋人ロッテ」がトップにある。このコピーを考えたライターは本当に凄いクリエイターだと思う。リーブスは一旦よいUSPが見つかれば変更しないで使用し続けることが大切であると説く。多くの日本企業はCEOが交代すると新しいUSPに変更しがちである。筆者が担当して日本に導入したユニリーバの「ダヴ」は「1/4モイスチャライザー」を基本の価値提案とし、ミルクの流れるような映像とダブらせて世界中で展開している。長期に渡りグローバルに同じ価値提案を踏襲することで「ダヴ」は世界的に統一されたイメージとなり強いブランドとなっている。

本誌:2014年1.1号 113ページ

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