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連載記事

枕銭

 海外旅行ガイドブックに必ず書いてあるのが、「ホテルのメイドへのチップとしてこれこれの額のお金を枕の下に置いてください」です。パック旅行では添乗員が念には念を入れて“枕銭”を忘れないよう注意を促します。

 昔泊まったハワイの韓国系ホテルではベッドサイドに枕銭を強要する日本語のステッカーが張られていました。不思議なことに英語や韓国語で書かれたものは見当たりません。

 あるときカナダ生まれの従姉に枕銭の話をしたら「そんなチップは聞いたことがない!部屋の清掃代は宿泊費に入っている。そもそもチップとは対面で直接サービスを受けたときに渡すもの」ときっぱり。

 私はそれ以来、ますます確信をもってこの理不尽な“日本人サーチャージ”を拒否してきました。枕銭を置かなかったからといって掃除を手抜きされたことなど一度もありません。

 今年の正月、バンコクに出掛けたときのこと。同行の友人も何かにつけ私と同じような考え方をする人間で、最初の2日間枕銭を置きませんでした。

 ところが3日目の朝、朝食を終えて部屋に帰ってみたらちょうどメイドさんが掃除をしている最中でした。一瞬気まずい空気が流れたものの彼女は素晴らしい微笑みをたたえながらタイミングの悪さを詫びました。

 旅慣れた友人も「他の国のメイドって絶対あんな笑顔見せへん、フランス人なんか朝からふてくされた顔しよって…。それに比べるとタイは天国やなあ」と上機嫌。

 友人とは「やっぱりチップ渡さなあかんな」ということになりました。カナダの従姉がいう“対面”での笑顔サービスに心が動かされたのです。

本誌:2009年2.9号 12ページ

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